がーるずベースボール!

近衞

11話⚾︎決戦前⚾︎

 いつも通り、俺は朝起きて
野菜を収穫して支度する。



最早何年やって来たかわからない程の
洗練された動きをこなす。



今日は土曜日だから、朝から練習だ。



「すいませ〜ん」


客か?


俺はプレハブのドアを上け、


「はーい」


「おはようございます!高貴さんっ!」


「…は?」



目の前には、コミックスのエース
樹原愛李華が開花した花のような
笑顔を見せていた。


…私服だろうか。



少し短い桃色のスカートを靡かせ、
白のシルクのブラウスに緑のパーカー。
栗色の髪に赤いヘアピンをしている。



後ろには響子、聖川と八幡がいて、
こちらを注意深くうかがっていた。



「おはよう。なんで俺の家知ってんの?」


「とあるルートで。 ︎」


と、何かの鍵まで見せて来た。


「…その鍵は?」


「鍵、作りました。」


「俺にプライバシーは無えのか!?」


「冗談ですよ。さ、デートしましょう!」


「はあ!?」



右腕に抱きつかれ、柔らかい感触が…



「ま、待てえーー!」


響子が俺の左腕に抱きついて、




「貴様、言っていた事と違うではないかー!!」


聖川が愛李華を引き剥がし、




「てめえ!舐めた真似してっと
ぶっ殺すぞこのアマああ!!」


八幡が鬼の形相で脅しにかかる。


左側にいた響子は腕を離していた。




愛李華は涙目で
ごめんなさいと言いながら
腰をおり続ける。



やめてあげて。
白いのがチラチラ見えてるから。



「なあ、響子はともかく、お前らどうしてここにいんの?」



目の前にいる聖川に問い、


「…ああ。実は樹原がな。」


と、樹原を見る。
もう泣く寸前じゃないか。


「絵里、もうその辺りにしてあげて。」


「ケッ!」



唾を吐くオヤジか、八幡。


「樹原が決勝で当たるチームの動画を
皆に見せたいらしくてな。」


「…何?」


確かに、決勝で当たる「ブレイカー」は
本当に情報が掴めない。



MAX146キロを投げる本格左腕がエース
という情報を掴めてはいるが、
実際に見てみないことにはやはり
難しいところがある。



「そうです!高貴さんの為に、私が持って来てあげたんですよ ︎」


とウインクをしてみせた。



それに対して八幡が睨みを利かせる。



シワになるぞ、シワに。



「じゃ、携帯で今から見ましょう!
皆さんは外で「おい」



ドスを利かせた八幡の声が
太鼓のように響く。



「以前の件は許したけどよ、独断専行を許した覚えは無えぞ」



あなたヤンキーかよ。



約150年前の日本であった言葉だが。
ちなみにこの世界では死語である。



「玉原は支度をして出て来てくれ。
我々はここで待っている。」


「…ああ。了解。」



俺はプレハブへと引っ込む。


うちのチームは美女揃いだから、
毎日ドギマギさせられるが…


今日は朝から本当にキツい…
















河川敷のベンチに移動した俺たちは、
チームメイトと合流し、
愛李華の端末で動画を確認する。



正直チーム自体は最速146キロの
エース左腕の雨宮大地のワンマンチームだが…



「この雨宮選手は勢いのあるストレートの他に、チェンジアップも操ります。」



プレハブでの一件とは打って変わって、
真剣な眼差しで解説してくれる。



ところで何でこの子はウチのユニフォームを着てるんだ?



「チェンジアップってなんや?」


「スローボールみたいなやつだよ。」


「厳密には違います。チェンジアップは深く沈みますから。」



さすが3つの変化球を操る軟投派、
変化球の知識は充分だな。



「ねえ、ストレートがこんなに速いなら、なんで変化球おぼえてるの?」


と響子は高貴に問う。



「なんでそう考えた?」


「動画を見たら、バッターが
ストレートについていけてなかったから」


「まあ、ストレートは確かに速いが、
ストレートだけじゃいつか打たれるからな。」


「多分…チェンジアップとストレート…で…緩急を…つけてる…と思います。」



「井上、正解だ。チェンジアップは
相手のタイミングを外す球。
おかげでストレートが活かされてる。」


「響子はストレートとスローボールでメリハリをつけて投げるから、この井上君はその上位互換、というわけね。」



「なるほど…緩急ね。
湯浅さんのストレートがそれで速く見えてるわけだから、更に速く見えるかも…」



「その通りです船田先輩。
それを見越して高貴さんは練習メニューを組んだみたいですけど…」



そう。
最速146キロ左腕の情報を聞きつけた俺は、打撃練習を重点的に行ってきた。


で、何で君がそれを知ってんの?



「よく考えてくれているのですネ〜
嬉しいでス!」


「ああ。まあな。」


「と、まあこんな形で…
解説は以上になります。」


「…よし!」


俺は勢いよく立ち上がる。


それは皆も同じだった。


「早速練習だ。明日の試合で、
俺たちはB級へと勝ち上がる!」


「必ず勝とう!みんな!」


「「「おおおーーー!!!」」」





この日も、俺達は変わらず
白球を追っていた。



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