がーるずベースボール!

近衞

54話⚾︎決戦前、背番号4、6⚾︎

 金曜日。



1週間の中で1番至福な日だ。






その日の授業が全て終わり、HRが
終わった生徒達は思い思いの帰路につく。



今日は練習が無く、勉強をするため
足早に教室を後にした。



「駒田ちゃーん」



気の抜けた関西弁でその名を呼ぶ。




「あら、相沢さん」



声の主は相沢、的は駒田。



「今日は練習は無いはずだけれど、
何か用かしら?」




「いやー、グローブがボロボロでそろぼち変えなあかんねん。てな訳で
駒田ちゃんも一緒に行こうや」




「私は道具に問題は無いのだけれど…」




「なんか用事でもあるん?」




「私達は学生なのだから定期テストの勉強をするという用事があるわ」




「まあ、確かにそうやけど…」



「私は帰って勉強をするつもりなのだけれど」




「まあ、無理強いはせえへんけど…
買い物帰りに図書館で勉強しよかなおもてたんやけどな」




「…そういうことね。なら私も行くわ。
丁度読んでいる本の新巻が出たようだし。」




「よっしゃ!じゃあいくとしましょか!」



















チームの二遊間を担う2人は、
こうして一緒に行動する事が多い。




事実、彼女らの連携がチームを度々
救ってきている。




八幡のようにグイグイ来る人があまり得意ではない駒田は、丁度良い距離感で接してくれる相沢を気に入っている。




相沢も似たようなもののようで、
気が合っているのも上手く連携が取れている理由のようだ。




「それで、どんなグローブを買ったのかしら?」



「これや!」



と、右手に持つ袋から金色に輝く
グローブを取り出した。



「す、すごいグローブがあったのね」



驚きが隠せない様子で、
駒田は言葉を口にする。



「なんや入店1万人目記念!とか言うて
お店のおっちゃんお手製のやつくれたんや。おかげでお金が浮いたで」




「それは運が良かったわね。
色もなんだか縁起が良さそうだわ」



「金だけに優勝ってか。
駒田ちゃんもうちょいギャグセンス磨いた方がええで。
玉原君みらいのだんなさんに馬鹿にされまっせ。」




「な…私は…別に…」



突然の口撃に駒田は顔を少し赤く染める。



「冗談や。さて図書館行きまっか…て
あれ玉原君かいな?」




「へっ!?」




駒田は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。



「冗談やて。さ、行きましょか」



と、相沢は歩き出し、




「相沢さん…覚えておくといいわ…」



駒田は怒りの炎を燃やしながら、
相沢の後を追った。






























「あー、もうすっかり夜やなあ」



「そうね」




図書館で勉強を始めたのが14時くらい。
現在は18時30分とそれなりに勉強が出来たようだ。



「それじゃ、私はこれで…」



「まあ、まあ、待てや駒田ちゃん」



と、相沢は駒田にしがみつく。



「な、何かしら」



相沢の態度に駒田は少し驚き、



「時間も時間やしご飯行こうや。
奢りまっせ〜」



と、相沢は駒田の背中を押して行く。




「ちょ、ちょっと!自分で歩けるから…」








































駒田は相沢のなされるがまま、
とある店の前に立っていた。




「あ、相沢さん…どういうつもりかしら?」




「え?知ってるとこ来ただけやで?」




2人の目の前にある店の看板は、
ドビスケ野球喫茶。



そう、高貴のバイト先だ。



「さ、入るで〜」



相沢は駒田の手を取り
店に入っていく。




「いらっしゃいませー!…て、
駒田と相沢か。良く来たな。
そこの席で待っててくれるか?」



と、高貴は2人を席へと案内する。



「へへへ〜今日は何が美味しいんかな?」




「全部だ。」




「いや教えてーや」



と、少し閑散とした喫茶店に
