にくきゅう印のパン屋さん

ほたる

パン屋の店番

熟成させていたパンを棚に並べてレジに硬貨を入れるとスピカは、
店先の看板をcloseからopenに変えた。


暫くカウンターの中の椅子に座ってお客さんを待っていると、
来客を知らせるベルが鳴りの仕入れ屋の息子タウが入って来た。


『スピカ、おはよう!』


「おはよう。…今日配達日じゃないよ?」


『品物を受け取りに来るだけとは限らないだろう?今日は店番を手伝いに来たんだよ。
昼からはドゥベも来てくれるってさ。』


「えっ?手伝いに来てくれたの??家の仕事は大丈夫なの?」


『おう!親父が手伝いに行けって言ってくれたから大丈夫だ!
…それに俺が足怪我してた時に配達をしてくれた借りがあるからな。』


「ありがとう!助かるよ。」


『何からすればいい?』


「レジ打ち任せてもいい?…僕はカーフ父さんの看病もしたくてさ。」


『分かった!レジは任せとけ!…おやっさんの具合まだ良くならないのか?』


「…うん、今朝は野菜スープを少し口にしてくれたんだけど。グッタリしたままなんだ。」


『そうか…。早く良くなるといいな。』



タウは僕と同い年の友人で、
タウの家は代々食材の輸入輸出をする仕事を請け負っていて、
他国に売るパンを買い付けに来てくれる。


他国に向けて商売をする者からは、
«仲介者ちゅうかいしゃ»とも言われている


王都以外にも出向いては買い付けしている。



タウと2人で店番をしていると、
来客を知らせるベルが鳴りお客さんが入って来た。




冒険者の服を着ている無精髭の男の人が、
堅パンを2つ買って行った。




また来客を知らせるベルが鳴り、
薬草屋のクレアおばさんがやって来た。


『おはよう、スピカ。おや?タウも居るじゃないか。』


「クレアおばさん、おはようございます。
後からドゥベも手伝いに来てくれるみたいなんです。
いつものバケットでいいですか?」


紙袋にバケットを詰め手渡すと、
タウが手早く会計をしてくてた。


『えぇ。ありがとう。
カーフさんの具合はどうなの?
プレディー医師せんせいから頼まれたお薬を処方しているのだけれど…。
プレディー医師せんせいも不調の原因が何なのかはっきりしないって、
とりあえず解熱鎮痛剤げねつちんつうざいを服用して様子を見るって仰ってたから。』


「クレアさんが煎じて下さった薬のお陰で熱は微熱程度です。
薬を飲む前の9度前後の時よりかは楽そうですけど。
今朝カーフ父さんは、なかなか倦怠感が抜けないって言ってました…。」


『そうなのね…。
原因が分かればそれに見合ったお薬を処方できるのだけれど…。
ありがとう。また来るわね?』



バケットを抱えて難しい顔をしたまま帰って行ったクレアさん。







コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品