合同籠球マネージャー

さばりん

第41話 おまじない

体育館の入り口から出て、校舎とを結ぶ連絡口へと到着する。
誰もいない通路には、雨の音だけが聞こえ。ザァっという音だけが俺たちの周りにこだまする。

「大樹…どうしたの…こんなところまで連れてきて…」

引きずられてきた静がゆっくりと起き上がると、俺は松葉杖を離し、静に体の体重を寄せていき、その細くてしなやかな静の体に抱き付いた。
静は驚きながらも俺を抱き留めた。

ガシャン松葉杖が無造作に地面にたたきつけられる音の後に、静が驚いたように問いかける。

「大樹…どうしたの??」

俺は静に預けていた体を右足で少し起き上がらせ、普通のバグの体制に持っていった。

「よいっしょっと」

そして、俺は恥ずかしいのを我慢しながら静の耳元でささやいた。

「お前が、この試合にいないと困るんだよ…その…俺が抱きしめたら目が覚めるって言っただろ…だから…」

俺は気恥ずかしくなってそれ以上は何も言えなかった。

静は驚きの表情をしばらくしていたが、すぅっと息を吐くと、目を瞑って俺をもう一度キューっと抱きしめる。

「ありがとう…大樹」

そして、力を少し弱めたかと思うと顔を近づけてきて

「チュ」

右のほっぺに当たる静の唇と共に甘い香りが漂ってきた。

「なっ」

俺が恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていると、静は抱きしめていた手を離して下に落とした松葉杖を拾い上げてくれる。

「はい」
「お・・・おう…」

俺は少し冷静になって静から松葉杖を受け取る。まだ甘い空間がかすかに残っている気がした…
静はそのままコートへ戻るために歩き出そうとしたが、立ち止り向こう側を向きながら。

「ありがとう大樹、すっきり目が覚めた」

そして今度はこちらを見て、腕を捲し上げ、

「本気だす」

と力強く言った。

完全に目つきが変わっていた、それを見た俺はふっと笑いながら。

「ったく、面倒がかかるやつだぜ全く」

と言ってやったのだ。

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