合同籠球マネージャー

さばりん

第13話 合同チームの提案

練習時間が終わり、俺は着替え済ませ、地区センターの休憩ルームの机で梨世たちを待っていた。やはり、夏に冷房が効いている所で涼むのは本当に心地がよい。

更衣室で着替えていたら、近くにいたおじさんに着替えに手こずっていた俺の手伝いをしてくれた。世の中捨てたもんじゃないなとふと感じた。

俺は、この後特に用事もなかったので白のTシャツに緑の半ズボンで、先ほど本田を涼ませるために使っていたうちわを、黒い短髪の髪の毛の汗を冷やすために仰いでいる。
しばらくすると梨世たちも着替え終わりで休憩ルームに入ってきた。

「はぁ~涼しいぃ~」

梨世がたるんだ表情で机の椅子に座る。梨世は先ほどの練習着から白のタンクトップのシャツにオレンジの半ズボンとかなり涼しげな恰好をしている。タンクトップ一枚だけなので体のラインがよく見える特に胸のあたりが・・・

一方で渡辺のほうを見ると、このあとどこかへ外出でもするのか、フリルのシャツに七分丈のジーンズを着こなしていた。そして、大きめの黒いリュックを持参していた。フリルのシャツだというのに胸が強調されていることを考えると…思わず生唾を飲みこむ。

「何を見とれてるんですかあなたは…」

ジト目で倉田にみられていた。いかんいかん。
はぁとため息をついた。倉田は白シャツに黒ワイドパンツでコーディネイトしていた。これはこれでクールな感じが出ていていい。

本田はこのあと学校に用事があるのであろう、夏服用制服にベストという格好であった。

「それにしても、本田があんなに体力がないとは思わなかったぜ」
「かたじけない」

本田は机に額をドンと当てて突っ伏してしている。どうやら体力を使い果たして疲れ果てているらしい。これは改善の余地ありだな…
そんなことを思っていると梨世が思いしたかのように俺に質問を投げかけた。

「そういえば、練習後に話があるって言ってたけど、何かあったの??」
「あぁ、そのことなんだけど…」
「…」

約一名を除いてかたずをのんで俺の話を見守っている。

「本田がこんな状態だしな…」
「大丈夫よ。私はこの状態のままでも聞いてるから問題ないわ…」

本田は顔は上げなかったが、手で挙げて聞いていますよとアピールした。まあ、本田がそういってるならいいか…

俺は一つ咳払いをしてから本題に入る。

「実は…今後の活動のことなんだが…」
「うん…」

梨世が不安そうな表情をする

「いや、悲しむようなことではないんだ。むしろ朗報だ!」
「朗報?」

梨世が不思議そうにキョトンと首を傾ける。何その仕草ちょっとドキッてしちゃったじゃないか…
俺はもう一度咳払いをして真剣なまなざしで話を続けた。

「城鶴高校と合同チームを作ってみる気はないか??」
「え?」

机に突っ伏して寝ていた本田が飛び起きる。

「えぇぇぇ!!」

全員が一斉に大声を上げて驚く

「しーっ、静かに、他の方に迷惑だろうが」
「城鶴高校ってとなりの区にある、あの城鶴高校?」
「そうだ」
「でも、なんでいきなり」
「実はな先日…」





夏休み直前の終業式の日、相沢さんと話をした時のことである。

「『合同チームの結成』ですか」
「あぁ、城鶴高校のバスケ部顧問の方からのお誘いでね。城鶴高校も女子バスケットボール部の部員が規定人数に満たなくて公式戦に出場することが出来ないらしくてね。それで、同じく規定人数が足りないうちの女子バスケットボール部と合同チームを作って公式戦に出ないかってお話をもらってね」
「なるほど、確かに合同チームを作れば公式戦への出場が可能になりますし。ちなみに向こうの女子バスケ部の人数は?」
「四人だそうだ、練習方法や条件に関してもこちら側に一任してくれるそうだ。どうかね?」

相沢さんは俺に問いかけてくる。

「相沢さんはどう思いますか??」

俺は相沢さんに再び質問を投げかける。

「うーん、悪い話ではないんじゃないかな?練習方法などもこちら側に一任されてるわけだし、何しろ規定人数が足りて公式戦に学校として出場できるようになるっていることが、お互いの学校にとっても最も大きなメリットになるんじゃないかな??」
「そうですよね…僕もそう思います。」
「そうか…なら!」
「ですが…その前に梨世たちにもこの話をしっかりと話をしたうえで結論を出した方がいいと思います。僕一人で決めるようなことではないような気がするので…」

相沢さんは一瞬俺の返答に驚きをしめしたが、すぐに優しい表情に戻った。

「そうだね、彼女たちにもしっかりと意見を聞くことも必要かもしれないね。じゃあ、この話は彼女たちとも話し合って決めることにしようか」
「はい、そうします」
「わかった、彼女たちには僕から話をしたほうがいいかい?」
「いえ、僕から直接話をします。その方がいいと思うので」

しばしの沈黙の後、相沢さんが口を開いた。

「そっか、わかった。じゃあこの件は大樹くんに一任するよ、いきなり大変な話だと思うけどよろしくね」

相沢さんは優しい口調で俺に語り掛けてくれた。

「はい、ありがとうございます」
「結論が出たら僕に連絡をくれれば、ずぐにこちら側で事務的なことは対応するから。いい答えを待ってるよ。」
「はい、頑張ります」





俺は当時のことを梨世たちに事細かに話した。
練習メニューなどを一任されていること。公式戦に出れるようになること。こちらの回答次第で合同チーム結成の有無を決定することができること。すべてを話した。

