上京して一人暮らしを始めたら、毎日違う美少女が泊まりに来るようになった
新入生歓迎会と先輩の名前
乾杯の音頭がとられた直後、俺は机にいたイケメンの先輩や他の新入生たちと乾杯をした。
周りを見ると、何人かの先輩たちは、立ち上がって隣の机まで乾杯をしに回っている。その波に任せるようにして、机を回ってくる先輩たちともグラスを交わす。
ようやくひと段落したところで、グラスに口を付けてウーロン茶飲んだ。ウーロン茶にしては、少し甘いような感じがした。
「ぱぁ、うめぇ!」
机の向かい側では、ビールを飲んで感嘆の声を上げるイケメンの先輩。
すると、思い出したようにテーブルのみなを見渡しながら口を開いた。
「あ、自己紹介まだだったね、俺は二年の冨澤慎吾っす。『慎吾さんって気軽に呼んでくれ』」
そう言って、軽い感じの自己紹介をした冨澤先輩は、グラスを持ちながら細身の先輩へ視線を移す。
「で、こっちがサークルの代表やってる。真面目こと長谷部でーす」
「誰が長谷部だ!」
細身の先輩は、冨澤先輩に向かって、またツッコミを入れる。
そして、気を取り直すように一つ咳ばらいをしてから口を開いた。
「えっと、サークルの代表者やってます。太田翔也です。よろしく」
口角を上げて作り笑いを浮かべてながら、太田先輩は俺たちに挨拶を交わした。
「よ、よろしくお願いします……」
俺たち新入生はその先輩たちの高いテンションについていけず、苦笑いを浮かべながら挨拶を返すことしか出来ない。
「何か質問したいこととかある?」
早速、冨澤先輩が俺たちを見渡して聞いてくる。
「はいはい!」
すると、俺の隣に座っていた爽やかな男子が手を挙げていた。
「お、はい、どうぞ」
「あ、えっと、一年文学部の橘っていいます。活動ってどのくらいあるんすか?」
「えっとね、基本活動日は金曜日の夜で、近くの中学校があるんだけど、そこのコートを借りて、いつも活動してる感じかな。年に一回、他のサッカーサークルとのリーグ戦やったりして、優勝したら本家のサッカー部との対戦権がもらえるんだよ」
「え? すごいっすねそれ」
「まあ、うちのサークルはそんなにガチじゃないから、優勝したことないんだけどね」
「なるほど、ありがとうございます」
「いいえー。他に質問ある方ー」
冨澤先輩尋ねると、また別のところから恐る恐る手が当たる。
「はい、どうぞ!」
「男女比はどれくらいですか?」
「それは、このおじさんの方が知ってるかな」
そう言って、冨澤先輩は太田先輩の方へ顔を向ける。太田先輩は、グラスに注がれていたビールを一口飲んでから話し始めた。
「だいたい比率で言うと男7の女3ってところかな、あっちの方に女性の先輩がいるけど、あんな感じでみんな仲良くワイワイとやってるよ」
太田先輩はそう言って、天使のような女性がいる方を向きながら説明してくれる。
「なるほど、ありがとうございます……」
質問をした新入生は、そこから女子部員の先輩の話に持っていきたかったのだろうが、太田先輩が相手ではこれ以上話を広げられないと判断したのか、そこで話を切り上げてしまった。
しばらくそこからは、テーブルにいる新入生の自己紹介をしたりとかして、場が進んでいく。
俺も少しずつだが、場の雰囲気に慣れてきた。
そこで、ふとあの女性と綾香がいるテーブルへと目をやる。
すると、やはりそのテーブルには多くの人だかりができており、その中心にいるのは女優井上綾香だった。中には、違うテーブルから話を聞きに来た先輩もちらほらいる。
そりゃそうだ、突然何の変哲もないサッカーサークルに、女優井上綾香が現れたんだ。そりゃ、誰もが興味を引かれるだろう。その輪の中で、天使のような女性も井上さんの話に興味深々と言った様子で、半身を乗り出して話を聞いていた。
