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合同籠球マネージャー

さばりん

第18話 戦友の一声2

静たちと別れた後、俺は梨世たちと駅に向かいながらずっと自分がどうしたいのかを考えていた。

「今出ることでもないし。ゆっくり考えていけばいいんじゃないかな」

と渡辺がフォローを入れてくれたりしていたが、俺たち五人は、自分たちの目標そしてチームの目標のことについて頭の中がいっぱいで離れることはなかった。ずっと沈黙が続き、帰り道を歩いていく。

梨世以外の三人とも別れを告げ、梨世に車いすを引かれながら俺たちは岐路に着いていた。
梨世と俺の家はお隣さんなので帰る方向も一緒のなのだが、今は何か話そうという気にもなれず、ただ、ただ、傾き始めた夏の日差しとセミの鳴き声と梨世の足音だけが響き渡っている。

俺は学校からここまで黙ったままずっと考え込んでいた。俺自身の目標…それはチームの方針に直結する大事なこと。梨世たちにどうなって欲しいのか、今自分自身がどうしたいのか、そればかりを考えているうちに、気づけば俺たちはあの公園へ足を運んでいた。
夏の空に傾いた夕日と、バスケットコートに差し込む日差しで、車いすの影と梨世の影が大きく縦長になって映し出されている。
そして、コートに伸びるもう一つ先客の影がある。

「よっ」
「…なんだよ、お前かよ」

そこにいたのは、部活帰りの航一だった。

「また、ひでぇ顔してるな二人とも…なんかあったか?」
「まあな」

のんきに笑っている航一と違って、梨世はあまりいいとはいえない、何かもどかしさがある表情をしていた。
夏服の指定の制服を身にまとい、ツーブロックの黒髪の毛をなびかせながら、コート脇にあるベンチに練習着やバッシュなどが入った荷物を置き、ボールを取りだしてこっちへ来た。

「大樹!バスケしようぜ」





俺はフリースローラインあたりに車いすを固定して、ゴール前に走ってくる航一にパスを出していた。
航一は練習後とは思えない、軽々とした足取りでボールを受けて二歩踏み込んだあと、右手でボールを持ち手首をシュっと回して、レイアップシュートを次々と決めていく。航一はしばらく何も言うことなく俺が出したパスを受け取りレイアップシュートを決めていった。
10本目くらいだろうか、航一がレイアップシュートを放つと珍しくリングをかすめて外した。ボールがゴールから遠ざかっていくのを眺めていると、航一がそのボールを追いかけていった。

その間に梨世のほうを見ると、公園から離れた川沿いの堤防に座り、足とプラプラとさせながら明後日の方向を見ていた。梨世の様になっている姿に見とれていると、航一はボールに追いつきボールを拾い上げ、俺を呼ぶ。そして、そのボールを俺に向かっておもいっきり、野球の遠投みたいな投げ方で投げてきた。
一直線に向かってくるスピードボールを、俺はお腹で抱え込むようにしてなんとかキャッチした。

「いってぇな!!けが人になんてパスしやがる!!」
「悪い悪い!」

全然反省してない半分笑った声で航一が適当に謝ってくる。

「なんだ、上半身は全く衰えてねぇようで安心したぜ」
「ったりめぇだ。お前のキラーパス何本受けてきたと思ってんだよ、こっちは」
「それもそうだな」
「お前は性格の悪いパスばかり出すから、もう少し受け取る側の気持ちにもなってほしいぜ、全く」
「悪かったって」

航一はまた俺に悪気のない笑顔で平謝りすると、今度はスリーポイントライン付近へパスを要求する。

「大樹!」

俺は上半身全身を使い航一にパスを出す。しかし、無残にもボールは航一の元に何度もバウンドしてコロコロとして届いた。

「さっきの撤回、スゲー衰えてんじゃねーのお前」
「うるせぇ!」

笑いながらボールを拾い上げて俺の元へ近づいてくると、航一はにこやかに語りかけてきた。

「梨世とケンカでもしたか??」
「いや、別に…」
「そういえば、今日城鶴高校のバスケ部のやつらに会いに行ったんだろ??静は元気にやってたか?」
「あぁ。相変わらずだったよ。男子部員に混ざって試合に出てた」
「あはは、さっすが俺たちが鍛え上げただけのことはあるな!」
「そうだな」
「で、合同チーム結成することになったんだろ??」
「まあな…」

俺は少し曖昧な感じで受け答えをした。

「なんだよ?スカッとしねぇ返答だな」

航一もそれを感じ取ったらしく。手元に持っていたボールをシュート体制に構えて、リングに向かって放った。見事に決まったボールは逆回転をしながら航一の手元に戻ってくる。

「なぁ…航一がもしコーチだったら、どういうチームにしたいと思う??」

俺は航一に今悩んでいることを直球で投げかけた。

「あ、俺??んーそうだなぁ…」

航一は戻ってきたボールをもう一度拾い上げてまたシュートを放つ。今度はリングの右に当たり、シュートを外す。そのままボールは、俺らの元から反対方向へ転がっていく。

「ッチ、入んねぇ~」

航一はグチグチといいながら俺の方に向き直る。

「まあ、大樹がどう考えてるかは知らねぇけど、俺はバスケ好きだから、好きなように練習教えて上手くなって、それで試合やって勝てればいんじゃねーのって思うぜ。やっぱり試合の醍醐味はどのスポーツも勝つここが一番だからな!」

航一は当たり前のように単純なことを口にした。そして、飛んでいってしまったボールを拾いに行く。

勝つ・・・か、簡単に航一は言ってのけたが、勝つためにはどんなスポーツであっても相当な練習と努力をしないと勝利は得られない。それに加え、バスケットはチームスポーツだ、一人が努力しても他の人が努力をしなければ勝つことは出来ない、難しいスポーツである。だが、逆に考えれば、選手、コーチ全員が努力して勝利をすることが出来た暁には、涙が出るほどの達成感を味わうことが出来る…そうか!

俺の中で何かがプツンと吹っ切れたような音がした。簡単なことでいいのか、勝つことの喜びを一緒に梨世たちと味わいたい、同じ喜びを共有したい。負けたときは同じ悔しさを共有したい。そいういことの一つ一つが青春であるのではないか??バスケの技術どうこうではなく、一つ一つ想いを積み重ねていけばいいんだ。
心の中でもやもやとしていたものが確信に変わった。

俺は梨世達が・・・いや、梨世達といろんな想いを分かち合いたい。

航一がボールを拾い戻ってくる頃には、俺の顔つきは先ほどと、どれほど変化しているのであろう。それは航一にしかわからない。だが、俺は自信に満ち溢れたこの感情を今すぐに誰かに話さずにはいられない気持ちになった。

「航一、俺やるよ!絶対に梨世達とのこの瞬間を無駄にしないように頑張る」

航一は俺の表情を見てほっとしたのか、はぁと、一息ついてから真剣な表情でありながら笑って言った。

「そうか…ガンバレよ、大樹」
「おう」
「梨世!帰るぞ!!」

俺が元気よく梨世を呼ぶ。
梨世は振り返り、俺の方を見るとニコッと笑顔になった。
お互いに目標を見つけることが出来た、そんな眼差しであった。

そうして俺はまたも戦友に助けられながらも一歩を踏み出していくのであった。

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