がーるずベースボール!

近衞

21話⚾︎暗雲⚾︎

 《8回の裏、ブレイカーズの攻撃は、
8番、ショート矢澤さん》


8回の表は高貴のグランドスラムを最後に
安打は無かった。


6-5の1点差の状況で、8回の裏を迎えた。



マウンドには依然として愛李華が立つ。


危なげなくツーストライクまでをとり、
3球目だった。







キン!



打球はライトの船田の前に落ちた。


ブレイカーズ1の守備職人、
矢澤智春が打撃で反撃の狼煙を上げる。


「いいよ智春ー!」
「ナイスバッティング!」



珍しいな、得意な変化球が甘くなったぞ?








続く9番バッターにも出塁を許した。



「愛李華!気を抜くなよ!」



だが、愛李華の様子が明らかにおかしい。


右肘を気にして…




「まさか…」


愛李華は変化球を主体にする軟投派。


ウォーミングアップの際の柔軟で、
体が固すぎて泣きそうになってた…


いや、変化球の投げすぎで肘を!?



「 愛李華!」



俺はマウンドに駆け寄る。



「ど、どうしたんですか?高貴さん…」


聖川がタイムをかけて
マウンドにやってくる。


内野陣がマウンドに集結。


「どうしたのだ?こ、玉原」



こ、玉原(5回目)。



いやそんなこと言ってる場合じゃない!



「愛李華、お前肘を痛めているのか?」


「え…?な、何のことですか?」


やっぱり何か隠してる!


「肘を見せろ、愛李華。」


「え、嫌ですよ、セクハラ…」


「やっぱり肘痛めてるんやなあ。」


「べ、別に…痛っ!」



駒田が肘を横から優しく掴んでいた。


「…怪我をしているようね。
とても肘が熱いわ。」


愛李華は駒田の手を振り払い、


「別に…これくらい!」


「愛李華!」


聖川の凛々しい声に愛李華は怯えた眼で
反応する。


「…苦しいが、変化球がほとんど曲がっていない。制球も曖昧だ。」


「…!」


「無理は…しない…で…愛李華ちゃん…」


グローブで右肘を抑えて、


「わ、私は大丈」


「ピッチャー交代だ、愛李華。」


「こ、高貴さん!?」


「これ以上、
大事な戦力に無理はさせられない。」


「…そんな…」


力の入らない右手を睨め付ける。


ふっ、と肩の力が抜けた。


「分かり…ました。」




落胆した愛李華の声に、
聖川はやるせなさを感じる。
 


「愛李華」





愛李華は高貴の方を向く。





「怪我が治ったら、また投げてくれるか?」







期待してるぞ、とは言わなかったが。






愛李華は笑みを浮かべ、


「仕方がないですね…デート1回で手を打ってあげます!」





いつもの軽口を叩く姿を見て、
内野陣は皆安堵した。





「ポジションを変更する。
井上はキャッチャー、聖川はサード。
空いたファーストに愛李華がついてくれ。」


「はい。」「承知した!」「はーい ︎」



「ピッチャーは俺がやる。
あと2回だ。みんな気を抜くなよ!」



掛け声と共に、内野陣は定位置に着く。




ポジションの変更がアナウンスされ、
俺は投球練習を行う。


「高貴さん!落ち着いて投げてください ︎」



「高貴!我々がついているぞ!」



「気楽に投げたらええで〜」



「高貴ぃ!いてこませええ!」



…本当力強いよ。




だから俺は…















「ストライーク!バッターアウト!」



心置き無く闘える!





スピードガンは142kmを計測していた。













その後、1番打者と2番打者を空振り三振に打ち取った。



「見事だ!玉原!」


「すごいでス!玉原サン!」




俺は労いの言葉にハイタッチで返した。


「さあ、9回だ!突き離すぞ、みんな!」






「「「おおおおー!!!」」」




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