〖真実の愛〗エピソード①~T枝さんとの初恋編~

YUTAKA

『T枝さんとの恋』第三章

第三章

O先輩とT枝さんが楽しそうに会話をしている。
O先輩はT枝さんと同じ年であり、
男気があって後輩からは頼られる人物であった。
そして私もO先輩には一目を置いている存在だったのだ。

『だってO君ったら強引なんだもん』
T枝さんはそう笑いながらO先輩の両手を掴み、
楽しそうに会話をしている様子が伺えた。
その光景を見て・・・私の心中は穏やかではいられない。

あの買い物での一件で、すっかりT枝さんを意識している私。
それをT枝さんは知ってか知らずか、
普段通り周りに明るく振る舞うT枝さんの姿がそこにはあった。

人間の独占欲と言うのは、大なり小なり誰にでもあるのであろう。
自分のことは自分で判断が出来ないが、
私はかなり独占欲が強く嫉妬深い性格で、
そしてストーカー性が芽生えてもおかしくないと自覚はしていた。

ただT枝さんには『週末だけの彼氏』が今でも居て、
平日は暇を持て余しているからなのか、
もう何度か私と買い物デートをしていたのである。
そして決まって帰りの車中では大人の挨拶を交わしていたのだ。

ある日の夜
T枝さんから連絡があり、迎えに来て欲しいとのこと。
彼女の指定駅へ迎えに行くと、彼女は泥酔した状態だった。
そして彼女は私の車に乗り込むと、いきなり私に抱き着いてこう言った

『抱いて欲しいの・・・』

私が憧れの彼女から誘われて断る理由はあるはずもない。
彼女に言われるがまま私は、その夜に初めて結ばれた。
そして彼女は私の人生で初めての相手であったが、
彼女が私の事を好きなのかは定かではなかった。

『TETSUO君、今夜も空いてる?』
それからと言うもの、彼女から誘われるがまま、
私は彼女の週末彼氏を意識することもあったが、
彼女の女性としての魅力に溺れていったのである。

『いちでも空いてますから大丈夫(笑)』
好きな人と一緒に居ると楽しいとか恋しいとか、
そんな恋愛感情が芽生えるものだと思っていたが、
私がT枝さんと一緒に居ると虚しさが心を支配することが多かった。

それは彼女には好きな彼氏が居るという真実と、
そして私の存在をどう思っているか聞かされていないからだ。
初めは一緒にいるだけで多くを望まないつもりであった。
だが、私にも人並みの恋愛感情が芽生えていたのであろう。

もしも願いが叶うなら、彼女も私と同じ気持ちでいて欲しい。
そして二人だけの純愛な関係になりたいと望んだのだ。
でも、その願いは簡単に打ち砕かれる日が訪れるのである。

ある日の午後に同級生から
『O先輩とT枝さんがホテルへ行った噂がある』と
話しを聞いたのである。
私は鈍感であったがO先輩とならその状況はあり得るであろうとも思った。
何故ならお互いがお似合いのカップルに見えるからだ。

その真実を突きつけられると私の胸は張り裂けそうになった。
でも、私の心の中ではどういう真実であっても、
何故かT枝さんと別れたくないと思う気持ちが一番勝っていたのである。

その日の夜もT枝さんとディナーへ出掛け、
そして彼女から真実をこう告げられたのでる。

『O君との噂話しは・・・本当のことよ』



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