がーるずベースボール!

近衞

43話⚾︎狂う歯車⚾︎

 チームに樹原芽衣が合流して初の練習。



チーム全員で本番を想定した守備練習。





ランク戦に出場しない事を明かした高貴だが、相変わらず練習で良い動きを見せる。



芽衣がサードに入ったことで、
高貴は本職であるセンターの位置につく。



響子が難しい打球をうまく捌き、
名誉挽回に燃える。






ランク戦は再来週…
Bランク昇格の立役者を欠くことが
決まったナインは、
緊張感を持って練習を消化した。






メニューを全て消化し、ベンチに集まる。



「お疲れ様」



高貴の言葉に対しお疲れ様です、
と全員が揃って返す。



「唐突で悪いが、明日に
練習試合を組むことにした。」




「明日…ですか…?」



「明日って、確か東部地区の学校の教師会議だよね。」



「東部地区の学校は昼には終わるわ。」





150年前、学校で教師間や生徒間のいじめが多発していた。



それを防ぐため、現在は定期的に
教師が集まり意見交換会や
他の学校の調査を行うようになっている。





「そう。そして相手はコミックスだ。
愛李華はこちら側で登板するが、
俺は明日出場しない予定だ。」



高貴の言葉に、全員が反応する。



「再来週のランク戦を想定したオーダーで明日は臨む。一度倒した相手だからと
言って気は抜くな、いいな。」




「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」

















学校の授業が午前中で終わった俺は、
響子と一足先に河川敷にやってきた。



「高貴君!」



すると、栗色の長い癖のある髪をヘアゴムで纏めた芽衣が小走りでやってきた。



「おお、芽衣。体は大丈夫そうだな」



「うん!久しぶりの試合だからね。
楽しみで先に来ちゃった」



「そっか、芽衣は久々に試合出るんだよね」



「うん!今まで迷惑かけちゃった分
頑張るから!見ててね、高貴君!」



「ああ。監督としてしっかりとプレーを
眼に焼き付けておくぞ。」



「あれ?何だか言葉の趣旨が微妙にズレてる?」



久々の晴れ舞台を見て欲しい、の芽衣と

監督として選手の動きを見る。
ダメな動きを見せれば打順を下げる、
の高貴。



微妙にズレてる2人の発言を尻目に、
響子は先にベンチへと向かった。





そして全員が合流し、




昼食の後、練習試合が開始された。










ソニックがーるず
スターティングラインナップ

1番 センター      八幡 絵里 

2番 セカンド     相沢 優   

3番 キャッチャー   聖川 理玖 

4番 ファースト    井上 優姫 

5番 サード         樹原 芽衣 

6番 ライト      船田 紗枝  

7番 レフト      ドロッセル 

8番 ショート     駒田 春香 

9番ピッチャー     湯浅 響子 





「愛李華にも登板してもらうから、
準備をしておいてくれ。」



「はい!怪我も治ったし、
いつでも行けますよ!」





一回の表の守備。



先頭にライト前ヒットを許すものの、
2番打者をゲッツーに打ち取る。




3番打者はレフトフライに倒れ、
響子は3人で攻撃を終わらせた。




「良い球が来てるぞ、響子!」



聖川が労いの意味を込め、
響子の左肩に手を置く。



「うん!絶好調!」



「今日はとばしてるみたいだな、響子」



「高貴がいないんだから、いつも以上に
頑張らなくちゃね」




「よっしゃあ、かっ飛ばしてくらあ!」



と、威勢良くバットを握り締め、
八幡は打席に向かった。







1球目は大振りをしてワンストライク。




八幡は守備はいいけど打撃は粗いんだよな…



それさえ治れば1番に固定できるんだが…




「おらあ!」




2球目。
甲高い音を響かせ、弾き返された打球は
センター前に転がる。




1塁に到達し、1塁コーチャーの響子と
ハイタッチを交わす。




「なんや、大振りの割にしょぼい当たりやったなあ」




と言いつつ、相沢は打席に向かう。



「八幡は結構力が強い。
5番に置くのも手か…?」



俺はさらなる飛躍に向け、
頭の中で戦法を組み立ていく。










ピッチャーが振りかぶった時。









1塁から八幡の姿が消える。










気付いたキャッチャーは捕球後
2塁へと送球する。









ランナーと守備の対峙に砂埃が舞う。




「セーフ!」



際どいタイミングだったが、
判定はセーフ。




スコアリングポジションにランナーが到達し、相手ナインは守備位置を変える。




「珍しいわね…矢幡さんがサイン無しに
