君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜

高見 燈

第3話 ウルスの洞窟▷▷これがあの妖精!?

 ーー目の前で起きてる事が……私には、とてもとても哀しい現実だ。

 なんと言うこと……。毎日の様に、あんなに会ってみたい。私もおはなししたい。

 そう思い描いていた……妖精エルフが……。夢の世界へ連れて行ってくれるあのカワイイお姿が……。

 この“氷柱つらら女”!?
 冗談じゃない! 夢を返せ! 私の“美しい妄想時間”を、クーリングオフしろ!

「おい。余計な事考えてねーで、とりあえず1発。やってみろよ。」
「はぁ!? アンタにわかるっ!? この気持ち! 裏切られたんだよ? 大好きな人が“浮気”したみたいな気分なんだけど!?」

 なにを涼しい顔をして言うか!
 この私の気持ちが、このケンカと女しかない男にわかってたまるか!

「あー……悪かった。とりあえず……“前”。」

 えっ!?

 飛翠のその声に、私は振り返った。

蒼華そうか殿!」

 カルデラさんの声が聴こえた。その呼び方は、とてもイヤな感じがする。
 そうーー、あぶない!! と、言われているみたいな呼ばれ方だ。

 現実ーー、私の方に右手を向けていたエルフは、氷の刃とやらを放ってきたのだ。

 うわっ! えっと。なんだっけ!?

 私は右手に握りしめてるロッドを、向けた。

「“紅炎ファイア”!!」

 そう! これだ! この名前!

 夢中だったのかもしれない。後から思えば。私は、“紅炎の魔法”を叫んでいた。

 ゴォォ!!

 瞬く間に氷の刃が紅く勇ましく燃える炎に、包まれる。

 ま……間に合った……。突き刺されるところだった。

 予想以上に心臓は、ばくばくしていた。

 けれど、目の前で氷の刃をまるで床に落としたグラスの様に、砕けさせた炎に正直ーー、感動すらしていた。

「す……スゴい……」

 私はそう呟いていた。

「やるじゃん」

 飛翠の声が聴こえた。

「う……うん。」

 や……やれる。かも。私。

 何だかわからない自信だった。
 でもちょっと……“やる気”になった。

「へぇ? それなり。って事。でもあたしはそんなに“甘く”ないよ。」

 両手!?

 エルフは両手を向けてきたのだ。

「ちょ……ヤバいんじゃないの!? なんかエネルギーみたいのためてるよ!?」

 私は、飛翠にそう言った。

 蒼白い光をエルフは、正に“力を溜める”みたいに集めているのだ。

 これ、知ってる。マンガでよく見た。
 必殺技とか出す時の“スゴいタメ”だ。
 この後に繰り出されるのは、とてつもないヤツなんだ。

「蒼華殿! 飛翠ひすい殿! 妖精エルフは、斬撃が有効的ではない! 魔法の力で弱らせんと“倒せない”のだ!」

 カルデラさんがそう叫んだ。

 ああ。だから“苦手”なのか。カルデラさんは。魔法を使わない。って言ってたもんね。

「俺も“イケ”たんだったな。そう言えば。」

 飛翠は、大剣クレイモアの長い刃の根本。柄と刃の境目に装着している“魔石”を、見つめた。

「蒼華。とりあえず試しだ。」

 飛翠は剣を構えながら

「“紅炎ファイア”」

 と、そう言った。

 ポゥ。

 剣についてる紅炎の魔石。それが紅く光った。

 ボッ!! 

 その紅炎が放たれたのと同時だったのだ。
 まるで、タイミングでも見計らったかの様に……イヤな感じのエルフから、大きな氷柱つららが、飛んできたのだ。

 その“両手”から。

 飛翠の紅炎の魔法は、ぶつかった。

「きゃっ!!」

 私は、その衝撃的な閃光。
 眩しい程の光に目を瞑った。

「蒼華! 寝るな!」

 飛翠からの激!

「は!? 寝てない!!」

 何を言うか! こんな状況で寝れるか!?

「蒼華殿!!」

 カルデラさんまで!?

 いや。そんな事よりも……目の前で炎は氷の大きなつららの前に、消えてゆく。

「ウソでしょ!? 火だよ!?」
「いいから。ブチかませ!」

 飛翠の何だか偉そうな声が響いた。
 私は、とにかくロッドを向けた。

 目の前に向かってくる大きな氷柱つららに。

紅炎ファイア!!」

 ロッドの先端の魔石が、紅く光る。

 紅炎は大きなつららを自然発火の様に、包む。
 私と飛翠に向かってきた氷柱つららを、覆うように燃えたのだ。

 ゴォォ……

 物凄い炎の燃え方だ。こんなの“近所の火事”を見た時しかない。
 あ。あとはテレビ。報道番組の火災現場の映像。それぐらい迫力があった。

 紅とオレンジの炎が、あの大きな氷柱つららを、包んでいるのだ。 

 映画ですか?

