がーるずベースボール!

近衞

16話⚾︎流れを引き寄せろ!⚾︎

キャッチャーは捕球後、
すぐさまボールを2塁へと送る。







ランナーはスライディング、
ショートの選手はカバーに入る。








タッチプレーで砂埃が舞い上がり、
両者が判定を待つ。








「セーフ!」


判定はセーフ。盗塁成功。


初球スチールの成功にベンチが沸く。




そのベンチでは。



「やった!さすが高貴!」



「玉原君足も速いんやなぁ」



「聖川さん。何故玉原君はあれ程の走力があるのに外野手にならないのかしら?」



「本来、玉原のポジションはセンターだ。ピッチャーの心得もある。
だが我々の事情に合わせてサードを守っているのだ。」



「じゃあチームの事情に合わせて
ポジションを変えられるの?」



「ああ。彼はこと野球になると恐ろしい才能を発揮する。」



「なるほど。合点がいったわ。
取り敢えずすごいということは分かるわね。」



「そうだな。そんなすごい人が我々の監督なんだ。」









「何やら聞こえるが…まあいいか。」


初級スチールを伝えていなかったから、
井上が驚いてるけど…



まあ、実際揺さぶるから、としか
言ってないしな…



井上が申し訳なさそうに
こっちを見ているので、

気にするな、とジェスチャーを送る。



気を取り直して
ノーボールワンストライク。



2球目は真ん中高めに井上は空振り。





得点圏にランナーが来た為か、
雨宮の球威は上がっている。





「さすがに球速えな…」


こっちもわざとリードを広めにとってるが、反応すら無ぇな。



3球目のチェンジアップに空振り三振。







俺はその配球を読んで再び盗塁を決める。


3塁コーチャーに入った聖川とグータッチを交わして、


「ナイスランだ、こっ、玉原!」


こっ、玉原 (4回目)


タイムがかかり、
ブレイカーズの内野陣はマウンドへ。



「ああ…さて、ここからどうするか。」



「スクイズはどうだ?
1点勝負になるかもしれないぞ。」



「構わないが…相手の出方次第だな。」



「だが雨宮はクイックが早い。
正直スクイズは危険すぎるか…」



「…いや、スクイズだ。」



「やるのか!?」



「ああ。ピッチャーは雨宮だ。
得点はあまり期待できないだろ。」



「…自分で言っておいてなんだが、
危険すぎないか?」



「昨日の動画と、今日の雨宮を見れば…
いけるかもしれない。」



俺はこちらをうかがっていた船田に、
サインをさり気なく送る。



船田は右手でヘルメットのつばをつまみ、
俺のサインを了承する。



船田に初球に仕掛けることを伝えた。



危険な賭けになるが、
俺には成功への確信があった。



プレーが再開され、内野はポジションにつく。



…見事に全身守備。


だが俺は、雨宮が振りかぶった瞬間
ホームベースへと駆け出した。




船田はサイン通りバントの構え。






俺の動きを見て、ファーストとサードも
ホームへと駆け出した。









ファーストの動きを見た雨宮は、
咄嗟に真ん中高め目掛けて
投げ込んだ。




すると船田はバントの構えを解き、





キィィン!





バントとは思えない爽快な
音が球場にこだまする。



船田が行なったのはバントではなく
ヒッティング。



上から下にボールを
叩きつけるバッティング…



いや、大根切りと言うべきか。




俺は対雨宮用に、
船田にだけ伝えていたサインがある。




そう、【初球、大根切り】だ。



スクイズの可能性があれば、
当然キャッチャーがウエストを指示する
のもおかしくない。



それを叩く。



叩きつけられ地面から
高く跳ね上がったボールは
雨宮の頭上。


審判からフェアが宣告され、
俺はホームベースへスライディング。


雨宮がボールを掴む頃には、
俺はホームイン、船田はファーストへ
到達している、というわけなのだ。


会場からは歓声が上がる。


「やった!」


奇襲の成功に、船田は感嘆の声を上げる。


再び活躍を見せた船田に、
会場から拍手が送られた。



「は、ははは…なんか照れるな…」


「胸を張ってください、船田先輩。」


1塁コーチャーについている愛李華が
船田に声をかける。


「愛李華ちゃん…」


「船田先輩の努力の結果ですよ。
偶然なんかじゃありません。」


その言葉に船田は笑顔を見せ、


「…そうだね。ちょっとだけ胸を張ってみようかな。」


《7番、センター八幡さん》


「しゃああこいやああ!」


威勢が良い八幡だったが、
外角低めのチェンジアップを引っ掛け
初球併殺打でスリーアウト。


「くっそ!」


「良いあたりだったんだけどなぁ…」


俺はグローブを手に、


「切り替えろ、八幡。この回抑えるぞ!」


「「「おおおーー!」」」






「…やられた。」


ベンチでひとりごちる。


「大丈夫…切り替えよう?雨宮君。」


「ああ…」


「去年一回戦負けのチームをここまで
押し上げた選手兼任監督なだけあるね…」


「でも、大丈夫だよ!お兄ちゃん!」


秋がバットを片手に、


「私達が支えるから!」


《5番、サード雨宮秋さん》


「私も支えるからね!お兄ちゃん!」


「秋…千夏…」


…馬鹿だ…俺は。


「…ああ。よろしく頼む。」


いつの間にか、
妹達も強くなっていたんだな。


俺は少し笑みを浮かべる。


「雨宮君…?」


「いや…」













「負ける気がしないよ。」


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