元魔王の人間無双

月田優魔

開幕

今日から魔法競技会が始まる。
オレとセレスは出場しないので、観戦に来ていた。

「楽しみだな、セレス」

なんとなくセレスに話を振ってみる。

「・・・そうだね」

「どうしたんだ、元気がないみたいだけど?」

表情が暗く覇気がなかったので少し気になって聞いてみた。

「先日、母が体調を崩してね。少し気になっていたんだ」

「それは大変だな。セレスはここにいて大丈夫なのか?」

オレは家に帰ったほうがいいのではないかと促した。

「それは大丈夫だよ。母のことはその、病院の人に任せてきたから」

「そうか、なら大丈夫だろう。オレたちが心配していても仕方がない。気になれば転移魔法テレポートで病院に行けばいいし、今はあいつらを応援してやろう」

「うん、そうだね」

セレスは気がかりが吹っ切れたようで元気に返事をした。





「ーーーーー日々の鍛錬の成果を十分に発揮し、国王様のお目に恥じぬことを期待する」

長ったらしい魔法協会理事の開幕の挨拶が終わり、ついに魔法競技会が始まった。
魔法競技会は三日に分けて行われる。
一日目と三日目が本戦で二日目が新人戦、今日は本戦なので主に三年生が出場している。
優勝候補筆頭はウチのディアフォード魔法学園、そして次がアムステラス魔法学園。
シュート・ブレイクはウチが優勝したが、パワー・ブレイクはアムステラス魔法学園が優勝した。
見応えのある接戦が繰り広げられている。
次の競技はゴーレム・ブレイク。大会委員の作ったゴーレムを制限時間以内に何体破壊できるか競う競技。
出場選手を見ると、見知った顔があった。

ーーーーーレイラだ。

生徒会役員でオレに手を出そうとした女。

「どうしたのガゼル?顔が怖いけど?」

横からセレスに声をかけられる。どうやら顔に出ていたようだ。

「いや、なんでもない」

言ってる間に競技が始まる。
レイラはゴーレム達を弓矢で破壊していく。

ーーーーーが、競技が始まると大会委員達が騒ぎ出した。

よく見れば、ゴーレム達がレイラに反撃している。
ゴーレム・ブレイクはかわし続けるゴーレムを破壊する競技であって、ゴーレムは反撃しないとパンフレットに書いてあった。
なのに、今は反撃している。
具現魔法で具現化して操作魔法で操っているんだろうが、操作できていない。
どうやら、ゴーレム達が大会委員の手を離れ、勝手に反撃しているようだ。
レイラは訳がわからないまま、必死にかわし続けているが、数が多い。
ゴーレムは百体近くいるのに、いつまでもかわし続けられるはずがない。

「っ!?」

大会委員が助ける暇もなく、レイラはゴーレム達にリンチにされた。

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