合同籠球マネージャー
第4話 初登校
あの絶望的な日から1週間が経過した。
俺はあの後、手術を行った。無事に手術は成功して昨日退院。そして、今日ようやくあの出来事以来初の登校する日になった。
普段は高校まで自転車通学なのだが、こんな状態なので渋々電車を使って通学しなければならない。にしても、あの駅員の人に電車に乗せてもらう車椅子用のスロープをやってもらうのは結構気恥ずかしかった。『何号車お客様ご案内いたします』っていちいち言わなくても…業務連絡だから仕方ないのだろうけど…
そんなことを考えているうちに俺は学校の正門前に到着して、先ほどの壁に掲げられている垂れ幕を見たわけだが…まあ、もうあの試合の日のことは考えないようにしよう。
そう心に決め、バスケ部の朝練の声が響き渡る中、俺は昇降口前のスロープを登り切った。
時刻は8時ちょうど、登校時間の20分前に到着した。普段は自転車で15分くらいなのに電車だと倍以上時間がかかるのか。まあ、家を早めに出とはいえ朝練の時よりは遅いんだけどな…おっといけない、いけない、また色々と思いだしてしまうところだった。
結論から言えば、俺はバスケ部を辞めた…ことになっている。選手として続けることが出来ない以上当然の流れだし、ほかの連中に迷惑をかけるわけにもいかないし、何しろ自分がバスケをできない状況でコートの外からただ眺めているのが耐えられなかったのだ。
俺は職員室に到着して担任の先生に診断書などの提出を行った。生憎俺が手術で学校を休んでいる間に中間試験が行われていたため、夏休み前に行われる再試験を受けなければならないことを担任から伝えられた。
え?せっかく試験免除できると思って何も勉強してないんですけど…やばい。と心の中で思いながら職員室を後にする。
怪我人に対してちょっと対応が厳しすぎませんかね学校さん、今まで健康で文化的な最低限度の生活ができてなかった身ですよ???
今も車椅子で登校してるから健康的な生活を送れてはいないんだけれども…ブツブツと文句を言いながら廊下を移動していると、俺にとってはいつもの明るくてうるさい声が悲鳴と共に聞こえてきた。
「そんなぁぁ!!!」
そこには張り紙が貼られており以下の文章が書かれていた。
下記の者は今回の試験にて4教科以上で既定の得点に達していないため、再試験対象者とする。瀬戸大樹 2年1組 、桜梨世 2年2組
「どうして、由香ちゃんと友ちゃんは再試験じゃないの!!」
茶髪のセミショートの頭を両手で抱えながら幼馴染の梨世が叫んでた。
いや、それが普通だから、むしろお前が頭悪すぎるるんだよ、というのは心に秘めておいた。
「梨世がバカすぎるんです」
っておいおい、せっかく俺が心に秘めていたこともろ言っちゃったよこの人、鬼畜。と突っ込みを心の中でいれる。
鬼畜な発言を梨世に放った黒髪ロングでクールな様相を醸し出している女の子は倉田友、梨世と同じクラスの女子バスケット部員だ。夏服指定のYシャツにセーターまで見事に着こなしている綺麗な見た目とは裏腹にあの毒舌さである。ってかこんな暑いのによくセーター着られるな。
「あはは、元々梨世ちゃん勉強そんなに得意じゃなかったもんね。でも、大丈夫!私が再試験までにしっかり勉強教えてあげるから!」
同情しつつ梨世を励ましている女の子は渡辺由香、梨世と同じバスケ部のもう一人の部員である。毛先はフワッとロールして肩辺りまで伸びた髪に爽やかさを持ち合わせた印象。そして何よりも学校指定の夏服のYシャツとベストを着こなしても隠しきれないその豊満な膨らみ。スカートの下から見えるスラッとしたきれいな細い生足とは対照的にどうしたらあんなに出るとこ出るんだろう…などど考えていると渡辺から声をかけられる。
「あ、大樹くんじゃん、ヤッホー」
「おう、おはよう」
ニコニコとこちらに向かって可愛らしく手を振っている、その笑顔は健全な男子高校生に向けるのはよくないぞ渡辺。いつか変な男に引っかからないか心配だ…と思ってると目の前に突然梨世が現れた。
「大樹!」
「どわっ、なんだ梨世か、どうした」
「どうしたじゃないでしょ、返信来なかったから心配したんだからね!」
「あ、悪い忘れてた。」
「ひどっ!」
「別にいいだろ俺たちの仲なんだし…」
「それって…私だけは特別ってこと?///」
何を恥じらっているんだこいつは…と蔑んだ目で梨世を見る。
いつもの夫婦漫才のような会話をしていると、渡辺と倉田もこちらへやってくる。
「車椅子だけど学校には登校できるようになったんだね、よかった」
渡辺が嬉しそうにこちらを見つめてくる、だから困るんだってその笑顔危険すぎるから…
「まあ、命に別状があるわけでもないし当然よね」
サバサバと倉田が受け答えをする。こいつは渡辺と違い俺とあまり会話をしたがらない、何か嫌われるようなことしたかな?