そんな姿を、ただぼおっと眺めていると、横から声を掛けられた。
「あのテーブルが気になるのか?」
声の方を振り向くと、ビールジョッキをあおりながら、冨澤先輩が俺に聞いてきた。
「えっ、あっ……いや、そのぉ……」
「まあ、そりゃあんな美人な人がいっぱいいる机に、女優の井上綾香もいりゃ、目移りするわな」
冨澤先輩は、あまり興味が無いと言った感じでビールをさらに飲んでいく。
「あの、先輩」
「ん? どした?」
俺は、意を決して冨澤先輩に聞いてみることにする。
「えっと、あの机にいる赤いカーディガンの女性なんですけど……」
俺が思い切って冨澤先輩に尋ねると、冨澤先輩は俺の視線を追うようにして、天使のような女性の先輩の方を向いて確認する。
「あぁ、もしかして愛梨先輩のことか? お前、いい所に目を付けるじゃねーか。愛梨先輩、美人で可愛いよな! 呼んできてやろうか?」
「えっ!? いやぁ、そんな……」
俺が躊躇するのをよそに、冨澤先輩はさっさと立ち上がり、愛梨先輩の方へと向かって行ってしまう。
そして、愛梨さんの肩をトントンと叩き、何か話しながら俺の方を指さすと、愛梨さんと呼ばれていた女性は、俺の元へとやって来てくれた。
愛梨さんと目が合うと、何かを思い出したのか、パァっと顔を明るくさせて、俺に手を振ってきた。
「あぁ、こないだの子だ! 来てくれたんだ!」
「ど、どうも……」
俺は頭を掻きながら俯きがちに挨拶を交わす。
「え? 何知ってるの?」
「私がチラシ配ったんだよ~」
冨澤先輩に事の次第を手短に説明して、また俺の方を向いて頬笑みを浮かべる愛梨さん。
「私は中村愛梨です。三年の社会学部! よろしくね」
天使のような女性は、美しい笑顔を振りまきながら、丁寧に自己紹介ををしてくれる。
「初めまして、南大地っていいます」
俺がしどろもどろになりながらなんとか自己紹介を返すと、愛梨さんは感心した様子で顎に手を当てる。
「へぇー南くんっていうんだー」
愛梨先輩はじぃっと俺の顔を見つめてくる。直視されて恥ずかしくなり、俺はふいっと視線を反らす。
「……よしっ、覚えた!」
愛梨先輩はにっこりと笑って、そう言って微笑んた。
「これから、よろしくね南くん!」
「はい、よろしくお願いします」
愛梨先輩は軽く手を振って、踵を返して自分の席へ帰って行く。
ようやく俺は、胸が締め付けられるような緊張から解放されると、一気にぶわぁと汗が体中から噴き出てくるのを感じた。
すると、愛梨先輩を見送っていた冨澤先輩が、微笑ましい様子でこちらへと振り返る。
「よかったじゃん話せて」
「はい、よかったっす」
正直頭が真っ白で何も言えなかったけど、話せただけでも幸せな気持ちでいっぱいだった。
だが、冨澤先輩はどこか真剣な表情になり、厳かな口調で言ってきた。
「でも、愛梨先輩は気を付けたほうがいいぞ」
その口調の変わりように、俺も思わず生唾を飲み込んだ。
「ど、どういう意味ですか?」
俺が尋ねると、冨澤先輩は俺を手招きして、耳元で小さな声で話してくる。
「愛梨先輩って他の人からも人気あるから、うちのサークルの男子も何人もの奴らが告白してきたけど、結局全員撃沈してサークル辞めてったんだ。噂によると、サラリーマンの彼氏がいるとか、他のサークルの男子とラブホに行ってやりまくってるとか、色々妙な噂と謎が多い人だから、あまりおすすめしない。愛梨先輩目当てでこのサークルに入るなら、やめておいた方がいいぞ」
冨澤先輩は俺にそう忠告してくる。やはり、詩織や春香が言っていたように、愛梨さんには何か裏の表情があるようだ。
そんな忠告を先輩から受けて、俺は再び愛梨さんを見つめる。その可愛らしくて透き通った屈託のない笑顔だけ見れば、そんな雰囲気は微塵も感じられないのだが、それが詩織の言っている騙されているということなのだろうか?