盗塁するなんて…」



「でも、成功したし
結果オーライだよ。ね、玉原君」




「…結果オーライ、ね…」






相沢は相手の変化球を弾き返したが、
サードゴロに倒れる。




ランナーは変わらず2塁。
外野フライで1点のチャンスだ。




「相沢、八幡から盗塁のサインは出ていたか?」



打席から戻ってきた相沢に尋ねる。



「いや、出されてへんで。
出してくれてたらサポート出来たんやけどなあ」



「…そうか。」



続く聖川はライト前に運び、



ランナー1、3塁とした。




「井上さん、落ち着いていこう!」



と、肩に力が入りまくりの井上に
船田は声をかける。




「は、はい!」




井上はバットを強く握り締め、
バッターボックスに入る。







1球目、
外角の明らかなボール球を空振り。







2球目も明らかなボール球に手を出して、
ショートゴロに。






だが聖川のゲッツー崩しにより
1塁への送球はならず。








八幡はその間にホームイン。




「よっしゃあ!まず1点!」




「ナイスランデス!八幡サン!」



と、チーム全員が出迎える。




「八幡、あの盗塁…サイン出してたか?」



と、高貴は八幡に確認を入れる。




「あー…忘れてた。すまんすまん」



「しっかりしなさい。チームの連携は
野球の基本よ」



「わ、分かってるっての!」




「本当に大丈夫かしら」




「…。」





続く芽衣は四球で出塁したものの、
船田が三振に倒れスリーアウト。




「ドンマイドンマイ!
この1点を守ろう!」



ナイン達は意気揚々とポジションに
散っていく。



「…愛李華」



「何ですか?高貴さん」



「割と出番が早まるかもしれない。
準備を怠るなよ。」



「…?はい。分かりました…」



愛李華は不思議そうな顔をして
ベンチを後にした。



































































「「「ありがとうございました!!」」」




無事、怪我人が出ること無く試合終了。



結果は、2-0。



1回に相手のミスで得点して以降、
5回に再び相手のミスで得点した。



事実、こちらはまともに点を取ってない。




守備、攻撃共に連携ミスが目立ち、
いつも以上に三振が多かった。



そして結局、高貴がマウンドに上がる羽目になっていた。



「…さて、今日の試合の総括だが…」




ベンチに皆を着席させ、
高貴がみんなの前に立つ。











「…合格者は0だ。」






ベンチを沈黙を含めた小さなざわめきが
支配する。



「ど、どういう意味かな…高貴?」



「響子、
お前がマウンドを降りたのは何回だ?」




「ご、5回…だけど」



「先発が5回でマウンドを降りて
どうする。怪我明けの愛李華に最後まで
投げさせる気だったのか?」



「…ご、ごめんなさい…」



「八幡、あの初回の盗塁…
成功したから良かったものの、
ランク戦では通用しないぞ」



「え…な、なんでだよ」



「Bランクになれば必然的に相手の能力も上がってくる。
チームと連携を取らない以上、あの盗塁は絶対に決まらない。」



「…わ、悪かった」



「井上、自分がやろうとする気持ちは分かる。だがだからと言って打てない球に
手を出しても打てないぞ。」



「ご、ごめん…なさ…い…」



「これは皆も同じだ。

自分がやろう、自分が決めると意気込むのはいい。

だが、それで自分達の野球を
見失ったら元も子もないだろう。

それで結局出ないはずの男の手を煩わせた。」





皆は悔しさを歯を食いしばって殺していた。







彼の言うことは全て事実だ。







初回からとばして早々に
ガス欠になる先発投手。






身勝手なプレーをする1番バッター。





打てない球に手を出す4番。





勝手に身構えて自滅した、ナイン達…





今日の彼女らの三振数は12。






9人中3人は4打席三振に打ち取られている証である。





これこそが、チームの歯車が狂う要因となっているのだ。




「これではCランクに逆戻りだ。
今の皆の実力は分かった通り…
これは練習で補うしかない。」





高貴は一つ息を吐いて、




「ソニックがーるずは俺の
ワンマンチームじゃない。
それを証明してほしい。」




と、高貴はいつもならありえないほどの
苦言を彼女らにぶつけた。



















ランク戦は再来週。












高貴は、強い不安を抱えていた。






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