がーるずベースボール!

近衞

49話⚾︎connection⚾︎

 エースで4番の絶対的存在を欠く
ソニックがーるずの戦いは、熾烈を極めた。




2回戦、先発の愛李華が2回6失点で
ノックアウト。




そこから怒涛の反撃でなんとか逆転勝利を
納めた。






続く3回戦は投手戦となり、
船田のサヨナラ打でなんとか勝利。





高貴を欠いたナインは、なんとか準決勝
まで勝ち進んだ。




















試合の翌日、月曜日。



俺は授業を聞き、板書をノートに写しながら準決勝の試合に想いを馳せる。




…雨宮大地か。





かつて打ち破った孤独な龍は、
失敗と敗北を経てさらなる高みに昇華した。




あの試合では見せなかったが、
最速148キロの速球に変化球の制球力まで引っ付いてきたんだ。




情報を共有した時の皆の表情も
雲行き怪しいものだったし…




…どうするべきなんだろうか。


















放課後。



俺達は河川敷に到着し、
いつものように準備を始めていた。





俺もいつも通りストレッチを行い、
練習に備えている。






「あれ?愛李華じゃね!?」




「ほんとだ、マジであいつ野球やってんじゃん!キモっ!」





罵倒を口にしながら、
金髪にピアスという典型的な2人の不良が
グラウンドに足を踏み入れた。






「あ、貴方達は!」



ストレッチ中の芽衣が中断して
立ち上がる。



「あれ?天才な方の姉貴じゃん
無能な方の妹はどこ?」



「貴方なんかに教えないわよ!」




普段はまったりとした芽衣だが、
その凜とした眼で2人の不良を見据える。




「あ?なんだその態度
さっさとあの無能をだせや!」





「おい」




堪らず、高貴が割って入る。



「あ?なんだてめえ!?」




「俺はソニックがーるず選手兼任監督の
玉原高貴だ。樹原愛李華に何の用だ?」




高貴は鋭い眼つきで2人を見据えた。




「いや、あいつがいるなら挨拶でも
してこかなってさあ」



「急に押しかけてきて無能呼ばわりか。
【ブルース】の監督の顔が見てみたいよ」




「なっ…てめえ、何でそれを!」




「ブルースの3番中谷なかたに、4番大場おおばだろ?
それくらい知ってるさ」



「ほ、ほーん…なら知ってるか?」




「…何をだよ?」




「やめなさい!」




芽衣の怒鳴り声が響くが、御構い無しに
2人は口を開く。











「あいつ昔、みっともなく虐められてたんだぜ!?」








「そうだよ!どーせ何もできねえくせに
頑張っちゃってよ!
この前も6点取られてノックアウトだったじゃねえか!」








「あんな奴が野球なんてできるわけねーんだよ!」








「そんな暇があるなら家で
ママのミルクでもの「黙れ」












低い高貴の声が響き渡り、
2人はぎょっ、と口を閉じる。









「それ以上その臭い口を開くな」





「な、何だとてめえ!?」





「愛李華が昔お前らに虐められていたのは分かった。
だがこれだけは言っておく。」





高貴は2人の肩を掴んで、







「ウチの仲間を侮辱されて
黙っていられる程…俺達は人間出来てないぞ」






と、高貴は2人の耳元で囁くように言い放った。





「う、うるせえ!ぼ、暴力だ!」




「そ、そうだ!暴力事件にしてやる!」





「貴方達、何言ってるの!?」




「ウチの監督に言ってやるよ!
あんたに暴力を振るわれたってな!」




「貴方が先に暴言を吐いたんでしょう!?」




「そんなもん証拠もねえだろ!」




「貴方達は…!」



芽衣は目の前の2人を害虫を見るような、
それでいて怨嗟の眼差しを向ける。













「失礼、君たち」





ふと、後ろから金髪の男性がやってきた。




「あ?誰だよおっさん」




「Sorry,boy…私はこういう者だよ」




金髪の男性は名刺を渡す。




「東部スポーツの…ワッセル…?
記者が何の用だよ」




「いやー、今仕事中である人物と話を
していてね」




と、携帯端末を見せてくる。



