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合同籠球マネージャー

さばりん

第3話 引退勧告

俺は梨世と共に病院へ直行して、検査を受けていた。

「うーん結構、れてるね…膝のどの側が痛い?」
「今はもう全体的に痛いって感じです」
「腫れが収まるように膝の水を抜いてみようか、もし血が含まれてたら靭帯損傷じんたいそんしょうまたは断裂だんれつが一番可能性として高いかね…」

先生は丁寧に対応してくれていた。だが、痛みはなかなか取れない。
「消毒アルコール問題ないですか?」と看護師の方が聞いてくる。
問題ないですと受け答えをして、アルコール消毒を看護師の人が行っている間、俺は血が出るなと心の中で願いながら膝に注射ちゅうしゃはりが刺されるのを待っていた。
しかし、俺の希望とは反して注射針ちゅうしゃばりを刺して間もなくして大量の血が注射器にたまっていっだった。

結局注射器が2本溜まるほどの血液を抜き取った。俺はその事実に絶望し、色々と覚悟する心の準備は出来た。

膝の靭帯断裂じんたいだんれつ、バスケットボール選手にとっては選手生命にかかわる致命的なケガである。こんな大事な時期に大けがを負ってしまうとは…本当に人生ついていないものである。

「一応レントゲンも取りましょうね」

先生に言われ俺は移動用の車いすに乗せられレントゲン室へ向かう。結果として骨には異常がなかった。

「診断の結果、膝の脱臼だっきゅう及び後十字こうじゅうじ靭帯断裂じんたいだんれつですね、膝のお皿がなんらかのプレーの時に脱臼してそのままプレーを続けた結果、靱帯損傷を起こしたという結果でしょう。靭帯断裂は基本的に手術なのですが、実は後十字靭帯の場合、1年ほどはかかりますが回復できる怪我なんですよ。リハビリを続ければ問題なく痛みも引いてきます。実際にプロの選手でも治療して現役に復帰している選手はたくさんいます。」
「そうなんですか?!」
「じゃあ、リハビリをして、回復すれば問題ないってことなんですね?」

俺と梨世が嬉しそうにお互いに目を合わせる。
回復することのできる怪我であることに安堵した。

「ですが…」

しかし、先生の表情が一瞬にして暗くなる。

瀬戸せとさんの場合、後十字靭帯損傷と膝の脱臼が重なった怪我のため、靭帯断裂のほうは手術すれば日常生活に支障がないくらいには回復します。ですが、一度脱臼してしまうと同じ個所に脱臼癖だっきゅうぐせが付いてしまいます。また左膝を脱臼してしまうと、再び膝の靭帯損傷じんたいそんしょうを繰り返す可能性があります。残りの3つの膝の靭帯、前十字ぜんじゅうじ・右・左十字靭帯損傷の場合は即手術が必要になります。最悪の場合、日常生活にも支障が出てきてしまう可能性があるのです。なので、大変お伝えしづらいことではあるのですが…部活動としてバスケットを続けることはもう出来ないと考えください」
「え…」
「そんな…うそでしょ…」

俺と梨世の希望もぬか喜びで終わり、奈落ならくの底へ落とされた気分だった。もうバスケが出来ない、小学生の頃からずっと続けてきたのに…俺の頭は真っ白になり、何も言葉を発することが出来なかった。

診察が終わり、待合室で会計を待っている間、俺は地面の一点を見つめながら状況を把握しようとしていた。バスケがもう出来ない…頭が状況を理解しはじめると、やるせない気持ちがぐっとこみあげてくるのがわかった。

隣にいる梨世もショックを隠せない様子で本人にどう声をかけていいのか困っている様子だった。
なんでだよ…どうしてだよ…今までこんなに頑張ってきたのに…ようやく自分の状況を頭で完全に理解できた時、俺の目から一粒の水滴がこぼれ落ちた…

「大樹…」

最初はすすり泣きであったが涙と体の震えが止まらない、ついには嗚咽おえつを上げながら号泣していた。

「っ…あっ…くそっ・・・」

言葉が出てこない…他の患者が大勢いる待合室で、俺は所構ところかまわずに号泣していた。それを察してくれたのかわからないが、梨世は俺の背中を何も言わずにさすってくれていた。自分が泣いているためよくわからないが、梨世からも鼻をすする音が聞こえたような気がした・・・しかし、今は梨世を見る余裕も、気遣う余裕は俺にはなく、ただただ歯を食いしばりながら泣き続けた…

すると入口のほうから大きな声が聞こえてきた。

「大樹!やったぞ、全国だぞ!!」

それは航一だった、一番に俺に伝えに病院まで駆け付けてくれたくれたみたいだ。しかし、喜んでいる航一の目に広がって来た光景は、待合室のイスに座りながら号泣している俺と隣で俺の背中をさすりながら泣いている梨世の姿であった。

「…大樹」

航一はそれから何も言わなかった。いや、すべてを察したのかわからないが何も言わずにただそばでたたずんでいたのは覚えている・・・

こうして俺、瀬戸大樹せとだいきは、あまりにも突然に選手生活引退を余儀なくされたのであった。

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