ガチ百合ハーレム戦記
来襲、漆黒の竜
――グルオオオーン!
屋敷の外に出ると、腹の底をゆさぶるような咆哮が響いてきた。
「おお本当だ、でけえ!」
空の一角を覆いつくすほどの竜が、漆黒の翼を羽ばたかせながら街の上空を旋回している。
「あんなの大きいものは見たこと無いわ……」
「ナイトメア級のドラゴンじゃ! スノーフルの歴史資料にたまに出てくるのだ!」
「うわわわ……どうなっちゃうんですか?」
一行は成す術もなくおろおろする。
竜は上空を雄大に飛びまわっているが、下りてくる様子はない。
「下手に刺激せん方がよさそうじゃな。ワシは迎撃隊の指揮を取りに行く。お客人方は屋敷の地下に隠れておってくれ」
と言ってロレンは行こうとするが。
「水臭いぜおっちゃん」
リーンはその肩を止めて言う。
「こういう時こそ勇者の出番ってもんだ!」
「だがその剣ではどうにもなるまい?」
「いいや、使えないことはないんだぜ」
と言ってリーンは不敵に笑う。
「まさかリーン……、そんな無茶よ! その剣では戦えないわ!」
「いざとなったらやるしかないんだぜ?」
「でも!」
――グルオオオーン!
空を飛び回っていた竜の動きが止まった。
空中で静止した状態で、リーン達の姿を見下ろしてくる。
「どうやらやる気みたいだな」
「ともあれ、出来ることをせねば。メイリーよ、手伝ってくれ」
「はい、おじさま。リーン、くれぐれも無茶をしないでね」
ロレンとメイリーは、大型弩砲が並んでた場所へ向かって走っていった。
「どうするんだリーン」
バルザーが問う。
「あれを倒すのは、流石に無理だと思うが」
「まあ、そうだなー」
リーンはその場で竜を見上げる。
すると、その真っ黒な瞳と目が合った。
「うーん、それにてもデカイな」
「ああ。オレもあんなのは初めてみるぞ」
「襲われたらひとたまりもありません……」
「そうだな、ひとたまりもねえ」
まったく倒すあてもないリーンだったが、それでもなぜか落ち着いていた。
そもそも、人間に憧れてやってくる魔物が、人の住む街を壊したりするものだろうか。
「とりあえず様子をみよう」
そう言うとリーンは、その場にどっかりと腰を下ろした。
* * *
街の中は意外にも平穏だった。
ある程度大きな家には必ず地下室がある。
一般市民は、すでにそこに退避していた。
赤色と灰色のローブを纏った魔術師が、防壁の四隅に建っている塔へ向かう。
大型弩砲の部隊も、既に迎撃準備を終えていた。
そして、空中に鎮座する竜との睨み合いになっていた。
「みなさん、なれておられるのですね」
エルレンが感心したように言う。
「こういうときこそ、慌てずゆっくりだぜ」
リーンは座ったまま腕を組んで空を見上げる。
そして、あの竜が何を考えているのかを考えた。
「あいつは一体何がしたいんだろうな」
「さて……、ドラゴンは滅多に人間界に出てこない魔物だ。見当もつかん」
「そうなのか、滅多に出てこないのか」
リーンはさらに首を捻る。
魔物は基本的に、人間に憧れている。
だが、あの巨大な竜の雄々しい姿を見ていると、あんな立派な魔物が人間のような小さい生き物に憧れるとはどうしても思えなかった。
「うーん、わからねえな」
滅多に人間界に出てこない魔物が、こうして人間界にやってきているのだから、そこには何かしらの理由があるはずだ。
そうリーンは考えていた。
「ドラゴンって、頭いいんだよな?」
「少なくとも、暗黒トカゲよりはな」
そうしてリーンが首を捻っていると、ついに竜が動き出した。
「む、動いたぞ!」
「メイリーさん達が行った方に下りていきます!」
リーンはすかさず立ち上がる。
「しゃあねえ、行って来るぜ」
「まてっ、無茶だ!」
「無茶なら押し通すまでだ!」
その時、降下してくる竜めがけて、弩砲の一斉射が始まった。
――バババババ!
弩砲の鋼バネが弾ける音がこだまして、極太の矢が飛んでいく。
だが、その矢は全て岩のような竜の皮膚に弾かれてしまう。
「バルザー、お前はここに残ってエルレンを守ってくれ」
「どうしてもいくのか。もう知らんぞ!」
「なんだ、心配してくれてるのか?」
「むぐっ……、そういうわけではない! オレはただ依頼主を守るという職務に忠実なだけだ」
「へへっ、お前のそういう嘘つけないところがオレは好きだぜ」
「だから違うと言っている……! ええい、行くならさっさと行け!」
「おうよ! 生きて帰ってこれたら抱きしめてくれよな!」
そういい残してリーンは走って行ってしまった。
「行っちまいやがった……」
そこにさらに、大型弩砲の一斉射が始まる。
――ババババババ!
無数の極太の矢が、今度はあらぬ方向に飛んでいった。
「どこを狙っているんだ?」
だがその矢は、途中で折れ曲がるようにして飛ぶ方向を変えた。
「魔弾か!」
それは魔力を注ぎ込まれた矢だった。
軌道を変えた矢は、その全てが竜の側頭部、主にその眼球を狙って飛んで行く。
――ギャオオオオン!