「という感じなんだが…みんなはどう思う??」
「それ、すごくいいお話じゃないですか??」

渡辺が目をきらきらさせながら嬉しそうに訪ねてくる。

「あぁ、俺もそうは思っているのだが、問題は二点ある」
「二点?なによ?」

本田が疑問を投げかける。

「あぁ、まず一点目はチーム名だ。合同チームになるから、チーム名は『川見・城鶴合同』とか『城鶴・川見合同』とかになるはずだ」
「ださぁ!」

本田が嫌そうに突っ込む。まあ、予想はしていたが。

「まあ、ダサいかもしれないが。高校の名前は付けられるし。みんなが、我慢してくれたら問題はないんだが、どうだろうか??」
「私は、別に公式戦に出られるなら…それでもいいと思うけど。」

真っ先に賛同を示してくれたのは渡辺であった。

「私は…まあ試合が出来るならそれで構いません…」

続いて倉田も納得してくれた。

「名前ださいし…全員が川見高校の生徒じゃない人たちと手を組んで試合をするって言うのはあまり納得がいなかいんだけど…」

あまり協力的でなかったのは本田であった。

「そこをなんとか、お願いできないかな…多分合同チームでは本田はエースレベルになれるはずだから、さ!」
「っ!エ、エース…」

本田はまんざらでもない笑みを浮かべて鼻を高くしていた。

「し、仕方ないわねー、そういうことなら合同チームでやってあげてもいいわ」

ちょろいなこいつ…と俺は苦笑いをしながら本田の了承を得た。

「三人は一つ目の課題の時点でクリア…か。問題は二つ目…かな」

俺は梨世のほうを見る。
梨世は真剣なまなざしで少し嫌悪が入ったような表情になっていた。

「あの、二つ目の問題って?」

渡辺が俺に質問をしてくる。

「あぁ、二つ目の問題なんだが…」

俺はもう一度梨世のほうを見つめる。

「城鶴高校って北条静ほうじょうしずかがいる学校だよね…」
「あぁ、そうだ」

俺は梨世に生返事を返す…

「静はそれでいいと思ってるのかな??」

梨世は俺に問いただしてくる

「さあな、顧問は前向きだといっていたが。真相は本人に聞いてみないと俺もわからん」
「…」

梨世はそれっきり黙り込んでしまった。

「ねぇ、二つ目の問題って結局何なのよ」

本田が少し不機嫌そうに尋ねてくる。

「あぁ、すまない。二つ目の問題は俺と梨世の個人的な問題だ」
「はぁ?」

本田が半分いらだち、半分あきれたような反応をする。

「つまりは、その北条静って子と何かあるってこと?」

倉田が今の俺たちの話を分析して述べる。

「あぁ、まあ、そんなところだ…」

俺が観念したかのように話を続ける。

「俺たちと城鶴高校の北条静って奴とは小・中の同級生なんだけどな…ちょっとばかり色々と因縁めいたものがあってな、それで梨世はちょっと考えるところがあるんだよ」
「誰のせいだと思ってるのよ…」

小声で梨世が何か言ったようだったが、俺には聞き取ることが出来なかった・・・ことにしておいた。

「何か言ったか?」
「なんでもないよーだ」

俺に向けて梨世はべっと舌を出した後、フイッと不機嫌そうにそっぽを向いてしまう。

「まあ、とにかく相手側の気持ちも俺は確認したほうがいいと思っている、だから、明日城鶴高校の女子バスケットボール部の人たちに会いに行ってみようと思う」
「はぁ!?」

梨世が大きな声で驚く。

「なんだよ。会いに行って真相を確かめるのが一番だろうが。」
「それはそうだけど…」

梨世はどうやら会いに行くのに否定的らしい。

「わ、私は…合ってみたいかなぁ…なんて…」

おそるおそる俺の意見に賛同してくれたのは渡辺だった。

「そうね、私も一度顔を合わせておくことは悪くないと思うわ」

倉田も肯定的な意見を述べてくれた。

「ったく、仕方ないわね~!ここは、私の生徒会長としての権力を思う存分発揮しますか!」

本田はやる気満々であった。

「生徒会長の権力は今回関係ない気がするのだけど…」

倉田がため息まじりに呆れた表情を本田に向けている。

「みんな、行くみたいだぞ~。梨世は…どうする?」

俺は梨世に優しく問いかける。

「大樹はどうするの?」

逆に質問で返された、

「俺はコーチとして選手の意見をしっかりと聞かないといけないからな、行くしかないだろ」
「そっか…」

梨世は、半ば半分あきらめかけたようにため息を付いた。

「はぁ…わかったよ。いけばいいんでしょいけば!」
「ふふっ」
「何?」
「いや、なんでもねぇ。ありがと、梨世」
「べっつに」

梨世はふいっとまたそっぽを向いてしまったがしぶしぶ同意してくれた。

「よし、じゃあ決まりだな。明日、城鶴高校に行って話をしてみよう!」

こうして、五人は城鶴高校女子バスケットボール部員と合同チーム結成の意見を聞くため、城鶴高校へ向かうことになったのであった。

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