にくきゅう印のパン屋さん

ほたる

カーフ父さんの看病

市場から戻って来たスピカは真っ先に寝室を覗きに行った。

2つ並ぶベットの1つに眠るカーフは、
寝苦しいのか顔を歪めたり時をり身動ぎしていた。

心配そうにカーフを見つめていたスピカは、
額のタオルを冷たいものと交換しそっと部屋を後にした。


先程買って来た赤い皮で覆われたリンゴを剥いて1口サイズに切り分け、
焜炉こんろに火をつけ野菜スープを温め直した。


「カーフ父さん、ちょっとは食べてくれるかな…?」


カーフは、一昨日から食欲がないようで
あまり食べ物を口にしなくなってしまった。

微熱程度の熱が上がる事も下がる事もなく続きカーフの体力を削っていた。


朝食を持って寝室に行くと、
カーフは起きてベットに座り窓の外を眺めていた。


「カーフ父さん!…熱は下がった?」

食事をテーブルに置き慌てて傍によると体温計を渡した。



まだ体がだるいようでゆっくりとした動作。

脇に挟んだ体温計には微熱が表示されていた。。


「まだ微熱があるね…。痛い所とかある?」


『すまんな、スピカ心配かけて…。
なかなか倦怠感が抜けないんだよ……はぁ…。』


「…食欲はある?野菜スープを作って来たよ。」


『ありがとう。貰うよ…。』


「食べ終わったら寝ててね?後で食器を下げに来るから。」


『分かった。……1人で店番させて悪いなぁ。すぐ良くなるから…。』


「無理しないでいいよ。店番は任せて!」





スピカは1階の工房兼店舗に行くと
商品を棚に並べて開店準備を始めた。


このお店は、カーフ父さんの曾祖父さんの代からある。


パン屋と言っても種類は少なく3種類しかない。

1つは、バケットと言う長くて乾燥したパン。

もう1つは、ブールと言う丸くて上が十字状に割れてるこれまた乾燥したパン。

それから堅パンと言う歯が折れちゃいそうなほど硬いパン。


堅パンの多くは、冒険者が保存食として持ち歩くために買って行く。

バケットとブールは街の人たちが主食として買って行く事が多い。


ここシリウス王国の主食の多くは豆や芋類だ。

小麦は少し値が張るためあまり手にしにくい食べ物でもある。


カーフ父さんのパン屋は、
その小麦粉をパンに加工して経営ギリギリの値段で販売しているため
街の人でも気軽に買いに来てくれている。



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