「あ、そうそう!」
何かを思い出したかのように梨世が手を合わせる
「お願い大樹、勉強教えてくださいぃぃ」
「またかよ」
これで何回目だよ、梨世に勉強教えてくれって頼まれるの。俺は少し呆れたような顔をしつつ皮肉交じりに言い返した。
「そもそも、理系科目昔から苦手なくせになんで理数系型のうちの高校に入学したんだお前は」
「だって、それは…大樹がここの高校入るって言うから…」
小声で恥じらいながら変なことをいいやがる、まあ平常運転でこんな感じだから普段なら気にしないのだが、車椅子でいつもより低い位置からその恥じらう仕草を見るとすこし可愛げもあるもんだな…べっ別にちょっとドキッとなんてしてないんだからね。
「はいはい、そうですか、適当だな理由が」
俺は誤魔化すように受け流すような返しをする。
「適当!?もう、大樹は女心がわかってないんだから…」
いや、女心っていうかお前だからだよ、こんなバカ丸出しの表情で言われてもこっちが困る。逆にこのバカ丸出しの可愛いアピールが好きだという奴も中にはいるらしいが、正直幼馴染として見てきた俺にはさっぱり理解ができん、と思っていたのだか今日の高さでその表情を見て少し奴らの気持ちも理解できたような気がする。
見た目も性格も妹みたいなやつだし、制服も夏服指定の半袖のYシャツのみでスカートは短いし…ってか今気づいたけどフツーに透けてるし…昔から見慣れているせいか全くときめかないが、他の男子に取っては目の保養になるらしいからそこも魅力の一つなんだろうな。
今日はピンクかぁ…一応確認しておいた。
まあ、胸はそこそこ成長しているみたいだし、いいんじゃねぇの??じゃなくて…
「わかったよ、俺も再試験受けなきゃいけないし、やることは同じだから今回は手伝ってやるよ」
「ほんと?よっしゃ」
梨世は小さく胸の前でガッツポーズを見せる。表情はにやけている、最初から俺を頼る前提だったなこいつ。
「じゃあ、放課後勉強すっからまたあとでな、渡辺と倉田も梨世の勉強手伝ってくれ、俺も教えてほしいところあるし」
「うん、いいよ!」
「別に構わないわ」
二人は特に嫌がる様子は見せず、頼みを受けてくれた。
「じゃあ、また放課後に。俺は教室行くから」
俺は車椅子を動かして教室へ向かおうとしたが、後ろの取っ手の部分を梨世が掴んできた。
「なんだよ??」
「教室まで送ってあげるよ」
「いいよ別に、子供じゃあるまいし」
「いいから、いいから!」
「はぁ…じゃあ頼む」
「ほい!」
こういう世話ごとになると梨世はこっちが折れるまで聞く耳を持たないので仕方なくお願いすることにした。全く、こいつはどんだけ世話好きなんだか…
結局渡辺と倉田も一緒に教室まで送ってくれることになった。教室に到着するまではもうすぐ始まる夏休みの予定や授業のことなど他愛もない話をしていた。
そして、誰一人俺がバスケ部を辞めたことについて聞く奴はいなかった。いろいろと気遣ってくれているのだろうか?
