がーるずベースボール!

近衞

22話⚾︎激戦の行方⚾︎

9回表のソニックがーるずの攻撃。


8番ドロッセル、9番愛李華は雨宮の投球の前に手も足も出ず凡退。


1番聖川もファーストファールフライで
スリーアウトチェンジ。


勝負の行方は、9回裏にもつれ込んだ。


「よし!この回を抑えれば勝ちだ!
気合い入れていくぞ!」



「「「「おおおおー!!」」」」










《9回の裏、ブレイカーズの攻撃は
3番、センター雨宮千夏さん》



9回のマウンド。


あと一歩で勝てるという甘い誘惑が、
選手達を襲う。


井上は外角に構え、俺もそれに従う。





キン!


少し弱い金属音だが、打球は三遊間の
深い所へ転がっていく。











素早く反応した駒田は、
捕球の後ファーストへ送球する。



「アウト!」


華麗なプレーに観客が沸き、
ブレイカーズベンチにプレッシャーを
与えた。



「ナイスプレー!駒田!」


駒田はたなびく赤髪を右手で払い、
息災と健在をアピールする。



その赤髪は砂埃に汚れているが、
そんなことを駒田は気にしない。




《4番、ピッチャー雨宮君》


さて、今日2度目の大勝負が切って
落とされようとしていた。




1戦目は高貴に軍配が上がった。



だが、長打力のある雨宮を侮る事は出来ない。





井上は敬遠のサインを事前に出すが、
高貴は首を横にふる。






この男に再び勝たなければ、
この試合には勝てない。





高貴の眼は、そう井上に語りかけた。






井上はそれを理解し、マスクを被る。





「…感謝する。」



その呟きに、井上は反応する。



「そう、伝えてくれ。」




呟いた後、雨宮は眼を閉じる。






そして高貴を見据え、覚悟を決める。






だが、雨宮は背中の冷たさを感じていた。




高貴を見据えた途端、
全身の汗が引いている。




まるで蛇睨みにあった鼠のような
気持ちを、雨宮は味わっていた。




だが、雨宮はそれを理解できず。





高貴の威圧感に、雨宮は呑まれていた。







「ストライクワン!」




内角低めに、力のあるストレートが
吸い込まれる。




観客の声援。





それが、打てない自分を誹るようで。




だが雨宮は直ぐに頭を切り替える。






それでも、背中の冷たさは消えない。












「ストライクツー!」







いつもより縮こまった空振りをし、
思わず打席を外す。





149kmを記録したスピードガンに、
雨宮は眼を見開いた。













打てるのか、という不安が
彼の頭をよぎる。





彼の手は、震えていた。









「「お兄ちゃん!!」」






ふと、雨宮はベンチを見る。






2人の眼には、大粒の涙が溜まり
何度も流れ落ちていた。









「「お願い!打ってえええ!!」」


かれそうな声が、雨宮の折れかけた心に
温かさを与える。












瞬間、雨宮の中で何かが消える。










高貴はマウンドから、それを感じ取った。



だが、高貴は物怖じしない。














龍は、孤独ではなかった。







それを知った虎は、
自然と笑みが零れた。













投げて、打つ。













投げて、打つ。












気付けば、2人の真剣勝負は
既に10球を越えていた。











雨宮は息を荒げ、歯をくいしばる。






妹の為に。チームの為に。








負けられないんだ!!





























軌跡は、真っ直ぐにその姿を進める。













対して体全体で押し出された
もう一方の軌跡は、
見える軌跡に向かっていった。

























鳴り響いたのは、
ボールがグローブに収まる
乾いた音。










バットは空を切り、
その役目を果たす事なく役目を終えた。




「ストライイーク!バッターアウト!!」






151 kmと計測されたスピードガン。


そして白熱し観客全員が息を飲んだ
超がつく激戦の結末に、

勝利を挙げた高貴を讃える歓声が
球場に鳴り響く。





「しゃあああああああ!!」




それと同じタイミングで、
英雄の虎は戦いの勝利に吼えた。




雨宮は溢れそうな後悔の嗚咽を堪え、
ベンチへと引き下がる。




バッターボックスに向かう秋を
見る事なく、ベンチに腰掛けた。













できる事なら。











こんな顔で、ベンチに戻りたくなかった。









この手で、最高の笑顔の妹達を
抱きしめてやりたかった__。




「すまない…みんな…」













「バッターアウト!ゲームセット!!」







その懺悔の呟きは、
闘いの終わりを告げる号令に吸い込まれていった。










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