上京して一人暮らしを始めたら、毎日違う美少女が泊まりに来るようになった

さばりん

酔っ払い朝(優衣1泊目)

 ピピピピっというアラームの音が鳴った……ような気がした。
 俺は目を開ける。しかし、目の前が真っ暗だった。まだ夜中なのか?


 すると、ふにゃりとした柔らかい弾力のものが顔にぶつかった。その感触は、とても心地よくて落ち着くような温もりと柔らかさで、再び睡魔すいまに襲われる。だが、なんとか睡魔に負けずに粘って、顔を動かそうとする。しかし、何かに抑え込まれたような感覚があり、顔を動かすことが出来ない。


 俺は力を入れて何とか顔を動かした。すると、外からの明かりが視界に入り、目前の景色がようやく浮かびあがる。


 すると目の前には、紫色の布地のものにおおわれた肌色の柔らかい物体が二つあった。


 しばらくなんだろうとボケっと眺めていると、今後は嗅覚が冴え始め、甘酸っぱい匂いが鼻を刺激する。ぼおっとしていた頭が冴え、ようやく思考が動き始めて、目の前にあるものが何なのか、自分が今置かれている状況を把握した。


 俺は今、布団の中で優衣さんに頭を両腕で抑え込まれ、そのたわわな胸に、顔を埋めた状態になっている。そして何故か優衣さんは、ブラウスを身に着けておらず、紫のブラとパンツのみの状態で、俺の布団に侵入してきていた。


 状況を把握して、俺は朝から必死に力を振りしぼり、優衣さんの魔の手から逃れようと全力で顔を動すが、優衣さんが再び抱き寄せる力を強めたので、俺は顔はさらにその大きな膨らみの谷間の奥へと吸い寄せられてしまい、ふよよんと心地よい海へと浸ってしまう。


 ひとまず、目覚まし時計のアラームがうるさいので、何とか手を伸ばして目覚ましを止めようとする。何度かバシバシとくうを切りながらも、ようやく俺の手が目覚ましを掴むことに成功し、アラーム停止ボタンを押した。


 音が鳴り止むと、ムクっと優衣さんが身体を動かした。
 一瞬力がゆるんだのを見て、俺は今だとばかりに一気に力をいれて、優衣さんの魔の胸の谷間から脱出した。


 起き上がった俺の眼下に見えたのは、下着姿で俺の布団に潜り込み、あられもない優衣さんのあでやかな姿。健康的はつやのある肌をさらして、無防備な姿で吐息を立てている。


 そして、ふぅっと息を吐いて身体をモゾモゾと動かした優衣さんは、ようやく重いまぶたを開いた。


「お……おはようございます……」


 俺はおそるおそる声を掛けると、優衣さんは驚いたようにぱっと目を見開いて飛び起きた。


「え? 大地くん!? なんで! ってあれ? ここ大地君の部屋……?? あれ? 私なんで下着?!」


 優衣さんは状況が理解できず終始驚きながら、恥ずかしそうに手で胸元を隠す。どうやら、昨日のことは全く覚えていないらしい。


 俺は、優衣さんを落ち着かせるように昨日の状況を説明してあげる。


「そのぉ……優衣さんが昨日外の廊下で潰れちゃって、俺が気づいて介抱したんですけど、家の鍵が見当たらなかったので、仕方なく俺の部屋の布団で寝かせてあげたって感じです。下着なのは、暑いって言いながら優衣さんが自分で脱いでました」


 俺が昨日の出来事を嘘偽りなく簡潔に説明すると、優衣さんは昨日の出来事を思い出すかのように、額に人差し指を当てた。


「確か私、同僚の子たちとお酒飲んで……それで家に着いたと思って……はっ!」


 どうやら、優衣さんの記憶がよみがえったようだ。


「本当にごめんなさい!」


 優衣さんは、下着姿のまま地面に頭を付けて、見事なまでの土下座をかます。なんだろう……この逆の光景を、つい最近見たような気がするなと思いながらも、俺は優衣さんへ声をあげる。


「別に気にしないでください。酔いつぶれちゃうことなんて誰でもあることですし。あと、その……服を着てくれると助かります。そこに掛けてあるので」
「へ? あ、そ、そうだね! ごめんごめん。今着るから!」


 ドタバタと慌てて優衣さんは立ち上がり、ハンガーに掛けてあったスーツを身に着ける。
 俺は優衣さんが着替えている間、ずっと後ろを向いていたが、ふと声を掛けられた。


「その……私達、色々やらかしてないよね?」
「やらかしてないとは?」
「そのぉ、エッチなこととか……」
「大丈夫です。それはないですから」
「そ、そっか、よかった」


 まあ、俺にとってはご褒美みたいなマシュマロのような二つの枕は堪能させてもらいましたが……などとは口が裂けても言えなかった。


「着替え終わったから、こっち向いて平気だよ」


 俺は振り返ると、スーツ姿に身を纏った優衣さんが、少し頬を赤らめながら申し訳なさそうな表情をしていた。


「その……ごめんね、私大地君に迷惑ばかりかけっぱなしで。本当は直さなきゃって思ってるんだけどね。すぐに空回りして、また失敗して迷惑かけて」


 優衣さんは、今にも泣きだしそうな悲しい表情をしながらうつむいてしまう。俺はそんな優衣さんを見て、どこか放っておけないような感じがした。そして、頭をきながら口を開く。


「別に構いませんよ。全然迷惑とも思ってないですし。それに……そういうおっちょこちょいでちょっとポンコツなところも、優衣さんの魅力だと俺は思いますよ」


 俺が素直な気持ちを優衣さんに伝えると、優衣さんは少し驚いたような表情をしていたが、段々と顔が真っ赤に染まっていった。


 すると優衣さんは、突然何かを思い出したかのように、くるっと身体を回れ右させて、猛ダッシュで玄関の方へと向かって行き、靴を適当に履いてガバっと扉を開けた。


「じゃあ、私帰るから。ごめんね!」


 そう言って優衣さんは、嵐のように去っていってしまったが、


「ありがとう」


 と、小さな声で呟いた声が俺の耳に届いてきたような気がした。



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