読書部の日常〜ポンコツ系美少女な部長とただ駄弁るだけの不毛なる学園生活〜

ジェロニモ

クラス異世界召喚物に備えて鞄に入れる物について(実践編)合宿四日目 ②

 数分後、僕はタオルによって視界は塞がれ、木のツルで手足をガチガチに縛られて砂の上に転がされていた。


「この状態、精神的に割ときついんで早めに戻ってきて解いてくれるとありがたいです。」


「へーへー任せときなさい。パパッと終わらせてくるわよ。大丈夫大丈夫。私お風呂とかめちゃくちゃ早上がりなタイプだから。」


 部長の返事と共に、二人分の足音が遠ざかっていく。
 この状態だと視界が塞がっているので、隅田さんとの意思疎通が出来ないということに今気がついた。


 とりあえず「いってらっしゃーい」と声をかけると、部長の「いってきまーす」という適当な感じの返事が返ってきた。


 そして45分後。


 早上がりとは一体どういった概念なのだろうと考察し出した頃、僕は戻ってきた二人によって無事解放された。


「やっぱ海水で髪を洗うと髪質がギッシギシになるわね。シャンプーでもあれば話は違ったのかしら。」


『太陽で水分が蒸発すれば髪で塩が生成出来そうですね。』


 二人ともまるで湯上りのように濡れた髪をタオルで包んでガシガシと雑に水分を拭き取っていた。


 後ろに回りこむと、時折髪がかきあげられる際にチラチラこんにちわーするうなじが堪能できる。
 しっとりと髪が濡れていることもあって、うなじが通常の倍はエロい。
 覗きなんてしなくてもこれだけで十分である。何せリターンしかない。


「そういえば昨日海水を蒸留したあと、鍋に残ってた海水をそのまま加熱しまくってたら白い結晶ができてましたよ。多分塩だと思いますけど。」


  鍋にこびりついていた。うわー。洗剤もお湯もないから洗うのめんどいなぁと思ったのを覚えている。


「デフォルトで海水の塩で魚が味付けされてるって点で見れば、海沿いって割と優れた立地よね。」


『サバイバルって川とか水源の近くじゃないと成り立たないって言いますよね。私たちも昨日それを痛感しましたね。』


「ええ、そうね……。」


「そうだね。」


 隅田さんの文面によって昨日の嫌な記憶が蘇った。海沿いでこの様なのだから、異世界転移、初手砂漠なんてことになったら2週間と持たずに死ねる。


 むしろ同じ景色ばかりで、方向感覚の狂う森の中に飛ばされたって軽ーく死ねそうだ。
 水源までたどり着けそうにないし。植物から水を摂取する方法はあるらしいけれど、どうせ昨日の海水の蒸留なようにアホみたいに非効率なんだろうなぁと予想がつく。


 異世界にて人里外れた場所でスローライフなんて出来そうにないですよ部長。無理です。絵描いた理想は遠かった。


「あのー。二人が匂いを気にするから、僕もちょっと気になっちゃってさ、僕も水浴びさせてもらって良いかな。」


 サッパリした様子の彼女たちをみると、僕もベタつく汗なんかを全部綺麗に流したくなるのだ。


「え、今度は私たちが縛られる番ってこと?」


「別に良いですよ。男を覗くとか意味わかんないですし。むしろ全裸を見られたら、見られた僕の方が加害者で、見てしまったふたりの方が目を汚された被害者みたいな感じになるじゃないですか。なので二人のお目を汚さないためにも、できれば海の方は見ないようにしてくれるとありがたいですけど。」


「ま、そうよね。それこそ後輩君の裸になんて価値がないっていうか、むしろ害悪でしかないものね。」


 部長達は海に背を向けて座り込んだ。


 僕は水を汲んだり顔を洗ったりするところから遠目の場所にくると、部長曰く害悪でしかない姿になった。


 つまりすっぽんぽん。持ってきたタオルが申し訳程度に局部を隠している。


 そのまま海に下半身が埋まるくらいの水深の所へスイスイと水をかけ分けていき、パシャパシャと身体の汚れを落としていく。


 あー。なんとう言う爽快感。我らが生物の母である海によって身を心も洗われるようだ。


 自意識過剰に思いながらもストレッチの動作に隠れて部長達の方を確認する。


 すると、身体の向きが完全にこっちを向いていた。
 おまけに部長の顔のあたりではピカピカと何かが光を反射した光っていた。


 ガラスなのか鏡なのか。光を反射して、顔のあたりで使うもの。いわゆる望遠鏡というやつではなかろうか。


 もしそうだとしたら僕のヌードが覗かれてるのではないか。
 いやしかし害悪扱いした僕の裸を双眼鏡を使ってまで見ようとするのはおかしいので気のせいだろう。というか気のせいだと思いたい。覗かれるとかなんか怖いし。
 もし機会があったら部長がいない時、隅田さんにそれとなく確認しておこう。


もう一度体を捻るフリをして後方を確認すると、今度は反射する光が隅田さんの顔へと移動していた。僕は光なんて見なかったことにした。



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