そんなことを思いながら、俺は汗をかいて熱くなった身体を冷ますために、自分のグラスに残っていたウーロン茶らしき飲み物を一気に飲み干した。
周りを見ると、何人かの先輩たちは、立ち上がって隣の机まで乾杯をしに回っている。その波に任せるようにして、机を回ってくる先輩たちともグラスを交わす。
ようやくひと段落したところで、グラスに口を付けてウーロン茶飲んだ。ウーロン茶にしては、少し甘いような感じがした。
「ぱぁ、うめぇ!」
机の向かい側では、ビールを飲んで感嘆の声を上げるイケメンの先輩。
すると、思い出したようにテーブルのみなを見渡しながら口を開いた。
「あ、自己紹介まだだったね、俺は二年の冨澤慎吾っす。『慎吾さんって気軽に呼んでくれ』」
そう言って、軽い感じの自己紹介をした冨澤先輩は、グラスを持ちながら細身の先輩へ視線を移す。
「で、こっちがサークルの代表やってる。真面目こと長谷部でーす」
「誰が長谷部だ!」
細身の先輩は、冨澤先輩に向かって、またツッコミを入れる。
そして、気を取り直すように一つ咳ばらいをしてから口を開いた。
「えっと、サークルの代表者やってます。太田翔也です。よろしく」
口角を上げて作り笑いを浮かべてながら、太田先輩は俺たちに挨拶を交わした。
「よ、よろしくお願いします……」
俺たち新入生はその先輩たちの高いテンションについていけず、苦笑いを浮かべながら挨拶を返すことしか出来ない。
「何か質問したいこととかある?」
早速、冨澤先輩が俺たちを見渡して聞いてくる。
「はいはい!」
すると、俺の隣に座っていた爽やかな男子が手を挙げていた。
「お、はい、どうぞ」
「あ、えっと、一年文学部の橘っていいます。活動ってどのくらいあるんすか?」
「えっとね、基本活動日は金曜日の夜で、近くの中学校があるんだけど、そこのコートを借りて、いつも活動してる感じかな。年に一回、他のサッカーサークルとのリーグ戦やったりして、優勝したら本家のサッカー部との対戦権がもらえるんだよ」
「え? すごいっすねそれ」
「まあ、うちのサークルはそんなにガチじゃないから、優勝したことないんだけどね」
「なるほど、ありがとうございます」
「いいえー。他に質問ある方ー」
冨澤先輩尋ねると、また別のところから恐る恐る手が当たる。
「はい、どうぞ!」
「男女比はどれくらいですか?」
「それは、このおじさんの方が知ってるかな」
そう言って、冨澤先輩は太田先輩の方へ顔を向ける。太田先輩は、グラスに注がれていたビールを一口飲んでから話し始めた。
「だいたい比率で言うと男7の女3ってところかな、あっちの方に女性の先輩がいるけど、あんな感じでみんな仲良くワイワイとやってるよ」
太田先輩はそう言って、天使のような女性がいる方を向きながら説明してくれる。
「なるほど、ありがとうございます……」
質問をした新入生は、そこから女子部員の先輩の話に持っていきたかったのだろうが、太田先輩が相手ではこれ以上話を広げられないと判断したのか、そこで話を切り上げてしまった。
しばらくそこからは、テーブルにいる新入生の自己紹介をしたりとかして、場が進んでいく。
俺も少しずつだが、場の雰囲気に慣れてきた。
そこで、ふとあの女性と綾香がいるテーブルへと目をやる。
すると、やはりそのテーブルには多くの人だかりができており、その中心にいるのは女優井上綾香だった。中には、違うテーブルから話を聞きに来た先輩もちらほらいる。
そりゃそうだ、突然何の変哲もないサッカーサークルに、女優井上綾香が現れたんだ。そりゃ、誰もが興味を引かれるだろう。その輪の中で、天使のような女性も井上さんの話に興味深々と言った様子で、半身を乗り出して話を聞いていた。
そんな姿を、ただぼおっと眺めていると、横から声を掛けられた。
「あのテーブルが気になるのか?」
声の方を振り向くと、ビールジョッキをあおりながら、冨澤先輩が俺に聞いてきた。
