がーるずベースボール!

近衞

30話⚾︎逆襲⚾︎

 白い軌跡は、唸るように向かっくる。












それは体全体を使って投げた
全力、渾身の一球。














やがてそれは、














巨大な白球と化した。














「ストライクワン!」





「な…!」




レンは動けなかった。



マウンドから放たれた軌跡は、
近くにつれその姿を大きく変えたのだ。





つまり、段々と大きくなり、
ミットへと吸い込まれた。




「何が起きやがった…?
なんだ今のストレートは…!?」



レンは状況を飲み込めていなかった。



スピードガンに150kmと表示されている
のを見て、更に動揺する。





「150kmどころの騒ぎじゃねぇぞ…!!」




レンはバットを少し短く持ち変えた。













「ストライクツー!」



外角高めに球は吸い込まれていく。



巨大化したように見える球に、
思わずレンは打席を外した。



「どうなってやがる…!?」



レンは高貴を見据えるが、




「なんて眼をしてやがる…!
これじゃ誰も打てねぇぞ…!」



レンは高貴のストレートに唸り、
額から汗が滝の様に流れ出る。



「こうなったら…!」




レンはバントの構えを見せた。



































ふざけるな。













ふざけるな…!
















ふざけるな!!

















眼前に迫る巨大な軌跡。











レンはそれを捉えんとした。


















が。




















「ストライク!バッターアウト!」


バットは軌跡をすりぬけ、
乾いた音を響かせた。



スピードガンは152kmを計測し、
球場はどよめきに包まれる。





「なん…だと…!?」



レンは、衝撃を受けた。






いや、恐怖した。









玉原高貴という男の存在に。





レンは、
少しの間動く事すら出来なかった。






《5番、サード橋本さん》




ベンチに引き上げるレン。



その表情は、酷く落胆し
眼を伏せていた。




「…どうだった?レン。」




「…これだけは言える。
お前には…いや、ウチには打てねえ。」



「…どういうこと?」




「あいつはストレートしか投げてねえ。
だが…そいつが生き物みてえに
俺に向かって来やがるんだ。」



「生き物?」



「お前も立ちゃ分かる。
…あのストレートはマジでヤバイ。」




「ふーん」




と、レンはベンチへ引き上げた。























「ストレートが生き物とか、何それ。」



と、橋本は打席に立って呟いた。






だが、その考えは











数秒後に、消え失せた。



































「ストライク!バッターアウト!」



「うっそぉ…?」



ベンチへと引き下がる高貴を見て、
橋本は鳥肌が立った。


「唯が惚れるわけだわ…」












「レン、花音」



「なんです?監督」


「何?唯」



守備につくため、ベンチを出ようとする
2人を呼び止める。



「どうだったかしら?高貴君は」



「…さっきは悪かった。
あの野郎はバケモンだ。擦りもしねえ。」



「レンが言ったこと、
分かった気がするよ。
初めてボールが怖いと思った。」



「そうね。私の眼にも速く見えるわ。
スピードガンは152kmだったけど、
体感はもっと速いんじゃないかしら?」




「…ああ。160は出てると思った」



「それだけ、高貴君の球のキレは鋭いということよ。生半可では当たらないわ。」



「うん、あれは簡単じゃない」





「とにかく、こちらは11点あるわ。
気を抜かず守りましょう。」



「了解!」「うん!」




と、2人はポジションに向かって行った。







「…想像以上ね。」



と、手を口に当てながら呟いた。

















「玉原、大丈夫か?」



「ん?大丈夫だぞ。」



「本当かしら?先程から玉原君は無理をしているように見えるわ。」



駒田の言う通り、センターでの
通常以上の守備範囲での守備機会、
そして投手としての登板。






全力で走り回ったあと、
初めから全力投球をしている。




その鬼気迫る姿に、
皆は心配を隠せないのだ。





「…俺は大丈夫だ。
それよりも、まずは1点。
1点づつ返していこう!」



「そうですネ!眼にものを見せてあげまショウ!」

































私は、最低だ。




ただ心配してくれた高貴に、
最低な事をした。






【触らないで!】











何故、あんな事を言ったんだろう。






何故、打たれたんだろう。






どうして?何で?












迷宮の中で彷徨うかのような
感覚に、吐き気を覚える。











「ごめんね…ごめんね…高貴…」














彼女は逃げるように、球場を後にした。

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