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合同籠球マネージャー

さばりん

第28話 朗報その2

しばらくすると、体育館の入り口から元気ないつもの声が聞こえてくる。

「大樹!」

俺は入口のほうを見ると、着替えを終えた女子バスケ部が集合していた。

「おう、なんだ梨世か…」
「なんだじゃない!待ってるって言った場所にいないし、どこに行ったのかと思ったじゃん!」

少し不機嫌そうな梨世に俺は最後の流れた一滴の涙を手で拭い、梨世へ向き直る。

「え?なんで泣いてるの??何かあったの??」

状況を把握できていない梨世は、辺りを見渡して何があったのか様子をうかがう。

「あぁ、そうだ。桜にも伝えたいことがあってね」

相沢さんが梨世に声を掛けると、梨世は不思議そうな表情を浮かべ。

「はい?」

と返事を返す。

相沢さんが事の状況と、新たな情報を梨世に伝える。

「えぇ!!大樹がコーチで私がマネージャーとしてインターハイにですか!???」

梨世は驚きを隠せない様子だった。

「あぁ、やっぱり大樹が抜けて、梨世ちゃんたちも本格的に女子バスケ部として部活動を開始したことは僕らにとっても喜ばしいことなんだけどね」
「やっぱり、試合にベンチに梨世ちゃんがいないとモチベーションが上がんねぇってことで今までの試合のようにいつものメンバーで自然体に俺たちはインターハイを戦いたいってことになってな」

相沢さんと航一が梨世マネージャー就任の経緯を説明する。

「まあ、確かにこないだまで梨世はほぼ男子バスケ部のマネージャーみないなもんだったしな」

梨世はいつも選手たちに声を掛けてサポートしてくれる元気印みたいな存在だったからな、あいつらにとっても梨世がいない試合ってなると何か違うものがあるんだろうなと俺が納得していると、梨世は少し困ったような表情を見せた。

「それは…私は今まで男子バスケ部がインターハイ出場できるように出来るだけのサポートをしてきたつもりです。けど、今は私も大樹も女子バスケ部としてちゃんと活動していて、男子の練習にまともに参加していない私たちなんかが入るなんて…」

珍しく梨世が遠慮そうにしていた。確かにここ一カ月は俺も梨世も男子の練習にはほとんど顔を出していなかった。そんな二人がインターハイのベンチに入るなんてことがあっていいのだろうか??それに今は…

「それに今は…女子バスケ部としてのメンバーがいますし…」

俺が思っていたことと同じ事を梨世は口にした。そりゃそうだろう、目標が出来て、これからという時に水を差すように俺と梨世だけが抜けてインターハイに行くなんてことは気が引ける。そんなことをふと心の中で感じてしまう自分がいた。

「別にそんなことは考えなくていいんじゃない?」

しかし、そんな俺たちの心配を払いのけるかのように言ってきたのは静であった。

「インターハイ…行ってきなよ」
「静!?」

梨世は驚いた顔で静を見つめる。

「でもいいの??私たちこれからって時に・・・」
「別に二人がいなくても練習は出来るし。インターハイ出場の権利を勝ち取った時に大樹と梨世は同じコートで戦っていた。その事実は変わらないし、川見高校男子バスケ部として大樹達にも権利は十分ある。その後からチームとして加わった城鶴高校の私たちがどうこう言う権利はない」

静は俺たちがインターハイへ行くことを進めてくれていた。俺はその言葉がとても心に突き刺さった。そうだ、俺と梨世にはインターハイに行く権利があるってことなのか…

「それに・・・」

静は少し間を取り。

「インターハイなんで誰もがいける舞台じゃない。こんなチャンス逃したら一生後悔するよ」

一生後悔する。その言葉を静は重い口調で言い放った。静はチャンスを無駄にするなとはっぱをかけてきている。それは、自分が二度と来ないチャンスを逃してしまった。そんな経験をしたかのようなメッセージにも聞こえた。

