合同籠球マネージャー

さばりん

第36話 梨世VS美優ちゃん

梨世対美優ちゃんの一対一が始まった。

ドリブル突破のタイミングを、梨世は伺っている。
美優ちゃんも梨世が仕掛けてくるタイミングが来るまでじっと待ち構えていた。
ボールを突く音だけが体育館に響き渡り、しばしの沈黙が時間が止まったかのようにコートの中に流れる。

梨世がチラッと右サイドを確認する。
ドリブルを一度ゆっくりと突いた後、右側へ一気にドリブル突破を仕掛けた。
それを読んでいた美優ちゃんはすっと梨世のコースを遮ろうとする。
梨世はそれを見ると、ドリブルを突いてボールを左手に持ち変え、左サイドを一気に抜きにかかった。
一瞬反応が遅れた美優ちゃんは左足で必死に踏ん張り、梨世の突破を防ごうとする。

だか、スピードにすでに乗っている梨世を止めることは難しい。どうやらその勝負は、梨世に軍配が上がったようだ。梨世は美優ちゃんを抜き去りゴール前へドリブルで一気に侵入する。

「よしっ!」

思わず俺も声が漏れる。

梨世は一直線にゴールへドリブルを突き向かっていく。
相手は二人掛かりで梨世を止めようとカバーに入ってきた。
それを見た梨世はチラッと左を見ると、迷わずにその方向へダイレクトパスを送る。

左サイド、サイドラインとゴールラインの端ぎりぎりの位置で待っていたのは倉田だった。
倉田は梨世からのパスを落ち着いて受け取ると、丁寧にスリーポイントシュートを打ち込んだ。
きれいな山なりの放物線を描きながら倉田が放ったシュートは、リングのネットを揺らした。
倉田のスリーポイントシュートが決まり5対7とする。

「ナイスシュート倉田!」

倉田は一瞬俺の方を見たが、すぐに相手選手のマークへと切り替えていった。

しかし、その出来事は一瞬だった。
戻りが遅れた梨世たちを置き去りにして、相手が速攻を仕掛けてきた。

フリーでボールを受けた美優ちゃんは、ドリブルを一回突いた後、走っている前の選手へパスを送る。
そのパスは強すぎず弱すぎず走っている選手が減速することがない位置にピタリと合わせる絶妙なパスであった。
美優ちゃんの絶妙なパスを受け取った選手は、落ち着いてレイアップシュートを決めて、すぐさま点差を離しにかかってきた。

「ッチ!」

俺は思わず上に上げていた右腕を振りおろして、舌打ちをついた。

「タイムアウトお願いします。」

ビィ!!っというブザーが鳴る。

「タイムアウド!黒。」

俺は、ここで一回目のタイムアウトを取ることとなった。

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