「飛翠殿!!」

 カルデラさんの声が聞こえる。

 飛翠は、何故か飛び出した。

「は!? え!?」

 私は驚いた。
 確かに、つららは燃えていてコッチには向かって来ないけれど……、何故……向かってゆく!?

「おのれ!」

 エルフの右手が、カルデラさんと向かってゆく飛翠に、向けられる。

 だが、カルデラさんが浮いている“妖精エルフ”に、剣を振り下ろした。

「“蒼の鉄槌”!!」

 カルデラさんのその声と共に、稲妻みたいな蒼光りした斬撃が、エルフの頭の上から落ちたんだ。

 何が起きたのかはわからないけど、とにかくまるで稲妻の様に彼女の頭の上から、足元までそれは切り裂く様に……落ちた。

 カルデラさんは、剣を降ろしたまま

「飛翠殿!!」

 そう叫んだ。

 エルフは、痛そうな顔をしている。
 いや……“苦しそう”だった。

 飛翠はどこからそんな跳躍力があるんだ?
 と、思うほど、飛び上がった。

「“師匠直伝”」

 はぁ!?

 私はーー、その声にア然としてしまった。

 大剣持ち飛び上がりながら、そう言ったのだ。

「“黒の鉄槌”!」

 飛翠はそう言うとエルフの頭の上から、大剣を振り下ろした。

 正にーー、斬り裂いた。

 飛翠の大剣が……何やら閃光を放ちながら……エルフの身体を……真っ二つにしたのだ。

「おのれ〜〜〜」

 そう叫びながらエルフの身体は、パンッ!!と、弾け飛んだのだ。

 私はーー、目の前で自然に着地する飛翠を見て思った。

 ああ。このお方は……どこか遠くへ行ってしまった。私の知る“柏木飛翠かしわぎひすい”ではない。

 小学生から知っていた……彼は、いなくなった。なんと言うことでしょう。

 彼はーー、アニメかマンガの世界の人物になった。“リアル飛翠”では、なくなった。

 洞窟は、とても静かになった。

「「ヒヒ〜〜ン…」」

 はぁ!?

 馬ーー、三頭。
 黒、白、茶❨トーマスくん❩。
 一斉に鳴いた。高らかに。

 それは、何だか歓喜の鳴き声の様だった。
 何故なら、前脚あげて身体を起こしているからだ。

「お見事じゃ。」

 カルデラさんが嬉しそうにそう笑っていた。

「アンタのお陰だ。宿で“仕込んで”くれたからな。」

 飛翠は、肩に大剣を担ぎそう言った。

 は?? 宿!?
 
「いやいや。“剣技”一つも持たんと行くのは、危険なこと。出来る事をしたまで。あとは……“お主”が、どう育てていくか。じゃ。」

 ちょっとまって!

 なんか、二人で分かりあったみたいな顔をしてますけど、なんなの!?
 いつの間に!?

 あ。私ーー、寝てたな。そう言えば。

 え!? その間に!?

「飛翠。どうゆうこと?」

 私はそう聞いたが、飛翠は洞窟の蒼と白のグラデーションで、キラキラとした地面に何故か……腕を伸ばしていた。

「なんか“落ちてる”」

 と、そう言ったのだ。

 え!? いや。宿屋の話をして! お願いだから!

 と、思ったが、飛翠は右手に何かを持ちカルデラさんに、見せていた。

「“親父”。なんだ? “魔石”か?」

 と、そう言ったのだ。

“衝撃的事実”!!
 私は見た!! 異世界にて“飛翠の父親発見”!!

 なわけないよね。

 確かに、飛翠の父親は“わからない”けどさ。

「おお。これは“魔石”だ。」

 カルデラさんは、飛翠の右手を見ながらそう言ったのだ。

 私は、その声に駆け寄った。

「どうゆうこと?」

 私が、カルデラさんにそう聞くと

「“魔石”は、エルフが落としていく事が多いのだ。それ故、エルフは人間を嫌う。“魔石狙い”だと知っているからな。魔物の中にも落とす者はいるが、圧倒的にエルフの方が多い。」

 と、そう少し顔を顰めた。
 なんだか悲しそうでもある。

「これは“白氷石”とやら。だよな? てことは……この先も“妖精エルフ”ってのに会えるってことか。」

 飛翠は水晶の様に煌めく透明の宝玉。それを摘んでいた。

 クリスタルの様なその丸い石の中に、雪の結晶が入っていてキラキラと煌めく。

 私のお気に入りだ。
 だか……フクザツだ。あの“夢を破ったエルフ”が、落としていったとなると……フクザツだ。

 そんな事を思っていると、飛翠が私を見たのだ。

「良かったな。また逢えるみてーだぞ」

 と、にやにやとしたのだ。

 憎ったらしい!!

 お前なんか氷柱つららで串刺しにされてしまえ!!

 妖精エルフは、この世界では少しーー、怖い存在なのかな? わからないけど。

 なんだか、本当に私が今まで本で見てきた“世界”と、ちょっと違う。

“おとぎ話、物語”……。そんな概念がどうやらくつがされそうであった。

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