これがあたしの王道ファンタジー! 〜愛と勇気と装備変更と〜
前略、少女と勇気と必殺技と!
「ああぁぁぁああああっっーー!!!」
強い!早い!重い!今までの猿達とは全然違うボスの力に絶叫。まさに叫ぶしかない。
ボスの身体はゴムのようでゴムではない、刃物は通してくれない。けど
「叩けば通るし、殴れば伝わる。」
すでに手札は使い切った、手持ちの武器もなにもかも、今のあたしでは勝てない、今のあたしなら、いやさっきまでのあたしなら!
「そんじゃいっちょいきますかー!必殺技!」
ぶっつけ本番、それでも!
「こいつの速さは折り紙付きだよ!」
なにせ2度もぶっ飛んだんだ、誰よりもわかってる。
距離をとる、もちろんこちらの攻撃は届かない、そのかわり、ボスの手足も届かない距離!
踏み込む。
1歩、2歩ーーまだちょっと
3歩、4歩ーーもうちょっと
5歩ーー
「ここで!」
装備変更、片手剣から大剣へ、いつものブーツから両足の相棒へ、自分からぶっ飛ぶのは初めてだった。
踏み込む、飛ぶ、世界が加速する。
少しだけ飛びすぎたかな?でも多少上でも問題ない。それくらい速い!
「おしまい!!」
加速の終わりにあたしの大剣はボスに食い込み、大きく身体を引き伸ばしていた。……引き伸ばしていた?
伸びるってことはつまり………
「ウキキ」
言葉は通じてるのか通じてないのかわからないけど。『勝ったな』ボスの表情からそんな言葉が伝わってきた。ふん、負けたな
「ふんぎゃぁーーー!!!」
自分でも出したことのない悲鳴とともに後ろに吹き飛ぶ。当然ボロボロだ。
「痛いとかより……」
情けない……いや、もちろん全身痛いんけど。あたしは何度こんなステキな体験をしなくてはならないのか。
そろそろヤバいかも、見ればさっきまでボスとの一騎打ちを見守っていた猿達があたしを取り囲んでいた。もう決着はついたと言わんばかりに。
諦らめようか……
ここであたしが諦めてもこの村の問題は時間が解決してくれるだろう。猿達の絶滅をもって。
「それはちょっと違うよね。」
バカな考えを振り払う。諦める選択肢だけはない。たとえ死んでも。
まぁその前にあたしが絶滅させられそう。嫌だなぁ、あと1回は死んでも大丈夫だろうけど、それでも嫌だ。きっと痛いし辛いし。
覚悟をきめ、目を閉じる。殺すなら優しく殺してほしい。
ボン!と大きな音が響く……なんだか辛い匂い?唐辛子みたいな。
待っていても訪れない痛みに目を開く。あたしの周りには薄っすらと赤い煙が漂っていた。
どうやら猿達はこの匂いが駄目みたい。助けてくれた誰かを探す。それはすぐに見つかった。今日の朝泣いていた少女が、勇気をあげると約束した少女が、そこに立っていた。きっとあたしのために息を切らせて。
「ハァ……ハァ……セツナ…お姉さん……」
「ハハ!どうしたのノノちゃん、初めてあったときのあたしみたいだよ?」
できる限り明るく返す。傷だらけであまリ見られたくない姿なので声だけでも、態度だけでも柔らかく。
「そこはどうでもいいよ!そんなにボロボロで!」
「ごめんごめん、カッコ悪いよね、ダサすぎる。」
勇気をあげようって言ったのに、と続ける。
「そんなことないよ!勇気ももらったよ!弱いのに逃げなかったセツナお姉さんは1番カッコいいよ!」
ちょっとだけ傷ついたけど。カッコいいか……悪くない。
「うん、なら頑張らないとね」
ポーチから薬草を取り出す。塗らずにそのまま口に放り込む。モシャモシャ。苦い、でも効いてる気がする。気休めでも気付けのために。
「それにしてもいいタイミングできたね、ノノちゃん」
「実は今からあたしの必殺技でカッコよくボスを倒すところだったんだ、だから……そこで見ててくれる?」
虚勢じゃない。だってあたしも勇気をもらった。
嘘じゃない。だって今から嘘じゃなくなる。
「うん!!」
イベント中に襲わないなんて話しがわかる猿じゃないか。やっぱりわかりあえそう。
まぁでもそれは勝ってからだね。
「そんじゃいっちょいきますかー!」
距離をとる、最初と同じくらいの距離を。
1歩、2歩ーーまだちょっと
3歩、4歩ーーもうちょっと!
