がーるずベースボール!

近衞

29話⚾︎亀裂⚾︎

 試合は5回裏。7-0。ワンナウト満塁。


負傷した雨宮に変わり登板した響子は、
高貴の守備にかなり助けられていた。



外野を狙い打つ相手のバッティングに
合わせた守備シフトを敷いて、
何とか無失点に抑えている。



問題は打撃。

選抜チームは2巡目に突入したが、
ヒットは高貴の2本のみ。



完全に抑え込まれ、
観客も何人か席を立っていた。














「監督」



「何かしら?レン。」



渋い声で球宮に話しかけたのは、
チームで4番を務める巨漢の一塁手
レン・ソンヒだ。




彼はこのチームに所属する男性唯一の
レギュラー選手で、チームの主砲。


だが唯一の肉親である病状の母親を救う為
裏で涙ぐましい努力を重ねる男である。




「この試合の意味が分かりません。
あのセンターはともかく、
他の女共は話にならない。」




「…それは分かっているわ。」




レンは眉をひそめ、




「あんたの逢瀬に何で俺達が
付き合わなきゃいけないんです?」




「…。」




「レン、それは言い過ぎだよ。」




「何言ってやがる!お前も同じだろうが!こんな試合、時間の無駄なんだよ!」




「でも、私達の監督は唯だよ。
監督の言うことは絶対。チームのルール」





「ふざけんじゃねぇ!俺はS級になって
母ちゃんの病気を治すんだ!
無駄な時間過ごしてる暇は無えんだよ!」




「…レン。」




球宮はレンを見て、



「待たせたわね。メインディッシュよ。」




「ああ?何言ってやがる…?」








スクリーンには、4の文字。




そう、満塁ホームランが飛び出し
戦況は11-0とワンサイドゲームに
なり始めた。



「ほら言わんこっちゃ無え!」



「いいえ、まだよ。
高貴君はまだここでは終わらないわ。」




「その高貴って野郎はいつ投げんだ?
俺達に通用すんのか?」





「ええ。必ず。
それでも満足できないなら、
好きにしてもらっていいわ。」



レンはバットを持って、




「ケッ!ああ!好きにさせてもらうぜ!」




と吐き捨て、
ズカズカと打席に向かって行った。




「…ストイック過ぎるのも考えものだね。
ごめんね、唯。」



と、橋本は球宮に頭を下げる。




「いいのよ。
それが彼の良いところだから。」


と、球宮は橋本に頭を上げるように促し、
微笑んでみせた。




「レンは良くやってくれているわ。
そもそもこの試合は私の我儘に
付き合って貰っているのだし、
ああ言われても仕方ないのよ。」



「…優しいね。唯は。
あ、噂の彼氏君がマウンドに来たよ。」




「か、彼氏だなんてそんな…
で、でもそういう言い方も悪くないかも」




球宮は少し頰を赤く染め、
右手を顔に添えて言った。



「恋する乙女だねえ…」
















「なんで…?どうして…?」



3人のランナーがホームで
バッターを出迎える姿を見て呟く。



その背中に、いつものような活気は無かった。




聖川が駆け寄るが、
その姿を見て声をかける事は
出来なかった。



「響子!」



センターから高貴も駆け寄る。




「球が高いぞ、大丈夫か?」




「ごめんね…なんか調子悪いみたい…」




と、響子はベンチに下がろうとする。






「待て響子!まだ…」





高貴は響子の手を掴むが、







「触らないで!!」






「っ!?」







強く拒絶されてしまった。






「…ごめん、高貴」








と、響子はベンチの裏へと下がってしまった。




「君達、交代するのかね?」


事態の一部始終を見た審判が
マウンドに来ていた。



「…はい。ご迷惑をおかけします。」




「玉原!?」



高貴は歯を食いしばり、



「…今の響子に
投げさせるわけにはいかない。」





歯を食いしばって絞り出した声。



高貴の眼を見て、
聖川は強く言い出せなかった。



「…ポジション変更します。
投手は玉原、中堅手は雨宮千夏。
湯浅の代わりにドロッセルを左翼手に
起用します。」


「分かった。」



と、審判は高貴に背を向けた。



「…聖川。」



「何だ?」



「必ず抑えて、響子に謝りに行こう。
…付き合ってもらえるか?」




「ああ!勿論だ!!全力で来るがいい!」



と、ナインは散って行った。














《4番、ファースト、レン君》



「遂にお出ましか。
お手並み拝見と行こうじゃねえか。」



本来なら既にコールド勝ちとなっても
おかしくない。

だが、監督はこの玉原を見たいが為に
特別にこの回まで
プレーすることになった。



めんどくせえ、と思いつつ



レンは左打席に立ち、その姿を観察する。














マウンドから、球宮を見る。







その視線に気づいたのか、
先程橋本と話していた時以上の
笑顔を見せてくれた。





【早く代わった方がいいよ】





くそっ。




【あの子じゃ、
少なくとも無失点は無理だね】







見抜いていやがったってか。








「そうかよ…だったら…」




























「打てるもんなら打ってみろおおお!!」













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