がーるずベースボール!

近衞

42話⚾︎通達⚾︎

 夕陽が差し込む学校の廊下を、
俺は歩いている。



頭にあるのは、昨日のスチュワーデスさんとの対談だ。



あの後、俺は日本国に戻り
大和田さんと少し話をした。








「ふむ、なるほど」



「…栗原メイアはずっと俺の夢の中に…」



「スチュワーデス殿はなんと?」



「不思議な話だね、と」



「となれば、君の夢によれば
栗原メイアは君に記憶の改竄を行った、
ということになるかね」



「では…まさか…」



「そう…」










「栗原メイアは、君となんらかの関係がある、ということだね」















「高貴!」



後ろから、聞き慣れた声が聞こえる。



「響子か」



「高貴、今日元気無いね?」



「いや、大丈夫だ。
それよりも、今日はミーティングだ。
俺のプレハブでするんだから
さっさと帰るぞ。」



「はーい」






















「さて、揃ったな」



プレハブの前に設置した木造の机と椅子。



以前Cランク選抜チームでミーティングを
した時に使った場所だ。



聖川の提案で、机を円卓に改造を施した。



聖川曰く、
「円卓の騎士のようで身が引き締まるな!」
とのこと。


俺は真ん中の席に座る。




「合宿は途中で抜けて悪かった。
今日、日野構からまた通達が届いてな。」



「最近多いわね。
八幡さん、何かしたのかしら」



「ああ!?」



「ふ、2人とも〜」



「ミーティング中だぞ。2人とも。」



いつも通り八幡と駒田が喧嘩して、
船田が仲立ちする。



1日抜けただけだが、
色々あって久々に戻ってきた
みたいな感覚だ。



「さて、その内容だが…」



俺は折りたたんでいた白い紙を広げた。



「相沢。代わりに読んでくれ。」



と、一番近くにいた相沢に渡す。



「ええけど…ええ…と」



相沢は咳払いをし、



「ソニックがーるず選手兼任監督、
玉原高貴に通達する」



















「この度、日本、イギリス両国の
野球機構の代表…大和田検事と
スチュワーデスの名において、選手として
Bランク戦の出場を禁止するやてえ!?」




思ってもみない話に、
相沢は声を張り上げ驚いた。



チームの皆も立ち上がって驚きを露わにする。




「どういうことですか?高貴さん!」



「どうも何もそこにある通りだよ」




「おかしいと思わないのか!?」



「高貴、ランク戦に出れないんだよ!?」



聖川と響子は俺に向かって
ツバを飛ばしながら叫ぶ。



「相沢、その下にある文を読め。
まだ終わってないだろう」



「あ、え…ああ。あるわ。

えー、監督としての出場のみ許可する。
尚、大和田、スチュワーデスの許可がある場合その限りでは無い」




「というわけだ。
出場が全くできないわけじゃない」



「で、でもそれでは私達ガ…」



「玉原君…が…いない…のは…」



「それなんだが」



と、俺は相沢から紙を受け取り、








「俺は、今回のランク戦には出ない。
許可を出されたとしても、だ。」




「な、何言ってんだてめえ!」




「そ、そんなのおかしいよ!」



と、不満と反論が飛び交う。




「お前達は」



と、場が静まる。



「俺がいなきゃ勝てないのか?」



「…勝てないわ。」



「俺が居なくても勝ちたい、
毎度毎度俺がいい所を持っていくのを
見て悔しいと思わないのか?」




「…」



「…正直、悔しい。高貴が私達のことを
思って言ってくれてるのは分かるよ」



「でも、玉原サンは私達の
チームメイトデス。」



「別にチームをほっぽり出す訳じゃない。
でも、これは良い機会だと思う。」



「だが…」



「…あと、新メンバーを1人補充する」





「え…!?」



「愛李華、可能だよな?」



「Cランク、Bランク優勝チームは
特例として、上の階級に昇格した場合可能ではある…はずですけど…」



「そう、ランク戦途中以外でも
戦力の補強は可能だ。
俺の代わりに新メンバーを迎える。」



「…いちおう聞いておくけれど、
新メンバーは…」



「樹原芽衣…愛李華の姉だ。
俺に変わるサードの選手として補強する」



「芽衣を!?」



「た、確かに姉は病気は完治してトレーニングは再開してますけど…」



「今日学校でそれを伝えた。
明日の練習から合流する予定だぞ。」



「…そう…ですか」




沈黙が、場を支配する。



その原因は、おそらく先程の高貴の提案だろう。




「…高貴、やはり日野構に抗議しない?」




「…一度、大和田さんに電話をした。」



