がーるずベースボール!

近衞

15話⚾︎攻勢⚾︎

あの騒動のあと、
よく自宅に矢澤が来るようになった。



「雨宮君!野球やろうよ!」



「今日も来たのか。粗茶だ、よければ」



「ご丁寧にありがとう!」



これを4日程続け、妹達の
誘いもありブレイカーズに入団した。



ブレイカーズのエース投手だった矢澤に
色々と教わり、1ヶ月でチームのエース
ナンバーを背負った。



矢澤はショートに入るようになった。



働きながらだから
ブレイカーズのメンバーとあまり
顔を合わせられないが、


野球を始めてからは
毎日が充実していたのだ。



そして、ランク戦の存在を知った。



好きな野球で金を稼ぐことができれば、
妹達を大学に行かせてやれる。



だから俺はとことん自分に厳しく練習を重ねた。



チームメイトとはまだまだ
溶け込めていないが、

必死に頑張れば認めてもらえるかもしれない。



そう思えば、妹達の為ならば
いくらでも頑張れるのだから。












「妹達を大学に行かせる為に、負けるわけには行かない…」



と、決意を表して左打席に立つ。




「響子!落ち着いて投げろ!」



響子は垂れる汗を拭う。



内野、外野のチームメイトから
励ましの言葉が飛ぶ。



響子は聖川が構えるミットへと
投げ込んでいく。



外角低めへストレートが決まり、
ワンストライク。





スピードガン表示には131kmの数字。





2球目、聖川は再び外角に構えた。





3塁への牽制を一球はさみ、





高貴から返球を受けた響子は
ボールを握り変える。


ツーシーム。


高貴から教えてもらった新球だ。


右斜め下に大きく落ちる。
さすがにこのボールなら
左バッターの雨宮でも当たらないだろう。





そう自分に暗示をかけ、
聖川のミットへと投げ込んだ。






途中までストレートと同じ軌道で
進んでいく。






だが急速にブレーキがかかり、
ボールは意思を持ったかのように
外角へと逃げていく。




キン!




少し弱めの甲高い音が鳴り響き、
ボールはライトへと飛球する。






新球のコースは完璧だ。
外角低めに上手く投げ込んだが、

腕を目一杯伸ばして強引にライトへと運ばれた。







ライトの船田はバックホームの体制に入る。









それを見て、サードランナーもタッチアップ体制へ。










船田は捕球。

すぐさまボールを内野へと返す。












タッチアップでホームへ向かうランナーとの競争になった。







聖川は外野からのボールを掴み、
素早くランナーにタッチを行う。








ここまでの流れが数秒にして行われた。






沈黙が、審判のコールを待つ。



「アウト!スリーアウト、チェンジ!!」



一瞬の出来事に、スタンドの観客は歓声を上げる。



そして拍手へと変わった。



それは失点を防いだ船田に向けられており、照れているのかその顔は少し赤い。



チーム1の強肩をもつ船田が、
その自慢の肩でチームの危機を救い出した。



「船田サン、ナイスなスローイングでス!」



「やるじゃねえか!船田ァ!」



船田がチームメイトからの手厚い
労いを受けるが、

高貴はそれを背にバットを振る。








《2回の表。ソニックがーるずの攻撃は…
4番、サード玉原君》



いつものルーティンをこなし、
右バッターボックスに入る。



「あ?高貴右打ちだっけか?」



「いや、玉原は
左右両方で打てるぞ。八幡。」



「ほーん、なるほどねえ。」



遂にこの時が来た。


聖川が持って帰ってきた情報。



まず調子がいい。
ストレートは大分走っている。



それは素人でも分かるが、
見たかったのはそれ以外の点だ。



聖川は一球目、内角高めを見逃した。
判定はボール。



その後雨宮はセットポジションから
本来のノーワインドアップに切り替えている。



そこから、球威も上がりコントロールも
精密になり始めた。



「ストライクワン!」



鉄球が高いところから落ちてきた、
というような威力のボール。







スピードガンは144km。
スタンドがどよめいている。





内角低めギリギリに決めてきた。







受けるキャッチャーも痛そうだ。


そして5球目のカットボール。


ど真ん中に投げ込まれ、
それを打ったら詰まらされた。


2球目、3球目を見逃してボール。


2球とも内角高めのカットボールだった。








ここまで見る限り
昨日の動画も足して考えると、

クイックは早いが練度が低く、

どうやら変化球の制球力は高くないようだ。


真ん中に投げて打たせて取るくらいにしか
まだ洗練されていない。



4球目のチェンジアップも外角低めに外れてスリーボール。


「さて、どう出る?」


すると、ショートの矢澤が何やら
雨宮に指示を出す。


そして、5球目を投げ込む。








「ボール!フォアボール!」


下手に勝負せず歩かせたか。



俺は少し拍子抜けしたように
1塁へと向かった。














《5番、ファースト井上さん》



雨宮はクイックモーションに切り替える。



1塁から、俺は様子を伺う。









瞬間___





「セーフ!」






滑らか過ぎて牽制に見えなかった…!


ここまで完封で来ただけあって
牽制は巧みのようだ。



だが___







「!」


雨宮が視界の端で捉える。







「ランナー走った!」









俺は2塁に向かって一目散に走っていた。










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