がーるずベースボール!

近衞

9話⚾︎樹原愛李華⚾︎

「お姉ちゃん、大丈夫?」



栗色のショートヘアを揺らし、
少し息をあげながら問いかける。



「ゴホッゴホッ…大…丈夫…だよ。」



問いかけるのは、妹の愛李華。
苦しむのは姉の芽衣。



体はあまり強くないものの、
妹同様の栗色の長い髪を下ろした
才色兼備な少女である。



だが、その芽衣は少し窶れ
目元には隈がくっきりと浮かぶ。



咳き込んで眠れない毎日を過ごしているのだろうか、と愛李華は感じ取った。



2人がいるのは日本東部地区総合病院。



日本国は東西南北の地区に分けられ、
各地区にこういった病院が2つ以上
設置されている。



愛李華の姉、芽衣はソニックがーるずで
ライトを守る選手だ。



少しでも体を強くしようと
野球を始めてみたものの、



病気がちで試合に出場できない事が
多々あり、その都度助っ人を頼んでいる。



彼女は肺の病気を患っており、
普段から薬を服用していた。



そして今回、発作が酷くなり
この病院に運び込まれたのだ。



「あー…またやっちゃったなぁ…」


「何が?」


「試合…また病欠しちゃった。」


「…パシリの人が助っ人に入ったらしいよ。」


「高貴君が?で、結果は?」


「知らなぁい」


「で、結果は?」


むむむ、と愛李華は口を結んで、

「…17対2。」


「すごい!こんなに点数とったの初めてじゃない?」


「お姉ちゃん、落ち着いて。」


「ああ、ごめん。」


興奮して咳き込まれでもしたら
どうしようもない。


「そっか…高貴君が…」


ポー…とほんのりと顔を赤らめ、
桃色な雰囲気を纏う。








「お姉ちゃん」


「ひゃ、ひゃいっ、なんでしか?」


「日本語おかしいよお姉ちゃん…」


愛李華は溜息をついて、


「そんなにあのパシリの人がいいの?」


「あ、愛李華?」


「あのパシリの人がそんなに好きなの?」


「あああ愛李華、何言って…」


「あんな金で女の尻に敷かれる男の」


「愛李華!!」


愛李華は驚きのあまり目を見開く。


目の前には、さっきまでとは
打って変わり凛々しい表情をした
芽衣が愛李華を真っ直ぐに見据えていた。


「…ごめんなさい。」


「愛李華、男の人をあまり信用できないのは知ってるけど、知らない人を悪く言うのはやめなさい。」


「…うん。」


才色兼備で優秀な芽衣とは違い、
愛李華は容姿に問題はないものの、
特別優秀ではなかった。



彼女は姉と比べられることが多くなり、
それが原因で姉と不仲になった事もある。



芽衣は優秀で、努力を欠かさない。
愛李華もその姿を見て努力を重ねた。



だが優秀な姉には敵わず、
姉の同級生の男子達にいじめられることが
多くなり、それ以来男嫌いに拍車がかかっているのだ。



だが、そのいじめを辞めさせたのも、
姉の同級生の別の男子であるのだが。



「みんなを信用しろとは言わないよ。けど」


「ちゃんと人柄を、でしょ?」


「分かってるんだね。」


「私もそこまで子供じゃないよ。」


愛李華は立ち上がって、


「早く治しなよ。じゃないと、
お姉ちゃんのお気に入りを私が食べちゃうかもよ?」


と言い残して踵を返す。


「あっ、ああああ、ああいかああ!?」


姉の悲鳴を背に、してやったりという
表情を浮かべる愛李華だった。




















9回、ツーアウト1塁。




ランナーは唯一無二の親友。




バッターボックスには樹原愛李華。




カウントはノーボールワンストライク。





愛李華は、少し前のことを思い出していた。






優しい姉との邂逅。






その姉が想いを寄せる相手がどんな人か
知りたかった。


ただのパシリの人じゃない。


弱小だったチームを率いて、
ここまでやってきた。






その背景には、チームメイトを纏める
何かがあるのだろう。





キィィン…



白球は真っ直ぐに飛んでいく。



だが、その打球に力は無く…



乾いた音を響かせ、八幡が右手でボールを掴んだ。



「アウト!ゲームセット!」


瞬間、愛李華の眼には涙が溢れた。


だが、愛李華は俯くこと無く
ホームベース前に並ぶ。


「礼!」


「「「ありがとうございました!」」」






両軍がベンチに引き下がる。


「…お姉ちゃんが好きになった理由、
なんか分かる気がするよ。」


その呟きは誰にも聞こえること無く、
静かに幕を降ろした。














第14回C級ランク戦 準決勝
ソニックがーるずvsコミックス

勝利投手:湯浅響子 敗戦投手:樹原愛李華
本塁打 2回玉原 

4-0でソニックがーるずが勝利。

ソニックがーるず、決勝進出。

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