まあ、聞いてこないのであれば別に答える必要もないし構わないのだが。そんなことを思いながら俺は教室へ足を踏み入れるのであった。
          
俺はあの後、手術を行った。無事に手術は成功して昨日退院。そして、今日ようやくあの出来事以来初の登校する日になった。
普段は高校まで自転車通学なのだが、こんな状態なので渋々電車を使って通学しなければならない。にしても、あの駅員の人に電車に乗せてもらう車椅子用のスロープをやってもらうのは結構気恥ずかしかった。『何号車お客様ご案内いたします』っていちいち言わなくても…業務連絡だから仕方ないのだろうけど…
そんなことを考えているうちに俺は学校の正門前に到着して、先ほどの壁に掲げられている垂れ幕を見たわけだが…まあ、もうあの試合の日のことは考えないようにしよう。
そう心に決め、バスケ部の朝練の声が響き渡る中、俺は昇降口前のスロープを登り切った。
時刻は8時ちょうど、登校時間の20分前に到着した。普段は自転車で15分くらいなのに電車だと倍以上時間がかかるのか。まあ、家を早めに出とはいえ朝練の時よりは遅いんだけどな…おっといけない、いけない、また色々と思いだしてしまうところだった。
結論から言えば、俺はバスケ部を辞めた…ことになっている。選手として続けることが出来ない以上当然の流れだし、ほかの連中に迷惑をかけるわけにもいかないし、何しろ自分がバスケをできない状況でコートの外からただ眺めているのが耐えられなかったのだ。
俺は職員室に到着して担任の先生に診断書などの提出を行った。生憎俺が手術で学校を休んでいる間に中間試験が行われていたため、夏休み前に行われる再試験を受けなければならないことを担任から伝えられた。
え?せっかく試験免除できると思って何も勉強してないんですけど…やばい。と心の中で思いながら職員室を後にする。
怪我人に対してちょっと対応が厳しすぎませんかね学校さん、今まで健康で文化的な最低限度の生活ができてなかった身ですよ???
今も車椅子で登校してるから健康的な生活を送れてはいないんだけれども…ブツブツと文句を言いながら廊下を移動していると、俺にとってはいつもの明るくてうるさい声が悲鳴と共に聞こえてきた。
「そんなぁぁ!!!」
そこには張り紙が貼られており以下の文章が書かれていた。
下記の者は今回の試験にて4教科以上で既定の得点に達していないため、再試験対象者とする。瀬戸大樹 2年1組 、桜梨世 2年2組
「どうして、由香ちゃんと友ちゃんは再試験じゃないの!!」
茶髪のセミショートの頭を両手で抱えながら幼馴染の梨世が叫んでた。
いや、それが普通だから、むしろお前が頭悪すぎるるんだよ、というのは心に秘めておいた。
「梨世がバカすぎるんです」
っておいおい、せっかく俺が心に秘めていたこともろ言っちゃったよこの人、鬼畜。と突っ込みを心の中でいれる。
鬼畜な発言を梨世に放った黒髪ロングでクールな様相を醸し出している女の子は倉田友、梨世と同じクラスの女子バスケット部員だ。夏服指定のYシャツにセーターまで見事に着こなしている綺麗な見た目とは裏腹にあの毒舌さである。ってかこんな暑いのによくセーター着られるな。
「あはは、元々梨世ちゃん勉強そんなに得意じゃなかったもんね。でも、大丈夫!私が再試験までにしっかり勉強教えてあげるから!」
同情しつつ梨世を励ましている女の子は渡辺由香、梨世と同じバスケ部のもう一人の部員である。毛先はフワッとロールして肩辺りまで伸びた髪に爽やかさを持ち合わせた印象。そして何よりも学校指定の夏服のYシャツとベストを着こなしても隠しきれないその豊満な膨らみ。スカートの下から見えるスラッとしたきれいな細い生足とは対照的にどうしたらあんなに出るとこ出るんだろう…などど考えていると渡辺から声をかけられる。
「あ、大樹くんじゃん、ヤッホー」
「おう、おはよう」
ニコニコとこちらに向かって可愛らしく手を振っている、その笑顔は健全な男子高校生に向けるのはよくないぞ渡辺。いつか変な男に引っかからないか心配だ…と思ってると目の前に突然梨世が現れた。
「大樹!」
「どわっ、なんだ梨世か、どうした」
「どうしたじゃないでしょ、返信来なかったから心配したんだからね!」
「あ、悪い忘れてた。」
「ひどっ!」
「別にいいだろ俺たちの仲なんだし…」
「それって…私だけは特別ってこと?///」
何を恥じらっているんだこいつは…と蔑んだ目で梨世を見る。
いつもの夫婦漫才のような会話をしていると、渡辺と倉田もこちらへやってくる。
「車椅子だけど学校には登校できるようになったんだね、よかった」
渡辺が嬉しそうにこちらを見つめてくる、だから困るんだってその笑顔危険すぎるから…
「まあ、命に別状があるわけでもないし当然よね」
サバサバと倉田が受け答えをする。こいつは渡辺と違い俺とあまり会話をしたがらない、何か嫌われるようなことしたかな?
