リア充キャラ甘城さん

ハルト

急なラブコメ展開は選択肢にない

可愛い妹が可愛げに「にぃ」と口走りながら俺のベッドの上で俺の身体を揺らしている。「にぃ起きないと食べちゃうよ」妹は可愛げに顔をどんどん近づけてくる。そんな状況の中階段を上がってくる足音がする。俺の部屋の前まで来るとドタッと扉をける。「まだ寝てるの?」と怒り気味で俺を起こしてくれる幼なじみの彼女は妹と俺のこの状況を目にした途端急に顔を赤くする。そう妹は裸で今にでも俺の唇を奪いそうなのだ。そんな悲劇が起こった朝。学校の登校の最中も可愛い幼なじみの彼女の機嫌を取りながら学校に登校する。いつも俺の朝はこんな感じだ。可愛い妹と可愛い幼なじみに起こされハプニングを起こしてしまう。

​───────。

これは全て妄想。現実は1人で朝起きて1人で学校に登校。これが現実とやらだ。
学校についてもいつものグループ同士で固まってゲラゲラと笑いあっている。
1番目立つ男女混合のリア充グループ、ゲームやアニメの話しかしないオタクの集まりグループ、女子だけの集まりのグループに別れている中俺は群れることも無くぼっちをしている。ぼっちは群れたりなどしない。
そうぼっちは群れたりなど消してしない。良くいえば喧嘩などしない平和主義者。悪くいえばプライドが高くコミュ力のないただカス。
なんだよ自分で言ってて悲しくなるな。
いつも通り誰も俺に話しかけてくることは無い。ただただ今日という時間が過ぎていくのを待つだけだ。
学校を休めば誰かがノートを見せてくれることも無く寝ていても誰も起こしてくれはしない。
そういつもの俺の日常だ。
何もかも変わらない。


涼しい風が扉の隙間から吹いてくる。4月を超えて等々俺も2年生。2年生になってから1ヶ月程過ぎた。
俺の昼休みはいつも通り1人寂しくぼっち飯。そしてぼっち飯を堪能できる場所こそ誰も使わないしほとんど通ることの無い1階の奥にある空き教室。
扉に手をかけるとガラガラと音を立てながら開いていく。
扉が開いた瞬間に俺の視界にはとある色に奪われた。
黒……。
視界はそこから外れない。黒髪のショート。
筒やかな胸を腕で抱き抱えなにか凄いオーラを放ちながら椅子に座っている人物がいた。
どうやら俺はこの人を知っている。大抵の顔は覚えていないのだがこの人物だけはこの学校で有名人だ。
女性と関わりのない俺ですら知っている有名人の彼女は【甘城美葉】。黒いタイツに包まれている美脚に視線が行く。足を交差ししている。ちゃんと着こなされている制服。そしてこの千津川高校の2年生。完璧美少女で学校中の男子生徒から人気を放っている。頭脳もよくまさに理想のヒロイン。
と、言える人物だ。
ギロっと俺の方を見つめてくるいや、睨んでくるが正解なのだろう。

「何か……?」

その声は爽やかで優しい声なんてラブコメあるある展開ではなくとても鋭く非常に冷たい声だった。

「い、いや」

咄嗟に俺は目を逸らした。
てかちょーこえーよ。なんでこんなに睨まれてるの?
てかだいたいなんでこんな所にリア充代表の甘城美葉がいる訳?
どこかカメラ仕込まれてるのか……?
俺の思考は止まらない。これが罰ゲームってやつなのかと当たりをキョロキョロ見回す。カメラを仕込まれているかもしれない。

「何キョロキョロしてんの?」
「な、なんでもないです」

見回す限りカメラは仕込まれていないようだ。これ以上何かすると帰って倍に機嫌を悪くしてしまいそうだ。
黙ってこのまま立ち去ろう。
後ろを振り返り黙ってその場から退散。

「そこで止まりなさい」

​─────耳を刺激するその鋭い声は俺を引き止めた。
その声が聞こえた瞬間背中がゾッと何かが走ったように凍りつく。
物凄い汗をかきながらまたも振り返る。

「あなた名前は?」
「【倉元悠真】です」

咄嗟に名前を聞かれた。即反応してしまい答えてしまった。

「そう。悠真くんね」

何か1人で納得したのか俺を下から上までじっくり満面なく自分の視界に入れてくる。
何か変なところがあったのかニヤリと頬をニヤつかせる。

「あなた見るからに1人でいるようね。ここにご飯を持ってくるってことは当たってるはずだわ」

突然何言い出す。初対面にそこまで言えるのか……。リア充ってこぇ〜。

「は、はぁ」
「ここよく利用するのかしら」
「ま、まぁ。昼休みとかり、利用しますかね」

交差していた足を元に戻し椅子から立ち上がる。立ち上がるとそのままこちらに向かってくる。
俺の前まで来るとその場で足を止める。
足を止めると右手を伸ばし出した。そして伸ばしした右手は何かを掴む。
そう掴んだのは俺のネクタイ。グイッとネクタイを引っ張ると上半身が前に出る。それと同時に左足が1歩前に出る。
微かに匂う甘い匂い。薄ピンク色のプルンプルンした柔らかそうな唇に薄水色の瞳がうるうるとこちらを見つめる。
近い近い近い近い近い近い近い近い!!
あと少しで唇同士が当たりそうだ。心臓の鼓動の音がやけにうるさい。
これが青春ラブコメなのかぁぁぁぁああああ。

「悠真くん私と付き合いなさい」
「は?」

急に何を口走ったのだろう。俺は甘城先輩の言葉を理解出来なかった。それと同時にチャイムが静まり返ったこの空き教室を響き渡らせた。

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