がーるずベースボール!

近衞

48話⚾︎再び⚾︎

 アクシデントもあったが、
無事一回戦を突破した俺達。




八幡も復帰し、更に練習に熱が入っていく。





俺は相変わらずセンターの守備に磨きを
かけていく。





舞う砂埃がその練習の激しさを
物語り、



皆、意識高く練習に取り組めているのだが…






「どうした愛李華あいか!ボールにキレが無いぞ!」




ブルペンから聖川の声が響き、
愛李華は帽子をかぶり直す。





…そう、愛李華の状態が良くない。





元々ストレートはあまり得意な方ではなく
変化球主体のピッチャーだが…




その変化球さえも上手く機能しておらず、
得意のカーブもキレが無い。




Cランク戦の決勝で肘を痛めていたが、
今肘は大丈夫なのか…?




「愛李華ちゃん!肘は大丈夫?」



隣にいた響子が声をかける。



「肘はもう大丈夫です。でも球が…」




「愛李華、あまり無理はしないようにな。」



聖川も愛李華の元に来てそう言った。



「は、はい。ありがとうございます。」




その表情に少し陰りがある。
どうするべきか…聖川は考えていた。














練習の終わり、ミーティングの後。




「こ、玉原」




こ、玉原て久しぶりでんな。



「どうした?」




「そ、その…愛李華の事なのだが…」




「…ああ。分かってる。どうしたもんか」



ネットスローを続ける愛李華を見据える。




「…いや、こうしよう」



俺はベンチを出て愛李華の元へと向かう。



「ん?こ…玉原?」



聖川は高貴の背を追う。











「愛李華」



ボールを手に取ろうとしたが、
高貴の方を向く。




「あ、はい。何ですか?」



「ごめんな、練習中に呼び止めて
頼みがあるんだけど」




「はい」



「明日、Bランク戦優勝候補チームが
試合をするらしいんだ。
一緒に来てくれないか?愛李華」



「にゃっ!?」



聖川が驚愕し素っ頓狂な声を上げる。




愛李華は口元に笑みを浮かべ、



「それって、デートってことですか?」



「そう捉えてもらって構わない。」



「ここここう…玉原!?」



聖川が何やら慌てているがお構いなしに、



「偵察は愛李華がいてくれた方がやりやすい。当然お礼もする。だから頼めないか…?」



「はいっ!喜んで!」



と、愛李華はぱあっと笑顔を咲かせた。



「明日何時ですか?高貴さん」




「試合は10時かららしい。明日は祝日で
混むだろうから…9時に駅で。」



「あー、だから練習は15時からなんですね」



愛李華は納得の表情を見せた後、



「分かりました!高貴さんの正妻として
相応しいただずまいをお見せしますね!」



「せっ、正妻だと!?」



「ああ、頼むよ」



「なななっ、なななななな」



聖川の頭がパンクを起こすのをよそに、
高貴は愛李華に挨拶を交わして
その場を後にした。



愛李華はボールを手に取り、



「これで一歩リード、です!」



と、ネットに白球を投げ入れた。




聖川は足早にその場を後にする。







「ま、まずいまずいぞ。」



聖川は頭を抱える。



「理玖」「聖川」



前方から、隊員が歩いてくる。



「…ああ。」















「「「尾行しよう」」」



声を揃えてそう言った。






































































東部線、茨樹駅。





高貴達が通う学校の最寄り駅で、
東部地区唯一の電車だ。





そこから東西南北どこの地区へでも
行けるため、よく待ち合わせ場所に使われる。




「こーきさんっ!」




ヒールの音を軽やかに奏でながら、
その声は響いた。




「おお、愛李華。おはよう」




「おはようございます!高貴さん!」




と、昨日以上の笑顔を咲かせる。





白いワンピースに麦わら帽子…
ベーシックなスタイル。




素朴に見えるが、愛李華のスタイルの良さと表情がその素朴さを感じさせない。




その純白な白が、愛李華の曇りない表情を
表しているかのようだった。




「似合ってるな、その服」



「ありがとうございます!
じゃ、行きましょう!」



「ああ」



愛李華は高貴の手を掴み、
2人は改札へと向かった。
















「よし、行くぞ響子隊員」




「うん、行くよ、八幡隊員」



「おう、ひ…とりあえず行くぞ」




3人は気配を殺しながら、2人を追った。



























東部地区球場前に到着した電車を降り、
2人は改札を後にする。




尾行隊の3人も人混みに紛れ追っていく。




高貴と愛李華はスタンドに座り、
その斜め後ろに尾行隊が陣取る。





「今日見にきたのは、昨年までA級に
いた【御茶ノ水】だ。
確か全員女子大生のチームで、
昨年までA級にいた強豪だよ」



「ランクダウンの理由って…」



「2年連続、一回戦でコールド負け。
日野構が降格を言い渡したみたいだ」




「ていうか、降格の要件が無様な負け方って結構雑ですよね」



「確かに…な」




確かに、昇格の要件は優勝っていうのに
対して降格の要件は抽象的だ。



「まあ、私達は降格はないでしょうけど…」






少し待っていると、
メンバーがグラウンドに散って行った。





「お、ナインが出てきましたね…?」




2人の息は止まる。








「…なんで、奴がいるんだよ…?」






御茶ノ水がノックを開始した瞬間。














ブルペンには、銀髪が眼を引く
高尚な男が立っていた。














「雨宮、大地…?」














女子大生が白球を追う中、ただ1人
雨宮は黙々と投げ込みを行っていた。






「まさか、雨宮を補強したのか?」




「そう考えるしかありませんが…」






すると、雨宮が俺の視線に気付き
少し球威を上げた。






「…自身に溢れてますね」




「…ああ。制球が正確になってる」




「無駄な力が抜けたフォームに
なってます。相当練習したんですね」




「…ああ。」







そして整列の後、試合開始のサイレンが
鳴り響いた。






























































13時に試合が終了し、
2人は茨樹駅を後にしていた。






「…すごい試合でしたね」





「雨宮は5打数4安打5打点と
投打に渡って活躍…さらには…」






「完全試合…ですね」





試合開始から、雨宮は以前のような
鬼気迫るものはなりを潜めた。




だが、どこか余裕を感じさせる
大人の投球を見せていたのだ。




結果として、試合は6-0。
雨宮は9回103球で完全試合を達成。





さらに相手はAランクに上がった事のある
チームだけに、



彗星の如く現れた超新星に、
メディアは大忙しだ。





「課題のフィールディングと制球を
克服していました…正に鬼に金棒ですね」




「…ああ。手がつけられない。」





「このまま行けば、また決勝で当たりますね」



「…ああ。」













課題を克服し、さらに進化した雨宮。







対する自分は、試合に出場すらできない。













高貴は悔しさを、胸の内に押し殺していた。






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