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ココロの距離感

近衞

プロローグ1〜始まり〜

 私立東都大付属高校。



東京都内有数の私立進学校で、
多くの著名人を輩出したことでも有名だ。



「…合格してますように」



私は、今日その合格発表の日を迎えた。



校門で手を合わせ、
意を決して歩を進める。





黒髪でセミロングの髪が風で揺れる。





顔にあたる風はまだ冷たく、
少し涙も出てくるが
今はそんな事はどうでもいい。




進学校でもありながら
就職率も高いこの学校は、
県内外から多くの受験生がやってくる。



更に高校の全校生徒が360人、
1学年120人と少し少なめではあるが、
中高一貫校の為校舎は広い。



私は地図を片手に歩を進める。










「あれ?ここ、どこ?」




…迷ってしまった…



私は慌てて持参した地図を確認する。



だが、出かけた経験の少ない私は
地図を読むのが苦手だ。



「あわわわわ…どうしよう」



背中から汗が出てきた。




「やばいよ…あと15分で締めきっちゃう…」




合格者には、
当日に合格者案内を渡される。




県外の受験生への配慮として
この日に渡せなかった受験生には
郵送されるようになっているのだが。




慌てている彼女は、
そのようなことは頭に無い。



「え、えっと…どっち…?」



あたふたと道を行ったり来たりして、
時間を潰してしまう。




「ううう…ちょっとくらい
遊びに行けばよかったのかな…」




と、彼女は勉強漬けだった毎日を
後悔する。




「分かんないよ〜〜」



涙ぐみそうな声で1人呟く。





































「あの…」



ハスキーな声が私を呼び止める。



黒い学ランを着たその人は、
直毛の髪が目を隠すほど伸びていて、

高尚でメガネをかけている外見も相まって
真面目な印象を与えた。






「は、はい?何ですか?」




「…お困りのようですが、
この学校受験したんですか?」




「は、はい。でも合格発表を行なっている大広場が分からなくて。」



縋るように、私は続ける。


「合格発表があと8分で終わっちゃうのに、この場から動けなくて…」



「今から私も行くところです。
場所が分からないなら一緒に行きましょう。」



「い、良いんですか!?」



と、私はがっついてしまう。



彼は少し仰け反って、



「は、はい。行きましょう」



と、彼は私の手を取り歩き出した。






その手は冷えた私の手を優しく握り、
その熱で感覚の無くなった手を暖めた。









心臓が跳ね、体温が上がる。










味わった事のない感情を覚えながら、
彼に連れられ、大広場に到着した。



「何番ですか?」



「124番です…けど」



終了5分前とあって、
沢山の人でごった返している。



背が高くない私は、
背伸びをしても届かない。




「ありましたよ!124番!」



と、高尚な彼が指差す方向を見る。




そこには、
124番という番号が刻まれていた。



「あ…あった…124番」



「僕の154番もありました。
揃って合格ですね。」



「あ…」



自然と、涙が溢れてくる。



「良かった…合格…合格したんだ…」



「おめでとうございます。さて、
合格者案内もらってきたので、
寒いところからおさらばして」




「良かったよぉお〜〜」



と、私は泣き出してしまった。



「ちょ、えっ!?」



彼は直ぐに持っていたハンカチで
私の涙を優しく拭ってくれる。



「ふぐ…ひぐ…ごめん…なさい…」



「いえ…」



嗚咽を漏らす私を見て、彼は微笑む。



「…頑張ったんですね。お疲れ様です」



と、私の正面に立ち
優しく私の頭を撫でてくれた。



「…っ」




「…その涙は、最高の勲章です。」




彼なりの労いの言葉。






私の涙腺は、
歯止めが効かなくなっていた。













私は彼の胸に顔を埋める。














そして、私は彼の胸の中で
声を上げて泣いた。


























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