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ココロの距離感

近衞

7話【暗闇】

 文化祭は過去最高の盛り上がりを見せ、
その熱は文化祭が終わっても
冷める気配はない。




ちょっとした後日談…のようなものになるけど。




まず、佑磨君はすぐにメイクを落としたことと普段の装いから
山城佑磨であることがバレずに済んだ。



ただ、私はしっかりバレて
クラスメイトの片っ端から質問責めに
合う羽目となり

一躍人気者となりました。



更に理事長先生が私に直接お礼を言いにくる程の事態になり、
教室は騒然となりました。











そしてあの2人の女子生徒だけど、
暴行、傷害、器物損壊等。



どうやら他に痴漢冤罪まで仕向けていた
こともうっかり自白したみたい。



最後までしぶとく言い訳を重ねていたみたいだけど、警察が呼ばれた途端おとなしくなり、あえなく連行。



その悪質性から、
2人は退学処分、書類送検となった。














佑磨君は、
事務所にこっぴどく叱られたみたい。



ただ、佑磨君のことだから
多分悪いと思ってないんじゃないかな。



佑磨君があの山城佑磨だって
知った時はすごく驚いたけど…













風呂上がりの私は、あの時のように
おもむろにテレビをつける。




番組は金曜歌謡祭、と題した番組で
丁度佑磨君が見事なダンスと歌を披露
していた。




この高揚感を分かち合える相手が
家に居ないのは寂しいけど…





母は普段の遅くまで働いていて、
家には私1人しかいないのはザラだ。






これはこれで勉強が捗るが、
正直寂しい。






テレビの中の佑磨君は
観客に向け最後の旋律を届けた。







テレビの中の観客は大いに沸き、
私もテレビの前で小さく拍手をする。






「やっぱりかっこいいなぁ…」







ふと、私は今日の出来事を思い出す。






【遅くなって、ごめんな】














【僕と一緒に、歌ってくれ!】














【エンターテイメントに、手加減はないよ!】













佑磨君が今日握ってくれた手を
見つめ、思わずニヤケてしまう。







「私、気持ち悪うい」




と、自分をけなしてみる。






すると、机上の携帯電話が鳴る。




「佑磨君?」




私は携帯電話を取り、



「もしもし」



《もしもしゆみちゃんですか〜?》



ん?佑磨君の声じゃない。



酔ってるのか?



「あの、どちら様ですか?」




私はそう問うが、反応がない。













《ビクトリアの山城佑磨、
マジでキモいから。》




と、それだけ残して電話は切れた。




「何だったんだろ…」



と、携帯電話を見つめて呟いた。




































佑磨は出番を終え、自身の控え室に戻る。




「…開いてる?」



すると、控え室から笑い声が聞こえた。



佑磨は恐る恐るドアノブに手をかけ、
力を入れる。






するとそこには、ビクトリアのメンバーの
田中雅樹、杉山エイジが下品な笑い声を上げながら酒盛りをしていた。



「ちょ、ちょっと何してるんですか!」



佑磨は思わず2人に詰め寄る。



「ああ〜ん?うるせえよくそガキ〜」



と、佑磨の携帯をいじりながら
雅樹は返す。



「ちょ、ちょっと返してください!」



と雅樹に詰め寄るが、









「ぐあっ!」








腹部に強い衝撃が走った。





「うるせえよくそガキちょーしのんなあー!」



酔った勢いで、エイジは佑磨の腹部を
蹴り飛ばした。



佑磨は思わず腹部を抑えうずくまる。












「こら!何やってるんだ!!」



と、メガネにスーツ姿の男が入ってきて、



「お前達他人の控え室で勝手に酒盛りをした挙句暴力を振るうとは何事だ!」



と、男性は雅樹から佑磨の携帯電話を
取り上げる。




「あー?うっせーんだよオッサン」




「お前達、そこに監視カメラがあるのを知ってるか?」



と、ドアの向こう…廊下にある監視カメラを指差す。



「…けっ、いくぞエイジ」


 
と、雅樹はエイジを担いで控え室を去って行った。



「大丈夫か、佑磨!」



と、平田は佑磨の容態を確認する。



「す、すいません…平田さん」



「…あいつら、ここまでやるか」



空のビール瓶やタバコの吸い殻で
散らかされた部屋を眺め、
平田はそう呟いた。



「…佑磨。もうアイドルはやめよう」



「平田さん…?」



「お前があんなクズに傷つけられるのを
見るのはもう耐えられない」



「…待ってください、平田さん」



佑磨は立ち上がり、



「俺たちの歌を、エンターテイメントを
待っている人達がいるんです。
だから…」



「佑磨」



平田は佑磨の両肩に手を置き、



「…お前のアイドル精神には驚かされる。だが、お前の体が壊れたら元も子もない」



「…」



「ジザァニァー社長に報告するよ」



「…」



佑磨は、答えることができない。



平田の、佑磨を思う気持ちに間違いはない。



平田は、孤児だった佑磨をスカウトした。



並々ならぬ努力の裏に、
彼の献身的なサポートがあり
佑磨は今の実力を手に入れた。




「お前は俺の息子同然だ。
今の状況を放っておけない」



と言って、平田は控え室を後にした。














いつからか。














レッスンに行くのが憂鬱になったのは。














「…会いたいなぁ…裕海さん」














と、彼は散らかされた部屋を
片付けながら、ぽつりと呟いた。

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