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合同籠球マネージャー

さばりん

第15話 素人の部員

コートの中でプレーをしている彼女こそが、北条静ほうじょうしずかである。
俺と梨世の小学校時代からの幼馴染でバスケ仲間で、北条は男子よりも頭一つ飛びぬけている身長で、180センチくらいの身長はあろう体を生かして、男子部員と互角に対峙している。ちなみに俺の身長は173センチなのではるかにでかい。
コートでプレーしている彼女のその姿は、とても勇ましくもあり、可憐でもあった。

「すごい、男子部員と一緒に練習しているなんて。」
「しかも、男子のセンターポジションの選手と互角にマッチアップしてるですって…」

渡辺と本田が驚きの表情を見せる。それもそのはず、あそにいる北条静は中学時代県選抜に選出された経歴を持つすごい選手なのだから。

「ま、ずっと俺と航一とガッツリ練習してたらああなったんだけどな」
「その練習に付いていったということは相当すごいってことだよね?」

独り言のように呟いたのを渡辺に聞かれていたらしく、感動された。少し恥ずかしい。

「なら、どうして地元の高校を選んだの?そんなにずごい選手ならスポーツ推薦が来てもおかしくないでしょ??」

今度は本田が疑問を俺に問いかけた。しかし、その問いに答えたのは倉田だった。

「あら、知らないの?城鶴高校は元々県大会出場の常連校よ」
「え?そうなの!?じゃあなんでそんな強豪校が部員不足なんかに・・・」
「それは…」

黒須さんが言いづらそうにしている。それを察してか様子を見守っていた古田さんが重い口を開いた。

「去年までいたコーチの方が、生徒を練習中に殴ってしまったことが問題になりましてね…」

答えづらそうにしていた黒須さんの代わりに古田さんが答えてくれる。

「今流行りの体罰問題ってやつですね」
「はい」

古田さんが苦い返事をしながら話を続ける。

「コーチはこの問題を重く受け止め、自主退職となったのですが…バスケ部は昨年度すべての試合に関して出場停止処分がくだされまして、元々いた部員もほどんど辞めていきました」
「そんなことって…」

本田が辛そうな表情をしている。もちろん俺と梨世はこの件を静から聞いていた。体罰問題のこと出場停止処分のことそして部員が次々と辞めていってしまう現実のことを…

「気付けば3年生以外の部員は北条さんと黒須さんの二人だけになってしまいました。今年度からは、試合出場も可能になり1年生が入れば問題はないと考えていたのですが…」
「風評被害…ですか」

梨世が心苦しそうに答える。

「その通りです」

古田さんがため息を付きながら頷く。体罰問題がニュースに取り上げられてしまった以上、高校に進学し、バスケを続けていきたいと考えている受験生にとっては、悪評が出ているバスケ部がある学校よりも他の高校を受験するのがセオリーだろう。

「勧誘活動は行いましたが、一度悪い噂がついた女子バスケ部に入ってくる新入部員も小林さんと形原さんの二人しかいなくて…」

黒須さんがようやく胸を苦しそうにしながら重い口を開いた。

「前回の大会までは3年生がいたので大会に出場出来ていたのですけど、インターハイ予選が終わって3年生が引退した今はご覧のありさまって感じです」
「なるほどね…」

話を聞いていた倉田が納得したようにうなずく。

「でも、そんな風評被害がありながらも二人も入部希望者がいただけでも幸運じゃない」

今度は黒須を励ますように本田が言った。

「そう言ってもらえると嬉しいんですけど…」

黒須は少し困惑したような表情をしながらこたえる。

「二人ともバスケ未経験者でして…」
「え?」

5人全員が驚きの表情を見せる。バスケ未経験ってことは…実質バスケ経験者は黒須さんと静だけということになる。

「私、元々中学まではサッカー部だったんだけど、この高校に入学したら女子サッカー部なくってさ~それで球技の運動部探してたら、バスケ部に勧誘されたのよ、そこで、静先輩に『あなたなら1年でレギュラーになれるわ!』ってね!」

