小説 中年おっさんの俺の下に、魔法少女達がやって来て、同棲して色々騒動があったりしつつ、世界を救う話

がおー

9.「ふぅー・・・」

「どうしたの?救世主様?」
「救世主様、何ため息ついてるんですかっ?」
ため息を吐いたら、かけられる心配の声。
昨日まで、一人ぼっちで生活していた僕には欠けられる事も無かった声だ。
それは孤独に日々、社会の荒波に揉まれ生きてきた、僕には、砂漠の中の冷たい清水の様に、心地良い声・・・では無かった。
何故なら、ため息をつく原因が彼女達なんだから。
「明日から、どーするべーって思ってな、仕事も辞めたし。貯金はあるから半年位は生活出来るけど」
「仕事なんて、しなくて良いんですよっ。救世主様はこの世の救世主なんですから、明日からは私達と幸せに暮らすだけで良いんですよ?」
僕の膝の上に座る女神ちゃんは、言った。
あのなあ、君達が居候するとなったら、食費も3倍だぞ、社会の端っこをギリギリしがみついている(しがみついていたか)僕に、優雅に無職生活をする余裕は無い。
うんうん考えこんだが、考えこんでも今後の展望がまるで見えない。
「救世主様、お風呂沸かしておいたよ」
菜野葉ちゃんが風呂場からひょっこり頭を出した。
さっきからすがるが見えないと思っていたら、風呂沸かしてくれていたのか!?
「あ、ああっ、色々有りすぎて、頭痛くなって来た所だった。一息つくのにちょうど良い、有難さん、菜野葉ちゃん」
「ふふっ、どういたしまして♪。ご褒美欲しいな?」
「そう、ご褒美♪」
そう言って菜野葉ちゃんは自分と頭をさしだした。
撫でてやると、菜野葉ちゃんはえへえへ微笑んだのだった。
「じゃあ、風呂・・・、ああ、君達も、同居してしまう事になるのか、こういうのは女の子が先に入るのか?」
「いいよ、いいよ、先に入ってて」
「・・・そうかい?なら、ご好意に甘えまして」
僕は風呂場に入った。
いや、それにしても、二人の少女がこの後、我が家の風呂を使う事が、決定事項になっている。
昨日まで、さもしい会社で働いていて、家では一人寂しくカップ麺をすすっていた中年が一人居ただけの我が家がだ。
明日からは、これが日常になるのか・・・?
そう思うと、嬉しい・・・という感情はあまり沸かず、寧ろ、前途多難さばかりを感じてしまった。
僕、通報されて、警察に捕まりはしないだろうな。
寂しい人生だったが、これといった犯罪もせずに、底辺でひいひい言いながら生きてきた事ぐらいが僕の人生の誇りだぞ?
それすらも失って、年老いた親を悲しませた日には、僕の心臓は潰れてしまうだろう。
そうぶつぶつ考えながら衣服を脱いで、シャワーを浴びる。
暖かいシャワーが、1日溜まった疲れを癒してくれる。
僕はその暖かな癒しの雨に身を委ねる。
はあ、暖かい、暖かいなあ・・・はあ・・・
全ての悩み事もどうでもなる・・・、仕事の事も、あの二人の少女の事も。
「お邪魔しまーす!」「お背中流しに来ましたーっ!」
ガラっと扉が開く音がして、二人の少女の声が聞こえた。
声の方を振り替えると、全裸の少女が二人立っていたのだった。



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