5歩!!心のなかで右手と両足の相棒に語りかける。いけるでしょ!!
踏み込む、飛ぶ、世界が加速する。そこからもう1歩!!
今までの無駄にしてたその1歩、それを加速のなかで踏み出す。世界はもう1段加速する。後はあたしの時間だ。
主人公に必殺技はつきものでしょ?名前はもうある。
あとは叫ぶだけ!!
「セツナドライブ!!」
瞬間ーー片手剣がボスの腹部に大きくめり込む、まだ加速は止まっていない。あとは!全力で!
「ぶっ飛ばーすっ!!」
気合と根性と愛や勇気、その他もろもろ含めて振り抜く!
轟音と共にボスは猿山へ吹き飛び。戦いは終わった。あたしの勝ちで。
「セツナお姉さん!」
ノノちゃんが駆け寄る。
「ええと……ええと……」
うまく言葉にできないみたい。ゆっくりでいいよ。ノノちゃんの言葉であたしをねぎらってほしい。
「セツナドライブはダサいと思うよ!」
フッと全身から力がぬける。これはあくまで戦いに疲れただけであり。ノノちゃんの発言は関係ない。
悲しくなんかない、傷ついてなんかない。
だからこの涙も関係ない。本当だよ?
「ノノちゃんは大分失礼だ……」
「セツナお姉さーん!!」
意識が落ちる直前、あたしは初めてあったときから思っていた言葉を零していた。
強い!早い!重い!今までの猿達とは全然違うボスの力に絶叫。まさに叫ぶしかない。
ボスの身体はゴムのようでゴムではない、刃物は通してくれない。けど
「叩けば通るし、殴れば伝わる。」
すでに手札は使い切った、手持ちの武器もなにもかも、今のあたしでは勝てない、今のあたしなら、いやさっきまでのあたしなら!
「そんじゃいっちょいきますかー!必殺技!」
ぶっつけ本番、それでも!
「こいつの速さは折り紙付きだよ!」
なにせ2度もぶっ飛んだんだ、誰よりもわかってる。
距離をとる、もちろんこちらの攻撃は届かない、そのかわり、ボスの手足も届かない距離!
踏み込む。
1歩、2歩ーーまだちょっと
3歩、4歩ーーもうちょっと
5歩ーー
「ここで!」
装備変更、片手剣から大剣へ、いつものブーツから両足の相棒へ、自分からぶっ飛ぶのは初めてだった。
踏み込む、飛ぶ、世界が加速する。
少しだけ飛びすぎたかな?でも多少上でも問題ない。それくらい速い!
「おしまい!!」
加速の終わりにあたしの大剣はボスに食い込み、大きく身体を引き伸ばしていた。……引き伸ばしていた?
