がーるずベースボール!

近衞

47話⚾︎覚醒の時⚾︎

 9回表、ワンナウト2塁。




一回にアクシデントで3点を失ったものの
その裏に5点を返し逆転。





そのまま試合は硬直状態を保ち、
9回まで5対3ともつれ込んだ。






9回に響子から愛李華に守備位置を入れ替え、今に至る。





「…まずいな」



聖川の顔に汗が滴る。




愛李華の変化球のキレが無い。




そしてカウントを取りに来たストレートを
痛打された。







キィン!





「ファール!」





ライトのポール際への大ファール。






決め球のカーブを見極められ、
唯一空振りを取れるスライダーを
多投させるわけにもいかない。






かと言って他の変化球も
タイミングを合わせられている。




「…このままでは」





愛李華も肩で息をしている。




打者は5番…甘く入ればそこを打たれる。
























「大丈夫だよ!愛李華ちゃん!」










愛李華の背後から透き通る声が聞こえる。








「打たせてくれればみんなでアウトにするから!」






と、笑顔で愛李華に語りかけるように
叫んだ。






愛李華はそれに微笑み返して
再びバッターと対峙する。








そして2球目を投じ、
ボールは弧を描いて向かっていく。











キィィン!









愛李華の下をすり抜けた白球は
相沢と駒田のグラブに入ることなく
センターの船田の元へと向かう。













インパクトゴーをしていたランナーは
3塁を蹴った。













それを見た船田は淀みない動きでボールを捕球。













スピードを殺さず、足腰を固定。













上半身の砲台から軌跡を描いた。













レーザーと化したようなボールは
聖川のミットに収まり、タッチプレーに。





ゲームを左右する審判に、
会場は眼を光らせる。






「アウト!ゲームセット!」







ランナーの生還を許さず、
船田は試合を決めた。








そのプレーに会場が沸き、
ナインも船田を労いながら整列へと
向かう。










ホームランを打った時、
そして今この瞬間。














その表情は、晴れやかだった。

















































東部地区総合病院に向かった俺達は、
すぐに八幡との面会を許可された。






大人数で押しかけるのは良くないので、
船田と俺の2人で向かう。







病室に通された2人は、
八幡の姿を見て安堵した。






「おう!来たかお前ら!退屈だったんだよ」




「あ、あの…矢幡さん」




船田は高貴の前に出て、





「あの…ごめんなさい!
わ、私が気をつけてたらこんな事には…」





「ふーなだ」





と、八幡は船田の肩に手を置き、





「いいってことよ。頭上げな」




船田は頭をあげる。




「野球やってる以上あーいうプレーは
覚悟してらぁ。
…こっちもすまねえな。お前に心配とか迷惑とか色々かけちまったみてえでよ。」




「そ、そんな、矢幡さんは…」





「もう謝らなくていいぜ。
あたしは大丈夫だよ。だから、この件はこれでお終いだ」





「で、でも…」





「しつけえな。じゃあ、今日の試合どうだったか聞かせてくれ。それでチャラな」





「そ、そんなことでいいの?」




「おう。仲間だからな」



と、八幡は笑って見せた。




船田の眼から少し涙が溢れたが、
直ぐにぬぐい、



「ありがとう…矢幡さん」




と、微笑み返した。





「八幡、体の方は大丈夫か?」




「おう。大丈夫だって言ってんのに
看護師どもがうるせえんだよ」




「おいおい。看護師は患者を心配してるんだ。そう言うな。」




「わーってるよ!ったく…
看護師と同じこと言いやがる。」




「明日は練習休みだからな。
無理はするなよ。それじゃな」




高貴は八幡に背を向ける。




「あ?もう帰んのかよ」




「あとは船田に任せる。
船田、あとはよろしくな」




「あ…うん。分かった。」




と、高貴は病室を後にした。








「高貴とも話したいんだけど…
まあ退院したら話せるか。
じゃ、船田!聞かせてくれよ!」





「うん!えっとね…」





































































「もしもし」




《もしもし。玉原君》




「はい、お疲れ様です。どうでしたか?」




《…すまない。まだ指令を撤回できそうにない》



「…そうですか」



《申し訳ない…調査を続けるよ》




「…はい。お願いします」




《玉原君、必ず出場できるように
スチュワーデス殿と働きかけるつもりだ。諦めてはいけないよ》




「…はい。ありがとうございます。」




《それでは、私は失礼するよ》





「はい。ありがとうございました。」




耳元で電話が切れる音が響き、
携帯をポケットにしまう。




「…クソッ…」




高貴は壁にもたれかかる。




「…まだ…俺は…力になれないのか」













と、高貴は壁に左拳を叩きつけた。




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