「えっ、あっ……いや、そのぉ……」
「まあ、そりゃあんな美人な人がいっぱいいる机に、女優の井上綾香もいりゃ、目移りするわな」
冨澤先輩は、あまり興味が無いと言った感じでビールをさらに飲んでいく。
「あの、先輩」
「ん? どした?」
俺は、意を決して冨澤先輩に聞いてみることにする。
「えっと、あの机にいる赤いカーディガンの女性なんですけど……」
俺が思い切って冨澤先輩に尋ねると、冨澤先輩は俺の視線を追うようにして、天使のような女性の先輩の方を向いて確認する。
「あぁ、もしかして愛梨先輩のことか? お前、いい所に目を付けるじゃねーか。愛梨先輩、美人で可愛いよな! 呼んできてやろうか?」
「えっ!? いやぁ、そんな……」
俺が躊躇するのをよそに、冨澤先輩はさっさと立ち上がり、愛梨先輩の方へと向かって行ってしまう。
そして、愛梨さんの肩をトントンと叩き、何か話しながら俺の方を指さすと、愛梨さんと呼ばれていた女性は、俺の元へとやって来てくれた。
愛梨さんと目が合うと、何かを思い出したのか、パァっと顔を明るくさせて、俺に手を振ってきた。
「あぁ、こないだの子だ! 来てくれたんだ!」
「ど、どうも……」
俺は頭を掻きながら俯きがちに挨拶を交わす。
「え? 何知ってるの?」
「私がチラシ配ったんだよ~」
冨澤先輩に事の次第を手短に説明して、また俺の方を向いて頬笑みを浮かべる愛梨さん。
「私は中村愛梨です。三年の社会学部! よろしくね」
天使のような女性は、美しい笑顔を振りまきながら、丁寧に自己紹介ををしてくれる。
「初めまして、南大地っていいます」
俺がしどろもどろになりながらなんとか自己紹介を返すと、愛梨さんは感心した様子で顎に手を当てる。
「へぇー南くんっていうんだー」
愛梨先輩はじぃっと俺の顔を見つめてくる。直視されて恥ずかしくなり、俺はふいっと視線を反らす。
「……よしっ、覚えた!」
愛梨先輩はにっこりと笑って、そう言って微笑んた。
「これから、よろしくね南くん!」
「はい、よろしくお願いします」
愛梨先輩は軽く手を振って、踵を返して自分の席へ帰って行く。
ようやく俺は、胸が締め付けられるような緊張から解放されると、一気にぶわぁと汗が体中から噴き出てくるのを感じた。
すると、愛梨先輩を見送っていた冨澤先輩が、微笑ましい様子でこちらへと振り返る。
「よかったじゃん話せて」
「はい、よかったっす」
正直頭が真っ白で何も言えなかったけど、話せただけでも幸せな気持ちでいっぱいだった。
だが、冨澤先輩はどこか真剣な表情になり、厳かな口調で言ってきた。
「でも、愛梨先輩は気を付けたほうがいいぞ」
その口調の変わりように、俺も思わず生唾を飲み込んだ。
「ど、どういう意味ですか?」
俺が尋ねると、冨澤先輩は俺を手招きして、耳元で小さな声で話してくる。
「愛梨先輩って他の人からも人気あるから、うちのサークルの男子も何人もの奴らが告白してきたけど、結局全員撃沈してサークル辞めてったんだ。噂によると、サラリーマンの彼氏がいるとか、他のサークルの男子とラブホに行ってやりまくってるとか、色々妙な噂と謎が多い人だから、あまりおすすめしない。愛梨先輩目当てでこのサークルに入るなら、やめておいた方がいいぞ」
冨澤先輩は俺にそう忠告してくる。やはり、詩織や春香が言っていたように、愛梨さんには何か裏の表情があるようだ。
そんな忠告を先輩から受けて、俺は再び愛梨さんを見つめる。その可愛らしくて透き通った屈託のない笑顔だけ見れば、そんな雰囲気は微塵も感じられないのだが、それが詩織の言っている騙されているということなのだろうか?
そんなことを思いながら、俺は汗をかいて熱くなった身体を冷ますために、自分のグラスに残っていたウーロン茶らしき飲み物を一気に飲み干した。
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