がーるずベースボール!

近衞

52話⚾︎渾身の一球⚾︎

 あの後、聖川が四球で出塁したものの
4番井上が併殺打、5番芽衣がセンターフライに倒れてスリーアウトチェンジ。



愛李華はもう1人の因縁の相手、
4番大場を迎えた。



「おい無能!逃げるなら今のうちだぜ!」


「おい君!」


「すいませーん」



審判が再び注意を施すが、
相変わらず改善の気配はない。



胸糞悪い男だ、と
聖川は胸の中で唾棄したい衝動にかられた。




愛李華は聖川のサインに頷き、
投球を開始する。





直線を描いた白球は内角高めの
ギリギリを突いた。



「ストライクワン!」



「へー、上等じゃん」



聖川はボールを返し、次なるサインを指示する。



2球目は外に外れてボール、
3球目はカットされファール。




聖川は大場の出方を伺う。




「…こいつはカーブさえ投げれなきゃ
ただの雑魚だ」



だから、他の球種が甘く入れば
何の問題もねえ。



と、ホームラン狙いを変えないまま、
彼は待つ。





聖川がミットを構えたのは
外角低め。





愛李華は振りかぶり…














ボールは大きな弧を描いて進み、
ミットへと吸い込まれていく。














今までとは違った、彼女本来のいきいき
とした心を、代名詞であるカーブが描いた。














大場は反応が遅れ、辛うじて当てた打球は
愛李華の前で跳ねグローブに収まった。














「くそっ…!」














ほぼ同時に、スイングの勢いを利用して
大場はバットを愛李華に投げつける。














それを愛李華は瞬時に判断し、
ボールを井上に送った後
グローブでバットを受け止める。








カラン…と音を立て、バットは
地面に横たえた。





「アウト!」



アウトが宣告され、
大場は愛李華を睨みつけながら
ベンチに戻っていく。




「た、タイム!」



慌てて聖川がタイムをかけ、
愛李華に駆け寄った。




「だ、大丈夫か!?愛李華!」




「愛李華、怪我はない!?」




「大丈夫ですよ。お姉ちゃんも心配しすぎ。」




「で…でも…バット…が」




「グローブで掴んだので、
痛みはありませんよ。」




にっ!と愛李華は笑みを浮かべる。




スタンドの観客も少し騒ついている
ようだ。





すると、塁審が集まって何やら話を
している。




「何かしら…?」




「珍しいなあ、審判があーやって
集まってなんか話してるんは。」







しばらくして、審判が持ち場に散り
主審がマイクを持った。





《えー、主審の白井しろいです。先程のプレーですが、大場選手の故意による行為と判断し、それまでの度重なる相手に対する侮辱的発言を加味しまして…》




球場中が彼に視線を集める。











《大場選手を退場、と致します。》




「はあっ!?」





スタンドにどよめきが一気に立ち込める。




退場を宣告された大場は
ベンチから飛び出し、



「た、たまたまだろあんなの!」




と、審判に食ってかかる。




「いや、君のあのプレーは明らかな
守備妨害だ。さらに怪我の可能性が極めて高い危険な行為だよ」



と、白井しろい審判は冷静に返して、




「過去に何があったのかは知らないけど、
今は試合中だよ。だからこそ節度を持って
行動して欲しかったんだがね」


「ふ、ふざけんな!そんなこと…」







「相変わらずですね。」




マウンドの愛李華は大場を見据え、


「確かに私は無能だし、小さい頃は貴方にいじめられていました。
でも、私はこうやって努力して貴方に
勝ってます。」



「う、うるせえんだよこの無能が!」


愛李華は大場の元へと歩きながら、



「いつまで小学生のままでいるんですか?現実を見てください。」



と、愛李華は大場に言い放った。



「てめえええ!またあん時みてえに
スクラップにしてやるぁああああ!!」




激昂した大場は愛李華に殴りかかり…






その右拳は、眼の前に現れた
黒い影に掴まれ勢いを失った。




「は、放せてめえ!」



高貴は大場を睨め付け、



「つい先日に言ったよな?」



高貴は拳を握る力を強め、




「ウチの仲間を侮辱されて
黙っていられる程…俺達は人間出来てないぞ…ってよ」




「ぐ…」



「大場君、退場に従わないなら
この試合を没収試合にしても構わないんだよ」



「ぼ、没収試合だと!?」




「君が退場するか、ソニックがーるずの勝利とするか…選ぶといい。」




「…く…っ」





その後、大場は職員に連れられ
グラウンドを後にした。



「…愛李華、これで大丈夫だな?」



「はい!あ・な「おい」



聖川が愛李華の発言に横槍をいれる。



ぶー…と愛李華は頰を膨らませるが、
大丈夫そうだな、と高貴はベンチに戻っていった。




「愛李華」



聖川は拳を愛李華に突き出し、




「ここから抑えるぞ!」




「はい!」
















カーブを筆頭に調子を取り戻した愛李華は、ブルース打線を押さえ込んでいく。













結果、愛李華は9回完封勝利を挙げ、
ソニックがーるずは決勝進出を果たした。



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