がーるずベースボール!

近衞

31話⚾︎大好きな、仲間がいるから⚾︎

 街灯が道を照らす。



夜空の星達が自身の存在をアピールし、
宵闇はそれを映えさせる。




高貴は、1人で道を走っていた。
















…試合は、完敗。




結局、あの裏の攻撃で逆転できず
コールド負けを喫した。





Cランク最強メンバーを持ってしても、
1点を取る事すら敵わない。





こちらの安打は、
高貴のスリーベースヒットと
レフト前ヒットだけ。





Aランクとの力の差を、肌で感じ取った。









「…響子」







だが、
俺は今別の事で頭がいっぱいだった。





試合後、響子の姿はベンチ裏には無く
程なくして帰宅した事を知った。




そしてドビスケ野球喫茶に行ったが、
両親曰くまだ帰っていない、とのことだ。




俺は荷物を喫茶店に置かせてもらい、
直ぐに走り出した。






「どこにいるんだ…!響子!」






俺は息を上げながら、響子を探し続ける。




辺りは暗く、時間も遅くなってきた。





このまま見つからなければ、と
高貴は少し焦りを感じる。




河川敷、喫茶店、学校と目ぼしいところをあたったが、見つからず。




そして、自分のプレハブに戻る。



















そこに、響子の姿があった。




プレハブの前で、
1人椅子に腰掛けていた。









「響子!」





呼び声に反応した響子は、
直ぐに立ち上がって逃げようとする。





「待ってくれ!響子!!」




思わず、響子は立ち止まる。




「高…貴」




その声に、普段の活発さは
どこにもありはしなかった。




「…響子」




高貴は手の届くところにまで近づき、
響子を優しく抱きしめた。





「良かった…無事でいてくれて…」





高貴は更に、その力を少し強める。






「高貴…私…」





高貴は響子を解放し、響子の顔を見る。







「このまま野球続けていいのかな…?」




「…え?」



「…私、思ってたの。
今日の試合も、前の決勝戦も。
私なんかが、野球やってていいのかって」




「何言ってるんだ、いいに決まって」



「良くない!」



「…っ!」



「…高貴が入ってくれて、
チームは変わった。

弱小で全然勝てなかった私達が、
Bランクに上がるくらいに。

私も自分の力を信じることができたの。

…でも、あの決勝戦で怖くなった。」



「怖く…なった?」



響子は高貴の服を掴む。




「…ツーシームが全く曲がらなくて、
ホームランを打たれたでしょ?

あれから怖くなってツーシームが
なげれなくなっちゃった。

打たれるのが怖くて、投げるのも怖くなった。

自分が打たれたらどうしようって、
そう考えるとマウンドに立つのが怖くなった。」




服を掴む力が強くなる。





「私のせいで負けたらどうしよう。
そうなったら、私このチームにいられなくなっちゃう。」




「そう思ったら、足に力が入らなくなったの。」




響子の声は、段々と涙声に変わっていく。



「響子…」






「高貴…私…」










響子は涙を流しながら、
























「…野球が、怖いよ…」











響子の声は、震えていた。




みんなの為に投げられない怖さ。




打たれる怖さ。




色々なものが、涙と声に現れた。







「響子」







高貴は再び、響子を抱きしめる。





「…俺も怖いよ。」




「え…?」




「監督として、みんなを導けるのか…?
ミスをしないだろうか?
関係が壊れないだろうか?

毎日怖いことだらけだ。」












「でもよ、生きてたら怖いことなんて
いっぱいある。
それを1人でどうにかするのには
時間も労力もいる。」













「だけど、俺もお前も
それを分かち合えるだろ?」

































「大好きな、仲間がいるから。」





















響子の心の鼓動が早くなる。














「ミスをしても、みんなで助け合えばいい。みんな完璧じゃない。
だから野球は9人でやるんだよ。
9人いなきゃ野球できないんだから。」














「だからよ、響子。」




































「俺達を、頼ってくれないか?」














心が、熱くなる。














涙が、暖かくなる。














それは心地よくて、嬉しくて、
でも少し切なくて。














でも、嬉しい。











「高貴」












「どうした?響子」












涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げ、














「私、まだ…このチームにいていいの?」














「当たり前だろ?そんなこと!
またみんなで野球しよう!」



と、高貴は笑顔を見せた。






「あり…がとう…ごめんね…高貴…」





「…ああ。どういたしまして。」





響子は高貴服に顔をうずめ、


「もう少しだけ…こう…してて、いい?」




「ああ。」





「あり…が…とう…」

















宵闇に輝く無数の星達。











それらは皆、涙を流す少女と、
その少女を優しく受け止める少年を
見守っていた。

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