伸びるってことはつまり………
「ウキキ」
言葉は通じてるのか通じてないのかわからないけど。『勝ったな』ボスの表情からそんな言葉が伝わってきた。ふん、負けたな
「ふんぎゃぁーーー!!!」
自分でも出したことのない悲鳴とともに後ろに吹き飛ぶ。当然ボロボロだ。
「痛いとかより……」
情けない……いや、もちろん全身痛いんけど。あたしは何度こんなステキな体験をしなくてはならないのか。
そろそろヤバいかも、見ればさっきまでボスとの一騎打ちを見守っていた猿達があたしを取り囲んでいた。もう決着はついたと言わんばかりに。
諦らめようか……
ここであたしが諦めてもこの村の問題は時間が解決してくれるだろう。猿達の絶滅をもって。
「それはちょっと違うよね。」
バカな考えを振り払う。諦める選択肢だけはない。たとえ死んでも。
まぁその前にあたしが絶滅させられそう。嫌だなぁ、あと1回は死んでも大丈夫だろうけど、それでも嫌だ。きっと痛いし辛いし。
覚悟をきめ、目を閉じる。殺すなら優しく殺してほしい。
ボン!と大きな音が響く……なんだか辛い匂い?唐辛子みたいな。
待っていても訪れない痛みに目を開く。あたしの周りには薄っすらと赤い煙が漂っていた。
どうやら猿達はこの匂いが駄目みたい。助けてくれた誰かを探す。それはすぐに見つかった。今日の朝泣いていた少女が、勇気をあげると約束した少女が、そこに立っていた。きっとあたしのために息を切らせて。
「ハァ……ハァ……セツナ…お姉さん……」
「ハハ!どうしたのノノちゃん、初めてあったときのあたしみたいだよ?」
できる限り明るく返す。傷だらけであまリ見られたくない姿なので声だけでも、態度だけでも柔らかく。
「そこはどうでもいいよ!そんなにボロボロで!」
「ごめんごめん、カッコ悪いよね、ダサすぎる。」
勇気をあげようって言ったのに、と続ける。
「そんなことないよ!勇気ももらったよ!弱いのに逃げなかったセツナお姉さんは1番カッコいいよ!」
ちょっとだけ傷ついたけど。カッコいいか……悪くない。
「うん、なら頑張らないとね」
ポーチから薬草を取り出す。塗らずにそのまま口に放り込む。モシャモシャ。苦い、でも効いてる気がする。気休めでも気付けのために。
「それにしてもいいタイミングできたね、ノノちゃん」
「実は今からあたしの必殺技でカッコよくボスを倒すところだったんだ、だから……そこで見ててくれる?」
虚勢じゃない。だってあたしも勇気をもらった。
嘘じゃない。だって今から嘘じゃなくなる。
「うん!!」
イベント中に襲わないなんて話しがわかる猿じゃないか。やっぱりわかりあえそう。
まぁでもそれは勝ってからだね。
「そんじゃいっちょいきますかー!」
距離をとる、最初と同じくらいの距離を。
1歩、2歩ーーまだちょっと
3歩、4歩ーーもうちょっと!
5歩!!心のなかで右手と両足の相棒に語りかける。いけるでしょ!!
踏み込む、飛ぶ、世界が加速する。そこからもう1歩!!
今までの無駄にしてたその1歩、それを加速のなかで踏み出す。世界はもう1段加速する。後はあたしの時間だ。
主人公に必殺技はつきものでしょ?名前はもうある。
あとは叫ぶだけ!!
「セツナドライブ!!」
瞬間ーー片手剣がボスの腹部に大きくめり込む、まだ加速は止まっていない。あとは!全力で!
「ぶっ飛ばーすっ!!」
気合と根性と愛や勇気、その他もろもろ含めて振り抜く!
轟音と共にボスは猿山へ吹き飛び。戦いは終わった。あたしの勝ちで。
「セツナお姉さん!」
ノノちゃんが駆け寄る。
「ええと……ええと……」
うまく言葉にできないみたい。ゆっくりでいいよ。ノノちゃんの言葉であたしをねぎらってほしい。
「セツナドライブはダサいと思うよ!」
フッと全身から力がぬける。これはあくまで戦いに疲れただけであり。ノノちゃんの発言は関係ない。
悲しくなんかない、傷ついてなんかない。
だからこの涙も関係ない。本当だよ?
「ノノちゃんは大分失礼だ……」
「セツナお姉さーん!!」
意識が落ちる直前、あたしは初めてあったときから思っていた言葉を零していた。
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