「出てみなよ。」



と、端末を差し出した。



中谷がそれを取り、







《てめえ!!何、人様に迷惑かけとるん
じゃあああああ!!》




端末から聞こえた怒号に、
中谷は反射的に端末を耳から離した。





「か、監督!?」




中谷の反応に、大場の顔は青くなる。




《お前ら練習さぼって人様に迷惑かけに行っとんのか!!》




「い、いや、あの」




《はよ帰ってこんかい!
お前ら試合出さんからな!!》




「お、おい」




中谷の眼に大場が頷き、
2人はすぐにその場を逃げるように去っていった。












「…何だったんだ?」




高貴は驚きを隠せず言葉を漏らす。




「ブルースの中谷と大場は、クリーンナップを担う逸材ではあるものの…
その器は小さい。よくああやっていざこざを起こしているんだよ」




「あの、先程は助かりました。
ありがとうございます。」




高貴と芽衣は頭を下げる。




「失礼、私はこういう者でね」




と、男性は高貴に名刺を差し出した。




「あ、ありがとうございます。」




「私は東部スポーツの記者、ワッセルだ。今度のBランク戦に関しての取材をしに来たんだよ。」




「取材…?俺達が…ですか?」





「そうさ。超速の銀龍こと雨宮大地の
対抗馬として、今1番注目されているのはこのソニックがーるずなんだからねェ」




取材、対抗馬、という言葉に、
チームの皆はざわめきを隠せない。




「へー、対抗馬ってか!」




「なんやかんやで取材受けんの初めてやなあ」




と、皆は言葉を零す。





「あの、取材とかそういうのは…」






「Oh!father!」




と、後ろにいたドロッセルが駆け寄る。





「おお、ドロッセル!
こんな所で会うとは!」




「ふぁ、ファーザー?」



「この人は私のfatherデス!高貴サン!」




「そうなんだよ。愛娘が世話になっているね」




「…はあ…」





「どうか、取材をさせてはくれないだろうか。娘の晴れ姿を記事にしたいんだ」




と、ワッセルさんは両手を合わせて懇願する。



「高貴サン!迷惑はかけまセン!
お願いしまス!」




と、ドロッセルはワッセルさんと
同じように懇願の構え。




「んんんん…」



高貴は唸りながら熟考した。








ふと、高貴の携帯端末が高貴を呼ぶ。




「すみません、外します」





と、高貴はその場を離れた。











「はい、もしもし…」




《失礼、大和田だが…》




「お疲れ様です。どうですか?」




《すまない、動いてみたものの、
我々2人の意思だけでは弱いようだ》





「2人の…意思」





《ああ。すまないが、こちらのカードなもう…》





「待ってください」














高貴は考えた。





大和田検事、スチュワーデスの2人は
栗原メイアに逆らう事は出来ない。






2人の意思だけでは動けない…







なら、3人…それ以上なら!











「大和田さんは少し待っていてください。俺に考えがあります。」





と、高貴は思案を述べた…


















高貴はワッセルの元に戻る。





「すいません、失礼しました。
取材の件ですが…」




「高貴サン!高貴サン!」




ドロッセルが食い気味になってる。





「受けさせていただきます。」




「本当か!ありがとう!」




と、ワッセルは高貴の手を握り
喜びを露わにする。





「ただし、条件がありまして…」





「高貴サン?高貴サン?」










































彼女の眼に浮かぶ涙は、冷たい。












彼女に悔恨を与えたあの2人から、
私は逃げてしまった。











そのくせ、彼に尻拭いをさせてしまった。












「必ず…必ず…!」












愛李華は、皆の居ない場所で1人
決意を新たにしていた。

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