がーるずベースボール!

近衞

55話⚾︎決戦前、背番号2、3、7、8、9⚾︎

 金曜日。



1週間で1番至福な日だ。



その日の授業が全て終わり、HRが
終わった生徒達は思い思いの帰路につく。



今日もあの場所へ…!




と、彼女は走るように学校を後にした。

















「あ、いらっしゃい!井上さん!」




「…。」




駆け込んだのはいつもの猫カフェ。



ここは船田の親戚が営む店なのだが、
船田はチームがCランクにいた頃
試合前にこの店で泊まっていた。



Bランクに上がってからは試合会場が
変わったため、船田はこの店にあまり
通わなくなったのだが…




「あ…あの…」



「ああ、店長がぎっくり腰やっちゃったみたいでさ。私が代わりに来たの。」



「な…なるほど…」



「OH!井上サン!」



受付裏のドアから出て来たドロッセルが
いつものテンションで井上を歓迎する。



「ど、ドロッセル…?」



「たまたま一緒に帰るときにさっきの連絡聞いてさ。」



「私も今日は店員さんデス!」



と、なんだかよくわからないポーズを取る。



最近朝9時に女の子向けの【ポリキュア】
と呼ばれる10歳前後の少女が警察官として
悪者を逮捕するというアニメがあるが、
それのポーズだろうか?




「あ、これはpolicureのposeデス!」




「こ…心を読んだんですか…?」




予想通りすぎて井上は驚いた。




「まあまあ、とりあえず井上さん
上がったら?猫ちゃん達待ってるよ」




「は、はい…!」



料金を支払って、井上はちゃぶ台の前で
正座をする。




そして足元に寄ってくる猫達と触れ合いながら、




「可愛いにゃあ〜♡なあ〜なあ〜♡」



と、普段の井上とは思えない声を漏らす。




一匹の猫が、井上の手元で仰向けになった。




「はああ〜♡可愛い〜♡にゃあにゃあ♡」



今にも抱きしめそうな勢いで猫を撫でていく。



それを見た他の猫達も井上にすり寄っていっていた。




「みんなおいで〜♡はああ〜♡可愛いな〜♡」














「何だか井上さんって猫達とお話してるみたいだね」




「可愛らしいデス!」



微笑ましい光景を見ながら談笑する2人。



いつもなら絶対に見せない姿に
2人は驚きを隠せていないのだが。



一度見たことがあるとは言っても、
普段とのギャップのの差に毎度
驚きを隠せない。




金髪碧眼という派手な見た目も
それを加速させる一因となっている。



「井上さんって容姿悪くないのに
引っ込み思案なんだよね〜」



「クラスの男子曰ク、
守ってあげたい欲を
掻き立てられるそうデス。」



「でもチームで1番パワーがあるから
男の方が守るどころか守られるんじゃない?」



「守れるのは高貴サンくらいデスネ。」




ははは、と2人は思わず笑ってしまう。




猫が少し驚いたのを見て、
2人は口を手で隠す。



「ごめんね〜」



と言いながら近くの猫の頭を撫でる。



いいよ、と言うように猫はその手に
頭を擦り付けていく。



船田はそれを見て微笑んだ。



「ここの猫ちゃんは大人しいデスネ」



「うん。みんな素直だからね。」










すると、鈴の音を響かせ
店のドアが開く。



「お、船田にドロッセルじゃねえか!」



「遊びに来たぞ、船田、ドロッセル」




「八幡サン、聖川サン!いらっしゃいませ、デス!」



「いらっしゃい、2人とも!」




「2人ともその格好…」



「店長さんぎっくり腰になっちゃってね」



「で、2人で店番ってわけか」



「そうデス。井上サンも居ますよ。」



ドロッセルが指差す先に、
相変わらず猫と戯れる井上の姿が。



「ね、猫!猫だ!」



「聖川、行ってこいよ」



「ご、御免!」



料金を支払い、
聖川は猫の元へと向かった。



「聖川さんも猫好きなのデスカ?」



「聖川さんは猫を見たら見境が無くなる、井上さんは動物全般だよ。」



「確かに可愛いけど、あそこまで…」



いつもの凛々しい表情から
愛玩動物を慈しむ表情に変化した聖川は、
井上とともに猫と触れ合う。



「猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫…」



「ひ…聖川さん…おち…つい…て…」



猫の背中を無心で撫で続ける聖川の姿を見て、井上は思わず心配になる。




「猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫」




「聖川、もうやめとけ」



と八幡は聖川の頭を軽く叩く。



「はっ、私は何を…最近忙しすぎて
猫に触れられなかったから…」



「さらに二日後に決勝だぜ?大丈夫かよ?」



「だ、大丈夫だ。」



「ふふふ、いつもクールな聖川さんが
猫になればこんな風になるんだね」




「むむ、お恥ずかしい…」



「そだ、今ここでプチ壮行会でもしない?」



と、船田はレジ袋一杯のスナック菓子を
見せる。



「いいねえ!やろうぜ!」



「Wow!食べまショウ!」



「…よし、やるとしようか!」



「そうこなきゃな!」



と、皆はちゃぶ台の前に座り、



「よっしゃ!パッとやろうぜ!」




井上を交え、五人は菓子を食べながら
談笑を始める。



5人にすり寄る猫を可愛がりながら
彼女らは世間話や恋バナ、
試合への抱負などを口にし
女子高生らしく会話に花を咲かせた。



最近はずっと野球選手として過ごしてきた彼女らの、束の間の休息。












そして彼女らは、決戦に向けての覚悟を固めた。




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