頭脳派ゲーム世界の黒幕

月田優魔

放課後

 放課後。生徒たちが帰る準備をし始める。
 入学初日の放課後とあって、学校の中を見て回ったり、部活を見学したりと、生徒たちの様子は様々である。
 特に用事もないので家に帰ろうとすると、


「夜神くん。一緒に帰ろうよ」


 樟葉に声をかけられる。
 断る理由もないので承諾すると、樟葉は嬉しそうにオレの横に並ぶ。


「ありがとう。一緒に帰ってくれて。七瀬さんも誘ったんだけど断られちゃった」


 樟葉は七瀬と友達になることを諦めていない。今も努力を続けている。


「樟葉も大変だな。七瀬と仲良くなるのは相当難しいと思うぞ」


「私もそう思うけど、やっぱり友達は一人でも多い方が楽しいよ」


 友達はある程度いればいいと思ってるオレとは正反対の考え方だ。
 しかし、それが樟葉の良いところなんだろう。
 少し危うい気もするがな。


「それで、一緒に帰るっていうのは会話しながら家まで帰るってことでいいのか?」


「ちょっとお店に寄って帰らない?夜神くんと色々お話したいし」


「用事もないし、大丈夫だ」


 学園の敷地を出たオレたちは、帰路の途中にある喫茶店に入った。シックな感じの内装で心が落ち着く。店内は穏やかな音楽が流れており、ゆったりした時間が流れている。


「学校までの途中にこんな店があるなんて知らなかったな」


「そうだよね。良いお店発掘しちゃったかも」


 ウェイトレスが来てオレはコーヒー、樟葉はミックスジュースを頼む。


「樟葉は一人暮らししてるのか?」


 オレから話題を振る。いつも樟葉から振ってもらうのはなんだか忍びない。


「うん。私はこの近くの寮に住んでるの。この島の学生だったら家賃も無料で結構良いところだよ。夜神くんは?」


「オレも一人暮らしだ。この近くだから多分樟葉と同じところ」


 この島は、一つの学区に学園が一つ、寮が三つずつ設置されている。寮が三つなのは学年が三つあるからだ。一年生用、二年生用、三年生用の寮がそれぞれにある。


「希望ヶ丘学園の一年生の一人暮らしはみんな同じ寮だよね。うっかりしてた。家賃も無料だし、変わったことだらけで戸惑っちゃうよ」


「オレもだ。島で使える電子マネーも支給されてたしな。オレは1ptのFランクだから100円だけだったけど、樟葉はどれぐらいだったんだ?」


「私は100ptのEランクで、1万円だったよ」


 このことから、1pt=100円支給されることが分かる。


「100円だけって、大丈夫なの?そのお金で一ヶ月間過ごさなくちゃいけないんだよ?」


「大丈夫だ。この島では本土で使われている現金も使うことができる。そっちでなんとかするさ」


 とはいえ実際問題厳しいところである。この島では実力がものをいう。つまり力がなければ何もできないということ。学力はもちろんのこと、身体能力や財力なんかも関係してくる。


「もしかしたら、この島はとんでもなく厳しい場所なのかもしれないな。寮も無料だし、学食も無料のものがあったから死ぬことはないだろうが、生きるだけでも大変だ」


 まさに、生き残りをかけたサバイバルゲームだ。


「でも、みんなで力を合わせればきっと乗り越えられるよ」


「…………そうだな」


 そう答えることしかできなかった。

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