小林がニコニコしながら気楽に入部時のエピソードを語っている。静のやつ部員がいないことを隠してかっこいいセリフで騙したな…この子も女子サッカー部ある学校ちゃんと探してから受験しようぜ、知らない人にほいほいと付いて行ってしまいそうなタイプだな…将来が心配だ。

「それでね、ティアちゃんはね!」
「柚ちゃん、私の理由はいいから!」

楽しそうに話をしようとした小林を形原かたはらが恥ずかしそうに止める。

「へ?なんで??別に変な理由じゃないしいいじゃん!」
「それはだって…その…」

形原は恥ずかしそうに俯いてしまった。

「言いたくないなら、別に言わなくてもいいよ」
「えーでもバスケ部じゃないのに高校からバスケ始める子なんてそうそういないし、気になるー!」

梨世が空気を読まずに形原に問いかける。おい、俺のフォロー台無しじゃねーか。

「いや…ほんとに大した理由じゃないんです…」
「由香ちゃんも気になるよね?」
「まあ、気にはなるかな…これから一緒にバスケしていくんだし…あっ、無理はしなくていいからね!」

さすが渡辺、再びフォローを入れてくれた、ナイス、俺の味方だな!

「え~、友ちゃんは知りたいよね??」

梨世は次に倉田へ同意を求める。

「そうね、私も言いたくないのなら言わなくてもいいけども…高校からバスケを始めた理由というのは個人的には気になるわ」

おい!余計言わなきゃいけない雰囲気だしちゃったじゃんこれ。バカ倉田!

「そうね、確かにこんなにもったいぶられると余計に気になるわね」

本田も梨世側に同意する。あーあ・・・
形原のほうを見ると顔を真っ赤にしながら恥ずかしさMAXというような表情をしていた。

「わ、笑わないでくださいね…」
「うん、笑わないよ」

梨世が優しく微笑みかける。その表情を見た形原が意を決したように答えた。

「スティールダンクの影響…です。」
「スティールダンク?」
「はい」

スティールダンクとは某雑誌で1990年代に大ブレイクした人気バスケット漫画だ。今も熱狂的なファンは多く日本で愛されている漫画である。

「スティールダンクに憧れて主人公の梅木くんみたいに高校からバスケを初めて見たいって思ったんです」

あーあるある、漫画に影響されてやってみたくなるやつ…俺もスティールダンクのプレーとかやってみたくてよく練習してたな…まてよ…今コーチになったんだから俺はあの名言を言えるんじゃないか??という風に想像を膨らませている時点で自分も形原と似たようなことを思っていることを改めて実感してしまった。

「でも、それってすごいことだと思うよ??ほんとにやりたいと思って実行できる人なんてほんの一握りしかいないんだから、行動に移したことだけでも私はすごいと思う!」

梨世が目を輝かせて形原のことを見て話している。

「私もリベ翼のシュートとか憧れて練習とかしてたけど、今後はスティールダンクの技も練習してみようかな…」

真剣な表情で俺と同じようなバカなことを小林は考えている。

「そうですか??」

小声で体をモジモジとさせながら恥ずかしそうに形原は話す。

「うん、私もやりたいなーとかこうだったらいいのになーって思うこと沢山あるけどいざ行動に移すってなったら中々できないからね」

渡辺も形原を包み込むようなやさしい口調で形原の行動力を評価してくれている。

「ほんとに行動に移すって難しいものね」

本田は実体験があるのか感慨深くうなずきながら形原に嘆いていた。

「確かに、やろうと思って実際にできる人は本当にすごいと思うわ」

倉田がクールではあるものの優しく形原に語り掛けた。すると形原は、顔を上げて驚いたような表情をしながら彼女たちを見渡した。

ほかのメンバーは、全員優しいくにこやかな笑顔を形原に向けていた、それを見て形原はうれしそうな表情に変わってみんなに言った。

「私、頑張れる気がしてきました!」

どうやら話したことで彼女の自信につながったようだった。そして、形原は俺の方に向き直り真剣な表情になりこう言ってきたのであった。

「瀬戸さん、これからよろしくお願いします!!」
「お、おう…よろしくね」

突然のことで少しどもっちゃったよ…

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