先程の沈黙から一点、
皆は高貴に視線を集めた。



「その際に受けた説明に納得し、
俺はこの通達を受諾した」



「ふざけんなよ高貴!無責任じゃねえか!」



「いいえ、私は玉原君に賛成よ」



と、不満が支配する雰囲気を切り裂いて
駒田は口を開いた。



「てめえ、どういう意味だ!?」




「私達は確かに玉原君に監督になるようお願いしたわ。けれど、このチームの全てを玉原君に任せた記憶はない」




「どういう意味だよ!」



「このチームは玉原君のワンマンチームじゃないってことよ」





「私も高貴さんに賛成です。
このまま高貴さんにおんぶに抱っこなんて嫌ですから」




「高貴は私達を捨てる人じゃない…
高貴が納得したなら、それでもいいと思う。」



「お、お前ら…本気かよ?」



「…反対の意見があるのは分かる。
賛成を貰えるなんて思ってない」




「八幡さんはおんぶに抱っこで行きたい訳かしら?」



「な訳ねえだろ!理由だよ理由!
芽衣が復帰すんのも別にいい!

でも高貴がでない理由なんて何一つ
聞かされちゃいねえじゃえか!」



「何でもかんでも言うべきかしら?
貴女にも言いたくない事情もあるでしょう?」



「それは…そう…だけどよ…」



八幡は俯いて、



「…心配…なんだよ」



「…八幡さん?」



「合宿の時、手紙を読んだ時とか、
帰ってきた時とか、今とかよ…
高貴の顔、なんか元気ないっつうか…
なんつうか…」



八幡は俯いていた顔を上げ、



「…あたし達チームだろ…?
だから、何か事情があるなら、
話してくれてもいいじゃねえか」



威勢のいい八幡だったが、
今はそれが嘘だったようになりを潜める。



その声と眼には、
心配の色が隠せなかった。



「…すまない、八幡」



高貴は一つ息を吸い、



「…今は話せない。
でも、話せるようになったら、
必ず包み隠さず話す。…約束する」



「…ほんとだな?ほんとにほんとなんだな!?」



「ああ。必ず…必ずだ。」



八幡は何かを察したのか、
少し微笑んだあと高貴から眼をそらした。








…ありがとう、そしてすまない、八幡。




「さて、明日から練習を再開する。
芽衣も合流するから、よろしくしてやってくれ。」




俺は立ち上がって、




「作戦は追って伝える。
それじゃ、みんな解散」





俺の言葉を皮切りに、
皆は立ち上がり思い思いに去っていく。















「高貴」




プレハブに入ろうとする高貴を呼び止める。




「八幡?どうした」



「…馬鹿」



と、胸を少し小突いてくる。



「高貴、そこに横んなって」



と、プレハブ内のベッドを指差す。



「いや、どうし「いいからいいから!」



と、八幡に背中を押される。







ベッドに2人で座ったあと、
八幡に頭を掴まれ、



柔らかい感触と温もりが広がり
八幡の柔らかい手が俺の頭に触れる。



「や、八幡」




「前、デート出来なかったから
その代わりってことで。」



と、八幡は変わらず手を動かす。




「…すまない、八幡。心配をかけた」




「本当…ふざけんなよ、高貴」



正面から八幡の顔を見据え、
俺は言葉を述べる。




八幡はギャルな装いをしているが、
色白でスタイルの良い美人なんだよな…



「…高貴はさ」




「ん?」




「優しいよね」




「…そう見えるか?」




「うん。ランク戦に出ないのは、
あたしのためを思ってのことなんだよね」





「…確かに、俺に回せばどうにかっていう考え方が、悪い意味で広がってた。」



「あたしが打てなくても、高貴なら打ってくれる…確かに、そう思ってた」



「これを機に、みんなに変わってほしいんだ」




「大丈夫だよ。聖川も湯浅もいるし。
その点はちゃんと伝わってる」



「…だといいが」




「でも、あんたがいないのは
寂しいもんだよ。
あんたのセンターの守備も脚の速さも
あたしより何倍も上なんだからさ」




「…。」



「あたしらが絶対、高貴をAランクに連れて行ってみせるから」




「…ああ。頼む。」




「だから、あんたもしっかり監督やんなさいよ」




「…ああ!任せてくれ!」




と、俺は決意に満ちた表情でそう言った。





















Bランクに上がり、いよいよ給金の出る
プロ選手としてのスタートを切る。



その闘いは過酷。






だが、彼女らなら乗り越えると信じて。













俺は、皆を信じることに、決めた。

 


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