がーるずベースボール!

近衞

40話⚾︎邂逅➁⚾︎

 降りしきる雨の中、
車は先へ先へと進んでいく。



後部座席のミラーに次々と流れる雫を見て、この先の未来に思いを馳せた。




「…釜田さん」



「なんでしょう?」



「釜田さんは、この手紙の内容をご存知なんですか?」



「いえ、私は手紙を渡せと言われただけですよ」



「…そうですか。失礼しました。」



「…ですが、大体の想像はつきます。」



「…貴方は」



「貴方の、両親の件について…ですかな」



「…」










あの時見た手紙の内容。


それは、
今の俺にはタイムリーな内容だった。





【拝啓 玉原高貴様


 貴方の両親を知っています。

 日本国野球機構 会長 大和田検事おおわだけんじ











日野構の会長が出すような手紙なのか、
と思った。



だが、押された印は確かに日野構のもの。



あの印は複製が不可能とされるシロモノで、誰かが悪戯で出すとは考えにくい。




「その手紙は、大和田会長が大急ぎで筆を取ったものです。

緊急事態だ!と大慌てでしたよ。」



「緊急事態…ですか。」



「ええ。私もすぐに手紙を受け取って
車を走らせたものです。」



どうやら、
日野構が慌てるほどの内容らしい。




ふと、車がビルの前で止まる。



釜田さんは運転席から俺の席側に周り、



「さあ、着きましたよ。玉原君。」



と、ドアを開けて言った。



俺は車から降り、
ビルの入り口へと向かう。









「玉原高貴様ですね?ようこそいらっしゃいました。」



と、スーツ姿の若い男性が頭を下げる。




俺はその男性について行き、
会長室まで通された。



男性がノックをし、入室を促す声を聞く。



男性はドアを開け、
俺は会釈をして入室した。



「失礼します。
ソニックがーるず監督の玉原高貴です。」



「来てくれたか、玉原君。」



と、窓の外を見ていた白髪の男性が
俺の元にやって来た。



後、ドアが閉められる。



「始めまして、日本国野球機構会長の
大和田検事という者だ。

今日は急な呼び立てに応えてくれてありがとう。」




「い、いえ。それで、あの手紙は…」



「ああ。緊急事態だったのでね。
とても稚拙で幼稚な手紙になってしまった。申し訳ない。」


と、大和田さんは頭を下げる。



「それで、その話なんだが…
まずは座ろうか。」



と、着席を促される。



「さて、単刀直入で悪いのだが…
君は自身の御両親の事情をどこまで知っているのかね?」



「…科学者で、禁忌を犯した…と。」



「ああ。過去の文献を無許可で
閲覧したとされる。」



「過去の文献に許可なんているんですか?」



「150年前の人間は戦争や差別が激しく、
軍事物資や軍事兵器などの情報も
存在する。

知らない方がいい情報が流出する
可能性がある。

だからこそ、それらを悪用しない為に
情報の制限が必要なのだよ。」



「それは学校の授業で学びました。

では、私の両親は軍事関係の文献を
無許可で閲覧したのですか?」



「いや、軍事は関係ない。
もっと別の文献だよ。」



「別…?」



「これはあくまで私の推測だ。
だが、証拠と照らし合わせれば
筋の通る話だ。

その証拠を手に入れたのはつい先刻でね」



「…そんなに、重要なんですか」



「ああ。」



「…では、その…証拠…は?」



「これを見てくれ」



と、大和田はパソコンの画面を見せる。



「これは科学者、研究者達の過去の文献の閲覧履歴だ。

これは余程の人間でない
限り見る事は出来ないのだが…

特別に許可を頂いた。」



「で、これが何ですか?」



「17年前の8月7日…
ある文献が不正閲覧されている。」



赤く表示された文字にカーソルを合わせる。



「玉原…元気…!?」



「ああ。君の父君だろうな。」



「文献は…150年前のプロ野球選手…?」



「ああ。そしてその次。」



「…科学者、栗原メイア…?」



「150年前、この地球にやってきた科学者だ。」



「女性の権威向上の為に、
野球の道具を改造したのは…」



「そう、栗原メイアだ。
そしてこの文献の閲覧者は…」



「…玉原美月!?まさか…」



「…君の母君だろう。
そして、今回2人が生きている、
という情報が回ってきた。」



「…!?」



「ここからは落ち着いて聞いてほしい。

君は、記憶の改竄を受けているね?」



「は、はい。首に傷が…」



「恐らく、美月殿は栗原メイアの何らかの秘密に気付き、文献を閲覧した。

そして元気殿はその秘密を暴き出すことは困難だと悟り、君に記憶の改竄を行なった。」



「…秘密、ですか。」



「元々この栗原メイアは謎が多い。
巷では、まだ生きているのでは無いか
という噂もある。」



「150年前の人物がですか?」



「目撃情報がある。
まあ、殆どがデマのものだが…

一つ、無視できない証言がある。」





































「イギリス国野球機構、
スチュワーデス殿だ。」





高貴は瞠目する。






「イギリス国の…!?」




「…直ぐに君は、このスチュワーデス殿に会いに行くべきだ。

幸い、ランク戦は7月。
まだ時間はあるよ。」



「…。」



「…解せない、と」



「はい。
親父は何故、プロ野球選手の知識や技術を
俺に託したのか…」



「それは、栗原メイアの秘密だろう。」



「栗原メイアの秘密…」



「それが何なのかは分からない。
だが、元気殿は150年前のプロ野球選手の知識や技術を、君に記憶の改竄という形で託した。」



「ランク戦でSランクに登り詰めれば、
国の上層部に会う機会は増える。

その為に、俺に…」



「そう考えるのが妥当だろうな。

上手くいけば栗原メイアについて何か探れるかもしれん。」



「…なるほど。」



「調べたが、君の両親は
イギリスで研究をしていた。

もしかすれば、君の両親についても
何か知れるかもしれないな。」




「…分かりました。」



「明日、スチュワーデス殿と約束を取り付けている。

会いに行って見るといい。」



「…はい。ありがとうございます。」



すると、扉が開く。



「要件は以上だ。
すまないね、急に呼び立てておいて
長話をしてしまって。」



「いえ、貴重な話をありがとうございました。」



と、俺は大和田さんに頭を下げる。



「…最後に一ついいですか?」



「…何かね?」



「何故、俺にこんな話をしたんですか?」



「ただの老婆心だよ。」



と、大和田は姿勢を正す。




「ランク戦で
君の姿を見させてもらった。

仲間と一緒に汗を流し、
仲間の為に吼える君の姿をね。」



大和田は一息おいて、



「若い頃を思い出したよ。

怪我で野球ができなくなった後、
野球の普及のために奮闘したあの頃をね」





「君のその姿に、若い頃の私を重ねた
だけだ。年寄りのたわ事だよ。」




「…いえ、とても助かりました。」



と、俺は立ち上がり、



「必ず、貴方に良い報告をします。」



「ああ。楽しみにしているよ。」



と、大和田は満面の笑みを返した。



「ありがとうございました。」





と、俺は一礼しその場を後にした。






























































扉が閉められ、大和田は脱力する。



「これでよかったかね」








































「メイア」

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