ツイートピア

ナガハシ

ツイートピア996~1014

(996)
 食事の後、ヨコは後片付けをしながら、アフレルにDMを送った。ヨコ《ねえあなた。何だかノルコのこと気にかけ過ぎじゃない? あれじゃノルコも機嫌悪くするわよ》 DMの返事はしばらくしてから来た。アフレル《そ、そうかな……気をつけるよ》 そっけない内容だった。ヨコは不審に思った。


(997)
 ヨコ《ねえ。私の女の勘が教えてるんだけど、何か隠し事してない?》 そのDMを受け取った時、アフレルはガンバールの前腕部センサーに細工をしている所だった。アフレル《ええ? そんなことないよ……ちょっと仕事思い出してさ。手が離せなくて、ごめん》 ヨコはひとまず納得しておいた。


(998)
 クサヨシ「アフレル君……どうだい?」 アフレル「ええ……もう終わります」 アフレルがいじっているのはガンバール前腕部の照準用レーダーだ。エイリアンに鉄拳制裁を食らわす時に必要になる。そのレーダーの波長を、クサヨシの端末で操作できるように改造しているのだ。


(999)
 アフレル「これで……見えない敵をあぶりだせるんですね。そちらの首尾は上手くいきそうですか?」 クサヨシ「ああ、上層部はまんまと私の口車にのってくれたよ……」 アフレル「それはそれは……」 クサヨシは研究基地のお偉い方に、『エイリアンを発見したという嘘』をついたのだ。本格的な実証データを示した上で。


(1000)
 基本的にいたずら好きのお偉い方は、それをクサヨシ流のサプライズだと見抜き、それに乗った。偉い人1「そ、それは大変だクサヨシ君! 可及的速やかにガンバールを発進させたまえ!」 偉い人2「なんとしてでも人類の意地と誇りを見せ付けるのだ!」 クサヨシ「はい、直ちに」 そんなクサヨシを試すように、偉い人達はニヤニヤと笑った。


(1001)
 アフレル「ちょっと重いのを取り付けるんで、手伝ってもらえますか?」 クサヨシ「ああ、まかせろ」 重量が60kgくらいある増幅器を二人で持ち上げる。本当はクレーンを使いたいところだが、今は隠密行動中だ。暗闇の中で、非常灯の明かりだけをたよりに増幅器を運ぶ。クサヨシ「む……これはきついな」


(1002)
 すると不意に、増幅器が軽くなった。アフレル「え?!」 機械の陰から人が出てきて、増幅器を持ち上げたのだ。クサヨシ「お前達……」 イイズカ「水臭いですよ、二人とも」 ハッブル「なーに二人でエンジョイしてるノネ?」 クサヨシとアフレルは互いに顔を見合わせると、同時に笑いだした。


(1003)
 アフレル「ばれちゃった」 クサヨシ「しかしこれは、ガンバール初出撃の裏で進行される、超重要な極秘ミッションだ。我々は人類の未来に対し、計り知れない責任を持つことになる。君達にはその覚悟があるのかね?」 イイズカ「何のために僕らがここで働いてると思ってるんです?」 ハッブル「オフコースに決まってるダロ?」


(1004)
 二人では中々はかどらなかった仕事も、四人でやるとスムーズに進んだ。4人はその夜のうちにレーダー装置の取り付けを終えた。その後、ハッブルから提案があった。ハッブル「このレーダーじゃ、エイリアンの全部は暴けないね」 クサヨシ「一矢報いられればよいのだ」 ハッブル「もっとスゴい手があるんだよ?」


(1005)
 クサヨシ「ほう」 するとハッブルは太平洋上の海図を空間投影した。ハッブル「Trans Pacific VLBI Network」 通称TPVN。それは環太平洋地域に設置された長基軸線干渉電波望遠鏡のことだ。南北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、日本、ロシア。計32機の電波望遠鏡が太平洋を取り囲んでいる。


(1006)
 アフレル「ま、まさか……この電波望遠鏡を使ってエイリアンを可視化すると」 ハッブル「フフフ、そのトーリ」 イイズカ「となると、国際天文学協会をも巻き込む話になるな」 クサヨシ「私とて、流石にそこまでは手が回らないぞ?」 ハッブル「くくく、パパの友達がその理事長でね」 三人「ええー?」


(1007) 
 日が明ける頃には、作戦の内容がほぼ決まった。環太平洋電波望遠鏡でエイリアンを可視化するためには、その観測圏内にエイリアンを誘導しなければならない。さらに、多面照射で全貌を可視化するためには、宇宙空間まで上昇しなければならない。クサヨシ「しかし、そこまで達成する必要も実はない」


(1008)
 ガンバールの目的は、地球侵略を企むエイリアンに一矢むくいることだ。ノルコにちょっかいを出しているミギノウエは、おそらくエイリアン達が作った実体端末か、すでに洗脳支配した地球人かのどちらかだろう。そのミギノウエに対して何からのアクションを起こせば、それだけでもガンバールの目的は一応達成できることになる。


(1009)
 クサヨシ「まずは、ミギノウエに直接会って正体を暴く。これをミニマム・ミッション(最低限の達成目標)とする」 そしてそのミッションを任せられるのは彼しかいない。アフレル「僕が明日、ご挨拶に向かいますよ」 イイズカ「エイリアン漬けを持っていくといい」 ハッブル「いいイヤがらせダ!」


(1010)
 クサヨシ「次に、ガンバールを出撃させ、無事に太平洋を一周して帰ってくる。これをフル・ミッション(達成目標の完遂)とする」 ガンバールは未だ一度も出撃したことがない。無事行って帰ってくることが出来れば、それはそれで凄いことである。クサヨシ「エイリアンが純エネルギー体として遍在しているなら、痕跡くらいは見つかるはずだ」


(1011)
 クサヨシ「最後に、可能であればガンバールでエイリアン本体を鉄拳制裁する。そして、TPVNを使ってエイリアンの全貌を可視化し、人類にその存在を知らしめる。これをエクストラ・ミッション(ついでの達成目標)とする」 イイズカ「奴らがコソコソできないようにしてやるってわけだ」


(1012)
 クサヨシ「が、このエクストラ・ミッションは困難を極めるだろう。エイリアンを発見した上で、太平洋上の50km程度の位置にまで誘導しなければならない」 アフレル「仮にそれが出来たとしても、現れたエイリアンをみんなが信じるかって問題もありますしね」 イイズカ「壮大な悪戯と思われるのがオチかもな」


(1013)
 ハッブル「ま、それでもいいんジャネーノ?」 クサヨシ「いずれにしろ、エイリアンにとっては痛烈なメッセージになるさ……。我々は、我々自身の主権を守るために、彼らの正体を暴くのだ」 そういってクサヨシは腕時計を見た。朝の5時を回るところだ。クサヨシ「そろそろみんな、ログインした方がいい」


(1014)
 4人はそれぞれ耳たぶを長クリックし、バイオツイッターにログインした。4人だけの孤独な場所が、瞬時にして世界中のツイートで満たされる賑やかな場所になった。イイズカ「……なんでログオフしてたのかって質問がさっそく」 アフレル「どうしましょ」 クサヨシ「アッー! なことをしていたとでも言っておけ」 三人は口をそろえていった。三人「それはいやです!」





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