「私も、梨世たちがインターハイに行くのは賛成です」

今度は倉田が賛成する。

「静も言ってたようにあなたたちには出場する権利がある。それは、変わらない事実です。行ってきてください。そして、その経験を私たちに還元して頂戴。」

倉田はインターハイに行くことが、今後の俺たちにとって必ずプラスになると言ってくれた。

「二人とも行ってきなさいよ!生徒会長としても誇らしいことだと思うわ。」

本田も生徒会長を建前に学校のプラスになるといっているが、本当は俺たちのことをチャント応援して後押ししてくれている。
俺たちは、その言葉を受け止める。俺は梨世へ顔を向けると梨世も同じことを考えていたらしく。目が合い意を決したように頷く。
そして、相沢さんと男子部員の方に改めて向き直り、頭を下げる。

「ありがとうございます、よろしくお願いします!」
「ありがとうございます、よろしくお願いします!」

俺たちは同時に頭を下げながら感謝の意と、インターハイを共に戦う決意を表明したのであった。

「おう、よろしくな、大樹、桜。」

キャプテンが優しく俺たちに声を掛けてくれる。

「次の練習試合まではこっちのことは気にしないで練習を続けてくれていい。練習試合が終わり次第インターハイまでの間は、しばらく男子の練習の方に来てもらうことになる形になるが、それでいいかな?」

相沢さんが俺にそう提案をしてきた。

「わかりました」

俺は再び相沢さんに向き直り返事をする。

「よし、じゃあ大樹と梨世の同行も決まったことだし、今日は終了!片づけに入ってくれ」

相沢さんがその場を閉めると男子部員は片づけを再び開始する。
相沢さんは俺と梨世の元へ近づいていき。再び声を掛けてくる。

「二人ともよろしく頼むね!」
「はい!」
「はい!」

俺たちは元気よく相沢さんに挨拶をかわす。次に相沢さんは静たちの方を向いて語り掛ける。

「君たちも二人の気持ちを理解してくれて…そして、男子バスケ部のわがままを聞いてくれて、どうもありがとう」

相沢さんは深々と静たちに頭を下げた。

「いえいえ、私たちは何もしてないですから、気にしないでください。」

黒須さんが両手を前に出しながら申し訳なさそうに答える。

「倉田と渡辺も申し訳ない。いつも男子の練習に付き合ってくれたのに今回は連れていくことが出来なくて…」

再び相沢さんか彼女たちに頭を下げる。

「いやいや、どんでもない!むしろ、私たちが練習に参加させてもらっていただけでも感謝しかないですし…」
「梨世が男子バスケ部のために一番頑張っていたことは見て来ましたし。当然のことですよ。だから、謝らないでください」

渡辺と倉田がそれぞれ気にしていない意を相沢さんに伝える。

「なーに言ってんのよ二人とも、見に行くに決まってんでしょ!」
「え!?」

本田の発言に、一同が驚きながら本田を見る。

「あったりまえじゃない、我校の生徒会長として当然のことだわ!それに・・・ベンチでカッコよく座っている大樹キュンの写真をたくさん撮って…ぐへへへへ」

本命は後ろの方か…

「大樹の応援は行かなきゃね!亜美ちゃん!」
「え?私たちも行くの!?」

静が黒須に当たり前でしょというような感じで話をしている。

「私もインターハイ見に行ってみたかったんです!」

形原は目をキラキラさせながら楽しみにしている様子であった。

「えー私行くのだるいなぁ~」
「ほら、柚ちゃん。そんなこと言わないの!」

小林が渡辺になだめられている。
そんな会話を眺めていると梨世が肩をトントンと叩いてきた。

「ん?どうした??」

俺は梨世のほうを見ると、梨世は優しい瞳で今にもうれし涙を流しそうな表情で

「大樹…インターハイ出場おめでとう!」

と言ってきた。

しばしの沈黙が流れる…それは俺が選手生命を終えることになった日、梨世が言えなかった一言だったのだろう。嬉しそうに少し伸びた茶髪のセミショートの髪を揺らしながらにっこりと俺に微笑みかけてきている。

俺は、はぁっと一息ため息をついて梨世に向き直る。

「ありがとう…インターハイ頑張ろうな」

俺の表情がどんなものだったかはわからない。だが、梨世がその表情を見て、嬉しそうな表情を浮かべている姿を見れば、自分がどのような表情を浮かべていたのかがすぐに理解できた。

「うん!」

梨世はここ一番の笑顔いっぱいの表情を振りまいた。

こうして、俺と梨世はインターハイメンバーにチームメイトとして、仲間として共に同行してインターハイを戦うことが決まったのであった。

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