元魔王の人間生活
絡み
「魔法には基本となる四属性、火・水・風・土の他にもそれらを応用した氷・炎・毒などに、無属性の振動・硬化・加速など様々な魔法があります。それらの魔法を状況によったら使い分ける知識が魔法使いには求められます。魔法を使うことがあっても魔法に使われることがあってはならないのです」
今日の授業も魔法の基本的な復習だった。知っていることだらけだったがガゼルは大人しく授業を聞いていた。
「この学院では魔法の速度、規模、強度を重視することになっています。皆さんも優れた魔法が使えるように頑張りましょう」
授業が終わり放課後になる。部活に行く人やすぐに帰る人、友達と喋っている人など様々である。
「ガゼルさん。一緒に帰りませんか?」
ガゼルがミアから放課後デート?のお誘いを受ける。ミアはこの学年でも一二を争うほどの可愛い女の子で普通の男子ならば断る者はいないだろう。周りから嫉妬の視線を向けられる。
「悪い。今日はちょっと用事があるんだ」
ガゼルは特に用事はなかったが嘘をついて一人で帰ることにした。こともあろうに誘いを断ったガゼルに周りから嫉妬を超えた怒りの炎の視線を向けられる。
「そうですか……。分かりました」
ミアはしょんぼりして一人で教室を出ていく。ガゼルもミアの後を追うように教室を出る。
ガゼルは人通りの少ない道を一人で歩いていた。すると前から男が近づいてきて道を塞ぐ。後ろからも男たちが逃げられないように道を塞ぐ。全部で10人はいる。
(やっぱりきたな)
ガゼルは今日この場所で絡まれることが分かっていた。さっきの嫉妬の視線を向けられた時に他とは違う視線を感じていたからだ。その瞳には明確な悪意が込められていた。だから用事もないのにミアの誘いを断ったのだ。ミアを巻き込むわけにはいかなかった。
男たちの群集をかき分けて一人の男が前にでる。
「やぁ。元気そうだね、補欠くん」
その人物は何を隠そうミハエル・スタベストだった。男たちの中にも数人知った顔が混ざっている。ミハエルの連れだった男たちだ。
「何か用か?」
ガゼルはこれから何が起きるのか薄々分かっていながら確認のためにあえて訊ねる。
「君のような生意気な駄犬にはお仕置きが必要だと思うんだが、君はそう思わないかい?」
「何が言いたい?」
二人の視線が交錯し合い火花を散らす。周りの連中が威圧的に距離を詰めてくる。
「ここで君には痛い目にあってもらう」
「これで正当防衛成立だな」
絶対不利な状況でもガゼルの余裕は崩れない。ガゼルの物言いにイラッとしたミハエルはすぐに攻撃命令を下す。
「やれ!」
周りの10人が一斉に魔法を放とうと手をかざす。
しかし、魔法陣が浮かび上がったと思ったら霧散する。
「ん?」
異変に気付いた連中は何度も魔法を発動しようと試みる。
しかし誰ひとりとして魔法が発動しなかった。
「くそっ!なんで魔法が発動しねぇ!?」
「どうなってんだこれは!?」
男たちが言葉を吐き捨てる。 
連中の魔法が発動しない様子を見ていたミハエルは困惑の表情を浮かべ始める。
「もう魔法は発動しない」
ガゼルが全員に聞こえるように呟く。
「《領域魔法》魔力フィールド。高密度の魔力を広範囲に展開し術者以外の魔法発動を阻害する魔法」
「な………んだと……?」
誰か一人が驚愕の声を漏らす。
膨大な魔力量がなければ使うことができず、使える人間はほとんどいない。そのため一般には知られていない魔法である。
だが、そのことまで丁寧に説明する気はガゼルにはなかった。
「ッ!!!魔法が無理なら殴り倒せ!!」
周りの連中が一斉に殴りかかってくる。
ガゼルは一番近くにいた男の攻撃をかわすと、髪の毛を掴み自分の方へ引き体勢を崩し、顔面にひざ蹴りを叩き込む。
鼻血を吹き出し崩れ落ちる。
「野郎ッ!!!!」
男たちが次々と攻撃してくる。
並みの相手ならばこれだけの数がいれば倒せただろう。
しかし相手が悪かった。
男たちが相手にしているのは仮にも元魔王。
戦いの中で生きてきた戦場を駆ける悪魔。
肉弾戦の腕も並み大抵ではなかった。
一発の攻撃ももらわず10人全員を沈黙させる。
その時間は1分にも満たなかった。
あたりを静寂が包む。
ガゼルがミハエルの顔を見据える。
「あとはお前だけだな」
冷や汗がミハエルの頰を伝う。
「ッ!!な、舐めるな!!」
ミハエルがガゼルに勢いよく殴りかかる。
魔法を使おうとしなかったのは正しかったと言えるだろう。
しかし、最善ではなかった。
最善を尽くすのならば彼は逃げるべきだった。
しかし、彼のプライドがそれを許さなかった。
ガゼルはミハエルの攻撃をかわすと、みぞおちに拳をのめり込ませる。
「ッ!!?」
腹部を抱えて膝から崩れ落ちるミハエル。
ちょうど掴みやすい位置にある髪をわしづかみにし、持ち上げる。
ミハエルの足が地面から離れていく。
「アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
激痛でミハエルが叫び狂う。
「許してくれとか言わないでくれよ」
ミハエルの顔が引きつる。
その表情は恐怖の色で染まっていた。
ガゼルはミハエルの指をつまむと容赦なく骨を折った。
「ヴゥゥァァアアアアアアアアアアアア!!!!」
再び悲鳴が人通りのない路地に響く。
掴んでいた髪を離すとミハエルは指を抱えてうずくまった。
