がーるずベースボール!

近衞

20話⚾︎だから俺は。⚾︎

英雄の咆哮が、龍の威圧を劈く。







ノーアウト満塁、一打逆転。








その戦いの行く末を、
会場にいる皆が固唾を飲んで見守る。











妹達を想う優しくも強固な決意と、
仲間の為に未来を切り開く覚悟。











両者の眼は、互いを見据えていた。











初球。



ノーワインドアップの構えを取る。









ランナーは反応するが、動かない。













否、動けない。





打席の英雄の眼が、
ランナーを動かせなかったのだ。









俺が決める、という意思が
ランナーの脚を止めさせた。





















「ストライーク!」



大気を劈くスイングは、球を捉えず。



スピードガンは146kmを記録し、
突然息を吹き返した投手に
会場はどよめいた。





「くっ…!」



思わず、雨宮に眼を向ける。






そこには、銀髪をはためかせた龍が
全てを一球に賭けると言わんばかりの眼で英雄を睨め付けていた。














その姿は、天に至ろうとする勇者の前に
立ち塞がる天翔ける龍の如く。











虎は龍と正面から相対する。



奇策は必要ない。




英雄は剣を握りしめた。














カン!









「ファール!」



「まだ…!振り遅れんのか…!」



再びスピードガンは146kmを計測し、
会場の皆は呼吸を忘れた。





ノーボールツーストライク。


完全に追い込まれていた。


「タイム!」



ベンチからタイムがかかる。



俺は思わず打席を外した。



目の前には、
眼だけでなく眼の周りを赤くした
響子が立っていた。



「響子?」



響子は英雄の手を握る。



「おい、響子?」


「お願い…」


「っ…?」




響子は顔を上げる。


瞼に涙を溜め、
















「私達を、あそこへ連れてって!」




響子の言葉に、俺は眼を見開いた。



「…ああ。」






俺は握られた手を顔の高さまで上げ、





「必ず勝つ!!」


響子は頰を緩め手を離し、


「待ってるから…」


と言い残して、ベンチへと引き上げた。


「いいかね?」




「…はい!」


「プレイ!」


俺は打席に再び立ち、龍を睨め付けた。













…何も考えなくていい。






打つ。














仲間の為に。












打つ。











響子の為に。













龍は全身全霊で魂を投げ込む。












打つ。













俺を信じてついてきてくれた、
みんなの為に!!


























ガァン!!











大気を劈く爆音。











英雄の剣は無残にもへし折れた。










場の時間が止まる。













スピードガンは148kmを計測し、

















白球の軌跡は、
《雨宮大地》と書かれたスクリーンで
霧散した。








瞬間、会場から歓声が沸く。





今日1番の大勝負の結末に、
会場は惜しみない歓声と拍手を
2人の選手に送る。







奏でられる、賞賛の交響曲。





虎はそれを背に、ダイヤモンドを回った。



6-5。逆転。


ここまでの努力が灰燼に帰した
ブレイカーズナインは、
動揺を隠せない。






「最高だぜ!高貴ィ!!」


八幡が俺の背中を強く叩く。



「最高でス!玉原サン!」


ドロッセルが少し涙ぐんでいる。



「最高や!玉原君!」


満面の笑顔が、涙で少し引きつっている。



「…感無量だわ。」


涙を隠せていない、駒田。












「高貴!」


細い腕を背中に回し、
高貴の胸に顔を埋める。





高貴は響子の頭を優しく撫でながら、






「…待たせてごめんな。」



「うんうん、待ってないよ。」


響子は顔を上げて、





「ありがとう…高貴!」


瞼に溜まる涙を指で拭い、







「ああ。どう致しまして。」



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