がーるずベースボール!

近衞

19話⚾︎響子のために⚾︎

試合は7回ワンナウトランナー無し。



カウントはフルカウント。



響子からのバトンを受け取り、
愛李華は得意の変化球を投げ込む。




「ストライク!バッターアウト!」


「よし!」




高貴は思わず拳を握る。


「ナイスピッチングだ!愛李華!」



愛李華は高貴に向けて
笑顔を返してみせた。



「敵にすると厄介だが、
味方だとこうも心強いのか…!」



続く7番打者をショートゴロに打ち取り、
この回の攻撃を止ませる。



「ナイスボールだぞ!愛李華!」



「愛李華ちゃん!ナイスボール!」



響子はいの一番に愛李華を出迎える。



響子と愛李華は笑顔でハイタッチを交わした。



眼が赤くなっている。
涙を流したのだろう。



…自然と、反骨心が沸き上がる。







《8回の表、ソニックがーるずの攻撃は、
1番、キャッチャー聖川さん》



「聖川!練習のおかげで球は見えてる。
よく見ていけよ!」



「ああ!」







キィィン!



跳ね返された打球はセンター前へと落ちる。



「出ましたネ!聖川さんの狙い撃チ!」



「よし、みんな続くぞ!」








《2番、ショート駒田さん》



「タイム!」



高貴はタイムをかけ、
駒田を呼び寄せる。



「何かしら?」



高貴はマウンドの
雨宮に対して背を向けて、



「ーーー…。」


「本気なの!?」


「ああ。頼む。」



駒田は逡巡して、


「分かったわ。背中は預けるわよ。」


「ああ!俺が必ず駒田をホームに返す!」



その言葉に駒田は安心したのか、
頰を少し緩める。


そしてすぐに引き締め、

「失礼いたしました。」


「プレイ!」


雨宮はクイックの姿勢から、一球目を投じる。






瞬間、1塁ランナーの聖川は2塁へ猛然とダッシュ。






それに気づいてキャッチャーは
送球の体制に入るが、








「ば、バント!?」







駒田はバントの構えから、
正面の雨宮に向けて打球を飛ばす。











瞬間、駒田の行動に一部の観客はどよめくが、当事者の耳には入らない。











フェアが宣告されたゴロを雨宮が
処理に向かうが、


盗塁に気を取られたキャッチャーは
雨宮への指示がワンテンポ遅れてしまう。










猛然とダッシュをしていた雨宮は捕球の
ためにスピードを緩める。








キャッチャーからの指示が飛び、
雨宮はボールを掴む。










が、落球。ボールを握り損ねてしまった。








再び決まった奇策に、
スタンドからは驚きに満ちた息と声が漏れる。




「玉原君、駒田さんにバントを指示したの?」



「ああ。昨日愛李華が見せてくれた
動画と、今日の雨宮のプレーなら
もしやと思ってな。」



そう、俺の第3打席は内野安打。






「バントで雨宮よりに三塁線に転がしたが、本来雨宮が処理するゴロをわざわざ
サードが処理していた。



試合は終盤、キャッチャーのリードも慎重になってきてる。



野球を始めたばかりの雨宮に
キャッチャーのリードに対して
疑問を持つことは難しい。




実際、首を一度も振ってないからな。



さらにフィールディングがまだ素人のそれで、守備範囲は狭い。



だからあえて、駒田に雨宮を狙うよう指示を出したんだよ。」




「それデ、雨宮サンはミスをしたんですネ?」



「そう。その可能性にかけたんだよ。」




勢い良く立ち上がる。





俺はお手製の木製バットを持ち、


「響子。」


「なに?高貴」


高貴はヘルメットをかぶり、












「必ず、お前のために勝つ。
だから、ちゃんと見てろよ!」


「…!」



出尽くした筈の涙が、
再び息を吹き返す。





「ボールフォア!」


3番の相沢にストレートのフォアボール。


「気前ええなぁ。」





《4番、サード玉原君》


「しゃあ、行くぜ!」











静寂を忘れたベンチ。


眼の前には
チームを変えてくれた、
最愛の幼馴染がバッターボックスに向かう。













涙はもう出尽くした。






けれど、また不死鳥のように
溢れかえってきてしまう。










「あり…がとう…高貴…!」












静寂を忘れたベンチで、響子は呟く。













聖川が、響子を優しく抱き締める。








響子は涙を振り払い、













「打てええ!!高貴いいいい!!!」












バッターボックスに立った幼馴染は
その叫びに応えるように、
















「おおおおおおおおおおおおお!!!」













剣を前に向け、天に叫ぶ。










孤独の龍と、英雄の虎。














互いの意地を胸に、










龍虎相打つ。

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