2人の他愛ない会話がこだまする。




駒田は高貴の横顔を眺めていた。



それに気づいた相沢は、



「あれー?駒田ちゃん玉原君に
見惚れてもうてるん?お熱いなあ。」



駒田は思わず顔を赤く染めて、



「な、ななな訳ないでしょ!?
た、玉原君!私と相沢さんはこのセットでお願いするわ!今すぐに!」



「お、おう。相沢もそれでいいか?」



「んー、構わへんで。お願いなー」




「了解。ちょっと待ってろよ」



と、高貴はその場を後にした。





「あ、相沢さん…!」



少し赤みが残る顔で相沢を睨む。



「ちょっと辛かっただけやんか。
そんな怒らんといてや」



駒田は溜息をついて、



「相沢さん、あなたそんな人だったかしら?」



「そんな人て?」



「度の過ぎた冗談を口にする人だったかしら、と聞いているのだけれど」



「んー、まあ、場合に寄るわなぁ」




相沢は水を口に含んで、





「駒田ちゃん、打順下がってちょっと
落ち込んでるやろ?」



先程までとは違う相沢の真剣な表情に、
駒田は息が止まる。



「な、何のことかしら?」



「とぼけても無駄や。
最近ちょっち無理しすぎやであんた。
今日も勉強する、言うて練習する気やったやろ。」



「そ、そんなことは」



「最近守備の反応が遅れとる。
疲労が溜まってる証拠やで。
テスト勉強とランク戦の二重苦やけど
玉原君は上手いこと調整してくれとるはずや」



「私はやるべきことをやっているだけよ」




「今ウチは控えがおらんねやで。
怪我したら誰も出られへん。
玉原君が今日休みにした意味考えたか?」




「そ、それは…」



「駒田ちゃんもそれは分かってる筈や。
やから玉原君はこのタイミングで
休みを入れたんやで」




「けれど、ランク戦はもう二日後よ。
前回は玉原君が居たからあの雨宮君を
打ち崩せたけど、今回は…」




「そう気負うな。」



と、両手に料理を持った高貴が
2人の座るテーブルの前に立っていた。



「あいよ、おかんセット2つ」



「玉原君、聞いていたの?」



「ああ。ちなみに相沢に駒田を
ここに連れてくるよう頼んだのは俺だ。」



「私を…?」



「ああ。最近の駒田の努力を見ていた。
明らかなオーバーワークだよ」



「…」



「駒田、別に駒田のその姿勢が悪いわけじゃない。むしろ俺は買うよ。」




「そ、そう…」



「だけどまあ、怪我されても困る。
明日は調整だけ。いいな?」



「…分かったわ。」



「聞き分けが良くて助かるよ」



と軽く微笑んで高貴はその場を後にした。






「そういう訳やで」



「知らないところで迷惑をかけたようね。ごめんなさい。」



「構わへんよ、まあ駒田ちゃんを
ここまで連れてくるのには苦労したなあ」



相沢はスプーンを手に取り、



「同じコンビ同士やし、
片方が欠けたらシャレにならんのよ。
やからどうにかできんかなって思ったんもあるしな」



駒田は少し微笑んで、



「…ありがとう、相沢さん」



「べ、別にええてええて。
ささ、冷めん内に食べてまお。
いただきまーす!」



「ええ、そうね。いただきます」













「高貴、上手くいった?」



裏の厨房で皿洗いをしていた響子が
戻ってきた高貴に尋ねる。




「ああ。店番ご苦労様、響子。」



「ありがとう。それにしても、
クールな春香も焦ることがあるんだね」



「人間必ずそれもあるさ。それと響子、今日はもう上がっていいらしいぞ」



「うんうん、高貴が終わるまで
店番して待つよ。私高貴と帰りたいし。」




「そうか。すまんが待たせるよ」



そう言って、高貴は別の仕事に向かう。



「高貴!」




「ん?」













「上手くいって良かったね。高貴」













「ああ。そうだな。」





































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