「あ、そうそう!」
何かを思い出したかのように梨世が手を合わせる
「お願い大樹、勉強教えてくださいぃぃ」
「またかよ」
これで何回目だよ、梨世に勉強教えてくれって頼まれるの。俺は少し呆れたような顔をしつつ皮肉交じりに言い返した。
「そもそも、理系科目昔から苦手なくせになんで理数系型のうちの高校に入学したんだお前は」
「だって、それは…大樹がここの高校入るって言うから…」
小声で恥じらいながら変なことをいいやがる、まあ平常運転でこんな感じだから普段なら気にしないのだが、車椅子でいつもより低い位置からその恥じらう仕草を見るとすこし可愛げもあるもんだな…べっ別にちょっとドキッとなんてしてないんだからね。
「はいはい、そうですか、適当だな理由が」
俺は誤魔化すように受け流すような返しをする。
「適当!?もう、大樹は女心がわかってないんだから…」
いや、女心っていうかお前だからだよ、こんなバカ丸出しの表情で言われてもこっちが困る。逆にこのバカ丸出しの可愛いアピールが好きだという奴も中にはいるらしいが、正直幼馴染として見てきた俺にはさっぱり理解ができん、と思っていたのだか今日の高さでその表情を見て少し奴らの気持ちも理解できたような気がする。
見た目も性格も妹みたいなやつだし、制服も夏服指定の半袖のYシャツのみでスカートは短いし…ってか今気づいたけどフツーに透けてるし…昔から見慣れているせいか全くときめかないが、他の男子に取っては目の保養になるらしいからそこも魅力の一つなんだろうな。
今日はピンクかぁ…一応確認しておいた。
まあ、胸はそこそこ成長しているみたいだし、いいんじゃねぇの??じゃなくて…
「わかったよ、俺も再試験受けなきゃいけないし、やることは同じだから今回は手伝ってやるよ」
「ほんと?よっしゃ」
梨世は小さく胸の前でガッツポーズを見せる。表情はにやけている、最初から俺を頼る前提だったなこいつ。
「じゃあ、放課後勉強すっからまたあとでな、渡辺と倉田も梨世の勉強手伝ってくれ、俺も教えてほしいところあるし」
「うん、いいよ!」
「別に構わないわ」
二人は特に嫌がる様子は見せず、頼みを受けてくれた。
「じゃあ、また放課後に。俺は教室行くから」
俺は車椅子を動かして教室へ向かおうとしたが、後ろの取っ手の部分を梨世が掴んできた。
「なんだよ??」
「教室まで送ってあげるよ」
「いいよ別に、子供じゃあるまいし」
「いいから、いいから!」
「はぁ…じゃあ頼む」
「ほい!」
こういう世話ごとになると梨世はこっちが折れるまで聞く耳を持たないので仕方なくお願いすることにした。全く、こいつはどんだけ世話好きなんだか…
結局渡辺と倉田も一緒に教室まで送ってくれることになった。教室に到着するまではもうすぐ始まる夏休みの予定や授業のことなど他愛もない話をしていた。
そして、誰一人俺がバスケ部を辞めたことについて聞く奴はいなかった。いろいろと気遣ってくれているのだろうか?
まあ、聞いてこないのであれば別に答える必要もないし構わないのだが。そんなことを思いながら俺は教室へ足を踏み入れるのであった。
          
コメント