ツイートピア
ツイートピア1146~1166
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ユウタ「……ハア、ハア、急がないと」 朝、8時30分。ユウタ少年は呟音小学校に向かって走っていた。通っている学校は違う学区なのだが、ノルコにGPTLを届けるために、後で叱られることを覚悟で向かっているのだ。ユウタ「ホウ兄ちゃん……必ずとどけるからね!」
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そのころ、ノルコはいつもより早く登校して、校長室の机にスタンバイしていた。国会は9時に開会する。ノルコ(ふむふむ……) ノルコはWEB新聞に目を通しつつ、お茶をひとすすり。ノルコ(もう可決したようなものなの……) 政治欄の記事によれば、トイレ法は賛成派が圧倒的優位であるらしい。
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ノルコ(ちゃんと反対ですって記者さんに言ったんだけどな) ノルコも政治記者に質問されていて、その時はっきりと反対した。理由は「美少女はウ○コしないから」というもの。なら別にいいんじゃない? という記者のツッコミに、ノルコはゲンのPCを使ってこう言ったのだ。ゲン「デリカシーって大事です!」
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散々悩んだ末の、ノルコなりの結論だった。ノルコは何があってもこの持論を貫き通す決意を固めていた。ノルコ(……ん? DMだ!) 誰からか? ユウタ《ノルコお姉ちゃん、今どこ?! 渡したいものがあるんだ!》 なんだろう? そう思いつつノルコは、校長室にいることをPCで教えた。
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しばらくして、校長室の窓を叩く音が聞こえた。ノルコが窓際に向かうと、外にユウタがいた。ユウタ《あけてー!》 言われるまま窓を開ける。校長先生とお母さんは、おりよく席を外してる。ユウタ《お姉ちゃんこれ、ホウ兄ちゃんから預かってきたんだ》 手渡されたGPTLをみて、ノルコは目をパチクリさせた。
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これを見ろと? ノルコは視線でそう伝える。ユウタ《うん、何だかとっても大事なことみたいなんだ》 ユウタの真剣な眼差しを確認したノルコは『ウム』と大げさに頷いた。それを見てホッとしたらしいユウタは、駆け足でその場をさっていった。ノルコ(……たしか学区違ったはず、怒られないといいけど)
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お母さん達が戻ってきたので、ノルコはあわててGPTLをランドセルにしまった。コウチョウ「さあ始まるよノルコ君」 ヨコ「いよいよね」 ノルコは本革の椅子に改めて座りなおすと、顔をピシャンと叩いて気合を入れた。アナウンス【それではこれより、トイレ法案衆院議会を開会いたします】
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クサヨシ「ガンバール、発進!」 世界中のガンバール好きが見守るなか、ガンバールのロケットスターターに火がついた。『うおおおおおおお!!』 全世界がどよめく中、飛行体勢のガンバールが滑走路の上を力強く加速していく。マッハ0.4まで加速し、離陸、ついでメインエンジンが点火される。
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イイズカ「よし、まずはいい出だしだ」 アフレル「初めてなのに、スムーズに行きましたね!」 ハッブル「メカニズム自体はポピュラーだからね」 アフレル達は管制室の一角につき、ガンバールの腕の動きをモニターしていた。イイズカ「さ、ここからが本番だぞ」
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三人は目で合図をとった。そして管制室の中ほどに仁王立ちしているクサヨシ司令官にむかってブロックサインを送る。クサヨシ「ん、んー」 クサヨシは襟を直すサインを返す。GOサインだ。アフレル(よし……) アフレルはポケットの中の機械に触れると、そっとスイッチを入れた。
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ガンバールの右前腕部に取り付けられたレーダー波長が、クサヨシの「エイリアン発見器」と同期する。これにより、コッソリとエイリアンを捜索して、見つけ出すことができる。アフレル(ニセモノのエイリアンは用意してあるんだけど……) クサヨシ(実は本当に探してましたってオチだ)
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そう。誰もこのミッションが「宇宙人捜索」を目的としているとは思っていないのだ。みんなクサヨシとその一味が画策した、壮大なサプライズパーティーだと思っている。ミギノウエとの接触に成功したことにより、アフレル達の目的は『エイリアンは見つけるが、それを人類に信じさせない』ということに変更されたのだ。
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4人はもうすでに、エイリアンと遭遇を果たした。そしてそのことを一生の秘密にすると彼らに約束したのだ。アフレル(まだ、僕達は、彼らと遭遇するべきじゃない……) 大変な秘密を抱え込んでしまったとアフレルは思った。と、同時に。生きているうちに宇宙人に会えたことを嬉しくも思っていた。
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全世界を巻き込んだこのサプライズに成功すれば、人類は今しばらくは宇宙人の存在を忘れられるだろう。空想上のものとして認識してくれるだろう。アフレル(……あとは) それは最後の気がかりだった。アフレル(……ノルコか) 今、自分の娘に人類の未来がかかっている。父は祈るような思いでいた。
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バーチャル国会議事堂に、ミタ・セイの声が響く。彼はいま、トイレ法の意義についての演説を行っているところだ。セイ「数多くの要望があるにも関わらず! トイレのみTLの設置を禁じている現在の法体制は、あきらかに不適切なものであると言わざるを得ません!」 セイが話しを区切る度に、賛成派から拍手が巻き起こる。
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セイ「我々は、進展し続ける情報社会において、安心安全な生活を場を守り続けていかなくてはなりません! 本法案が、そのための確実な足がかりとなることを、ここに強く信じるものであります!」
セイは演説を終えると、鳴り止まない拍手の中、ゆっくりと席についた。
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続いて、各派の代表者による代表質問が行われる。まずは賛成派からだ。代表のミタライ氏の姿が、バーチャル国会議事堂の壇上に表示される。ミタライ「おほんっ、では賛成派を代表しまして、いくつか質問を述べさせてもらいます。まず、トイレ法の中身が、人々のプライバシーに与える影響について……」
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ノルコ(……ねむい) 賛成派の代表質問は、もうすでに何度も議論されたことを、もう一度質問しなおしているに過ぎなかった。そのままミタライ氏はたっぷり30分は演説を続けた。そしてセイは、それに対してわかりきっている返答を、これまたたっぷり30分はかけて行ったのだ。
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ノルコは何度も眠りの誘惑にかられたが、仮にも国会議員というプライドがそれを跳ね除けた。賛成派の意図はあきらかで、トイレ法がいかに完璧に考えつくされたものであるか、というアピールに過ぎなかった。ノルコ(反論の余地がない!) そう、反対派にとっては、もうロクな質問が残されていない状況が作り出されたのだ。
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どうしてそんなにこの法律を通したいの? ノルコはその場で叫びたい衝動にかられた。ノルコ(お外で自由にトイレにいけなくなってしまうよ……) 賛成派の意見を何度聞いても、ノルコにとってその不安は払拭しきれないものだった。しかし、仮に声を上げたとしても、すぐさま論破されてしまうだろう。
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続いて反対派の代表質問が始まった。代表者はトガクレ氏。銀縁メガネがキラリと光る、いかにも知性的な中年男性だった。ハッと息を飲むような演説を、ノルコは期待した。トガクレ「では、ご質問いたします。まずはミタ・セイ氏の『トイレ観』についてお尋ねします」 トイレ観……その質問の切り口に、ノルコは胸が高鳴った。
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