「今日はこれぐらいにしといてやるが、今度絡んできたら容赦はしない」
ガゼルはそのまま倒れている人たちを横目に宿に帰った。
今日の授業も魔法の基本的な復習だった。知っていることだらけだったがガゼルは大人しく授業を聞いていた。
「この学院では魔法の速度、規模、強度を重視することになっています。皆さんも優れた魔法が使えるように頑張りましょう」
授業が終わり放課後になる。部活に行く人やすぐに帰る人、友達と喋っている人など様々である。
「ガゼルさん。一緒に帰りませんか?」
ガゼルがミアから放課後デート?のお誘いを受ける。ミアはこの学年でも一二を争うほどの可愛い女の子で普通の男子ならば断る者はいないだろう。周りから嫉妬の視線を向けられる。
「悪い。今日はちょっと用事があるんだ」
ガゼルは特に用事はなかったが嘘をついて一人で帰ることにした。こともあろうに誘いを断ったガゼルに周りから嫉妬を超えた怒りの炎の視線を向けられる。
「そうですか……。分かりました」
ミアはしょんぼりして一人で教室を出ていく。ガゼルもミアの後を追うように教室を出る。
ガゼルは人通りの少ない道を一人で歩いていた。すると前から男が近づいてきて道を塞ぐ。後ろからも男たちが逃げられないように道を塞ぐ。全部で10人はいる。
(やっぱりきたな)
ガゼルは今日この場所で絡まれることが分かっていた。さっきの嫉妬の視線を向けられた時に他とは違う視線を感じていたからだ。その瞳には明確な悪意が込められていた。だから用事もないのにミアの誘いを断ったのだ。ミアを巻き込むわけにはいかなかった。
男たちの群集をかき分けて一人の男が前にでる。
「やぁ。元気そうだね、補欠くん」
その人物は何を隠そうミハエル・スタベストだった。男たちの中にも数人知った顔が混ざっている。ミハエルの連れだった男たちだ。
「何か用か?」
ガゼルはこれから何が起きるのか薄々分かっていながら確認のためにあえて訊ねる。
「君のような生意気な駄犬にはお仕置きが必要だと思うんだが、君はそう思わないかい?」
「何が言いたい?」
二人の視線が交錯し合い火花を散らす。周りの連中が威圧的に距離を詰めてくる。
「ここで君には痛い目にあってもらう」
「これで正当防衛成立だな」
絶対不利な状況でもガゼルの余裕は崩れない。ガゼルの物言いにイラッとしたミハエルはすぐに攻撃命令を下す。
「やれ!」
周りの10人が一斉に魔法を放とうと手をかざす。
しかし、魔法陣が浮かび上がったと思ったら霧散する。
「ん?」
異変に気付いた連中は何度も魔法を発動しようと試みる。
しかし誰ひとりとして魔法が発動しなかった。
「くそっ!なんで魔法が発動しねぇ!?」
「どうなってんだこれは!?」
男たちが言葉を吐き捨てる。 
連中の魔法が発動しない様子を見ていたミハエルは困惑の表情を浮かべ始める。
「もう魔法は発動しない」
ガゼルが全員に聞こえるように呟く。
「《領域魔法》魔力フィールド。高密度の魔力を広範囲に展開し術者以外の魔法発動を阻害する魔法」
「な………んだと……?」
誰か一人が驚愕の声を漏らす。
膨大な魔力量がなければ使うことができず、使える人間はほとんどいない。そのため一般には知られていない魔法である。
だが、そのことまで丁寧に説明する気はガゼルにはなかった。
「ッ!!!魔法が無理なら殴り倒せ!!」
周りの連中が一斉に殴りかかってくる。
ガゼルは一番近くにいた男の攻撃をかわすと、髪の毛を掴み自分の方へ引き体勢を崩し、顔面にひざ蹴りを叩き込む。
鼻血を吹き出し崩れ落ちる。
「野郎ッ!!!!」
男たちが次々と攻撃してくる。
並みの相手ならばこれだけの数がいれば倒せただろう。
しかし相手が悪かった。
男たちが相手にしているのは仮にも元魔王。
戦いの中で生きてきた戦場を駆ける悪魔。
肉弾戦の腕も並み大抵ではなかった。
一発の攻撃ももらわず10人全員を沈黙させる。
その時間は1分にも満たなかった。
あたりを静寂が包む。
ガゼルがミハエルの顔を見据える。
「あとはお前だけだな」
冷や汗がミハエルの頰を伝う。
「ッ!!な、舐めるな!!」
ミハエルがガゼルに勢いよく殴りかかる。
魔法を使おうとしなかったのは正しかったと言えるだろう。
しかし、最善ではなかった。
最善を尽くすのならば彼は逃げるべきだった。
しかし、彼のプライドがそれを許さなかった。
ガゼルはミハエルの攻撃をかわすと、みぞおちに拳をのめり込ませる。
「ッ!!?」
腹部を抱えて膝から崩れ落ちるミハエル。
ちょうど掴みやすい位置にある髪をわしづかみにし、持ち上げる。
ミハエルの足が地面から離れていく。
「アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
激痛でミハエルが叫び狂う。
「許してくれとか言わないでくれよ」
ミハエルの顔が引きつる。
その表情は恐怖の色で染まっていた。
ガゼルはミハエルの指をつまむと容赦なく骨を折った。
「ヴゥゥァァアアアアアアアアアアアア!!!!」
再び悲鳴が人通りのない路地に響く。
掴んでいた髪を離すとミハエルは指を抱えてうずくまった。
「今日はこれぐらいにしといてやるが、今度絡んできたら容赦はしない」
ガゼルはそのまま倒れている人たちを横目に宿に帰った。
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