オレ様魔王の異世界無双

月田優魔

圧倒的な戦い

オレはキースと向かい合っていた。
ここは、模擬戦専用のグラウンド。
周りには客席もあり、ちょっとした見せ物になっているようで人が集まっている。
力の差を見せつけるにはいい場所だな。


「よく逃げずに来たじゃねぇか!お前の無様な姿を晒してやるよっ!」


よくもまぁペラペラと喋るものだ。
弱い犬ほどよく吠えるとはまさにこのことか。
オレは呆れて言葉も出ない。
そうしていると、この模擬戦の審判を務める使い魔のカラスがルール説明をする。


「ルールは、ギブアップの宣言もしくは戦闘不能の判断された方が負け。なお、相手を殺してしまう魔法は禁止ということで、双方よろしいですか?」


オレもキースもすぐに承諾する。
キースは早く戦いたくてウズウズしている様子だ。
これからその顔が恐怖に染まることも知らずにバカな奴だ。


「それでは、試合始めっ!」


開始早々キースが仕掛けてくる。


「これでも食らえっ!《火魔法フレイム》」


火柱がオレに襲いかかってくる。
こんな攻撃避けるまでもない。
火柱はオレの魔法耐性の鎧に防がれて体に当たった瞬間に霧散する。


「どうした、これで終わりか?」


「ンな訳ねぇだろ、今のは様子見だ。今度は少し本気を出しーーーーー」


「いいからとっとと全力でかかってこい。雑魚の踊りに付き合うほど暇ではないのだ」


「っ!!」


オレはキースの言葉を遮り、全力を出すよう挑発する。
瞳にはメラメラと怒りの炎が宿っていく。


「雑魚だと!この俺をっ…もう許さねぇっ!一瞬でカタをつけてやる」


キースは空に手をかざす。
すると手のひらから黒い炎が現れどんどん大きくなる。


「ハッハッハッ、これが俺の最強の魔法だ!一瞬で消し炭にしてやるっ!」


オレは表情一つ変えず眺めている。
黒い炎はかなりの大きさになり渦巻いている。
それでもオレは冷めた眼で冷ややかに見つめる。


「食らえっ!火炎魔法《炎獄咆哮ガデム


黒い炎が火柱と化して向かってくる。
完全にルール違反の威力の魔法だ。
しかしオレは身動き一つせず突っ立っていた。
黒い炎がオレに直撃し爆発する。


「はぁっはぁっ……どうだ、クズ野郎」


キースは息を切らしながら立ち昇る炎の中に向かってそう言った。
しかし炎のなかに人影が見える。


「どうした、これで終わりか?」


炎の中からそう聞こえると、オレが爆炎の中から現れる。


「ば、ばかな!?炎獄咆哮ガデムの直撃を受けて無傷だとっ!?」


オレは変わらず冷ややかに見つめる。
その瞳は退屈そうな色をしていた。


「この程度の攻撃でオレが傷つくわけがないだろう。
今ならギブアップすれば痛い目にあわずにすむぞ」


オレはそう忠告する。


「だ、誰がギブアップなんかするかよ!テメェなんかには死んでもギブアップしねぇ!」


ギブアップという選択肢はない、そう言い切ってくる。


「そうか、なら仕方ない。二度とオレに近づかないように痛い目にあってもらう」


そう言うと、オレは息切れしてしゃがんでいるキースに近づく。





言霊に魔力を込めてキースを地面に這いつくばらせる。


「なにをするつもりだ?」


キースが聞いてくる。
次の瞬間、キースの腕を踏みつけ骨を折る。


「ぐあァァァァァァァァ!!」


悲鳴がグラウンド中に響き渡る。


「喚くな、今治してやる。《治癒魔法ヒール》」


折れた腕が元どおりに治る。
そしてまた腕を踏みつけ骨を折る。


「ぐあァァァァァァァァ!!」


「これからギブアップするまでこれを続ける。ルールでは殺さなければいいみたいだから、死なない程度に手加減する。安心していいぞ」


オレは優しく声をかけた。
キースの顔は絶望に染まっていた。
観客席にいる人間も皆恐怖に染まった顔をしている。


「ぐあァァァァ!!ぐあァァァァ!!ぐあァァァァ」


何度も悲鳴が響き渡る。
折っては治し、折っては治し、折っては治しーーーーーー
ギブアップするまで永遠にこれを続ける。


「き、貴様…よくもそんな非道な真似が、ぐあァァァァ」


5回目ぐらいで話しかけてきたが無視した。
治した後にもう一度聞いてみる。


「どうだ、ギブアップする気になったか?」


「だ、誰が、ぐあァァァァ」


ギブアップする気はなさそうなので続ける。
20回目ぐらいで、急に話しかけてくる。


「ま、待ってくぐあァァァァァァァァ」


「すまぬ、足が滑った」


骨を治した後にもう一度聞いてみる。


「どうした?」


悔しそうな顔で呟く。


「……ま、参った……ギブアップする…」


キースがギブアップを宣言する。


「キース選手ギブアップにより、ガイア選手の勝利です!」


使い魔が試合終了を宣言する。
オレはキースに手を差し出す。


「これからはクラスメイトとしてよろしく頼むぞ」


オレの顔を見るなり後ずさっていく。


「握手しようとしただけではないか」


その顔は恐怖に染まっていた。
少しやりすぎたか?


「お、覚えてろよっ!」


捨て台詞を残してキースは逃げていった。


「おい、アイツ圧倒的すぎる。何者だよ」


観客席からはそんな声が聞こえてきた。
注目の視線を浴びるガイア。
その視線の中には教師の視線もあった。











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