〖真実の愛〗エピソード①~T枝さんとの初恋編~

YUTAKA

『T枝さんとの恋』第四章

第四章

授業が終わると私は親しい『H先輩』の部屋を訪れた。
恋愛話しを同級生にするのは恥ずかしいこともあり、
ここは経験豊富で信頼のできる先輩が適任だと思ったからだ。
H先輩はO先輩の同級生で、T枝さんのことも昔から知っている間柄だ。

『いろいろと噂話は聞いてるよ』
O先輩とT枝さんの成り行きは知っているようだったので、
私とT枝さんの関係について成り行きを相談したのである。
『TETSUOの気持ちは分かったけど諦められないの?』と
H先輩は優しく私に投げかけてくれた。
『今は好きな気持ちが大きくて、T枝さんを直ぐには忘れられない』と
私は素直な気持ちをH先輩へ話しをした。

H先輩は同級生の女性と同棲をしていた。
同棲している彼女は出掛けていたので、彼女が帰ってくるまで
私の話しを聞いて貰うことにした。
そして、お互いの意見を話し合い答えは出なかったが、
それでも私の心は少し穏やかになった気がした。

『話しを聞いて貰ってありがとうございます』と
私はH先輩へお礼を告げて帰る準備をした。
『人生経験だし恋愛もいろいろあるから』と
H先輩に励まされてその日は別れたのだ。

そして翌日以降もH先輩は何かにつけて私に気を遣ってくれ、
心が救われる気持ちになったのは間違いない。
私の心が弱くて感傷的になった時でも、
H先輩は黙って話しを聞いてくれたことが凄く嬉しかった。

『ねえ!今日も空いてるなら付き合ってくれない?』と
授業が終わるとT枝さんからお誘いがあった。
私は一人になる時間が怖くてT枝さんからの誘いを断ることが出来ず、
ただただ彼女に流されて行ったのであろう。

『じゃあいつもの場所で待ってるから』と
O先輩との肉体関係をT枝さんはアッサリ認めたが、
私は何事もなかったかのように彼女と待ち合わせをした。
そのことを私が追及できる立場でもないし、
T枝さんの彼氏でも何でもない存在なのだから。

『TETSUO君、待った?』
その当時の私の心境は、私がT枝さんの時間を独占すれば、
他の男と一緒に合う機会が減少するという浅はかな考えであった。
今日という日を基準に考えれば、全ての事実は『過去』なのだと。
そうやって自分の恋愛感情を、屈折させた考えだったのかもしれない。

『今来たところだから(笑)』
私の中でT枝さんの存在は、大きくなるばかりである。
私が彼女の心を独占できないのであれば、
彼女の身体を独占することが出来たからだ。
そして、彼女も私とのそんな関係を、肯定しているように思えたのである。

愛とか恋とかの形ではなくても、
そんな形が存在してもいいのでは無いかと思い始めた。
今では想像できないが、当時はそれを納得していく自分がそこには居たのである。
そして、私の心境を聞いてくれるH先輩がいて、
私は少しずつ心の整理をしながら自分を見つめ直していた。

でもT枝さんと肉体関係を持った相手の噂話しは・・・

『相談相手のH先輩にもあると、その後に聞かされたのである』



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