「バルザーさん! 効いてます!」
「ああ、流石に嫌がってるな」
竜は降下しつつも、目を狙って飛んで来た矢を嫌ってイヤイヤと首を振っている。
「ともあれ、ここにいては危険だ。エルレン君、地下室に隠れるぞ」
「バルザーさん!」
だが少年の目はそれを望んでいなかった。
「エルレン君?」
「僕は……僕は男で、そしてリーンの担当医法師なんです。だからその……無茶なお願いだってわかってます、でも、リーンの側に居たいんです!」
「むっ……」
少年の気迫は、騎士の心をざわめかせた。
「ふっ……君はオレなんかよりよっぽど男だな」
「バルザーさん……」
「いいだろう。君がその命をかけるというのなら、俺は命がけでそれを守ろう」
と言ってバルザーは、腰に吊るした剣の鍔を慣らした。
「はいっ、ありがとうございます!」
そして二人の「男」もまた、降下してくる竜の元へと駆けて行った。
屋敷の外に出ると、腹の底をゆさぶるような咆哮が響いてきた。
「おお本当だ、でけえ!」
空の一角を覆いつくすほどの竜が、漆黒の翼を羽ばたかせながら街の上空を旋回している。
「あんなの大きいものは見たこと無いわ……」
「ナイトメア級のドラゴンじゃ! スノーフルの歴史資料にたまに出てくるのだ!」
「うわわわ……どうなっちゃうんですか?」
一行は成す術もなくおろおろする。
竜は上空を雄大に飛びまわっているが、下りてくる様子はない。
「下手に刺激せん方がよさそうじゃな。ワシは迎撃隊の指揮を取りに行く。お客人方は屋敷の地下に隠れておってくれ」
と言ってロレンは行こうとするが。
「水臭いぜおっちゃん」
リーンはその肩を止めて言う。
「こういう時こそ勇者の出番ってもんだ!」
「だがその剣ではどうにもなるまい?」
「いいや、使えないことはないんだぜ」
と言ってリーンは不敵に笑う。
「まさかリーン……、そんな無茶よ! その剣では戦えないわ!」
「いざとなったらやるしかないんだぜ?」
「でも!」
――グルオオオーン!
空を飛び回っていた竜の動きが止まった。
空中で静止した状態で、リーン達の姿を見下ろしてくる。
「どうやらやる気みたいだな」
「ともあれ、出来ることをせねば。メイリーよ、手伝ってくれ」
「はい、おじさま。リーン、くれぐれも無茶をしないでね」
ロレンとメイリーは、大型弩砲が並んでた場所へ向かって走っていった。
「どうするんだリーン」
バルザーが問う。
「あれを倒すのは、流石に無理だと思うが」
「まあ、そうだなー」
リーンはその場で竜を見上げる。
すると、その真っ黒な瞳と目が合った。
「うーん、それにてもデカイな」
「ああ。オレもあんなのは初めてみるぞ」
「襲われたらひとたまりもありません……」
「そうだな、ひとたまりもねえ」
まったく倒すあてもないリーンだったが、それでもなぜか落ち着いていた。
そもそも、人間に憧れてやってくる魔物が、人の住む街を壊したりするものだろうか。
「とりあえず様子をみよう」
そう言うとリーンは、その場にどっかりと腰を下ろした。
* * *
街の中は意外にも平穏だった。
ある程度大きな家には必ず地下室がある。
一般市民は、すでにそこに退避していた。
赤色と灰色のローブを纏った魔術師が、防壁の四隅に建っている塔へ向かう。
大型弩砲の部隊も、既に迎撃準備を終えていた。
そして、空中に鎮座する竜との睨み合いになっていた。
「みなさん、なれておられるのですね」
エルレンが感心したように言う。
「こういうときこそ、慌てずゆっくりだぜ」
リーンは座ったまま腕を組んで空を見上げる。
そして、あの竜が何を考えているのかを考えた。
「あいつは一体何がしたいんだろうな」
「さて……、ドラゴンは滅多に人間界に出てこない魔物だ。見当もつかん」
「そうなのか、滅多に出てこないのか」
リーンはさらに首を捻る。
魔物は基本的に、人間に憧れている。
だが、あの巨大な竜の雄々しい姿を見ていると、あんな立派な魔物が人間のような小さい生き物に憧れるとはどうしても思えなかった。
「うーん、わからねえな」
滅多に人間界に出てこない魔物が、こうして人間界にやってきているのだから、そこには何かしらの理由があるはずだ。
そうリーンは考えていた。
「ドラゴンって、頭いいんだよな?」
「少なくとも、暗黒トカゲよりはな」
そうしてリーンが首を捻っていると、ついに竜が動き出した。
「む、動いたぞ!」
「メイリーさん達が行った方に下りていきます!」
リーンはすかさず立ち上がる。
「しゃあねえ、行って来るぜ」
「まてっ、無茶だ!」
「無茶なら押し通すまでだ!」
その時、降下してくる竜めがけて、弩砲の一斉射が始まった。
――バババババ!
弩砲の鋼バネが弾ける音がこだまして、極太の矢が飛んでいく。
だが、その矢は全て岩のような竜の皮膚に弾かれてしまう。
「バルザー、お前はここに残ってエルレンを守ってくれ」
「どうしてもいくのか。もう知らんぞ!」
「なんだ、心配してくれてるのか?」
「むぐっ……、そういうわけではない! オレはただ依頼主を守るという職務に忠実なだけだ」
「へへっ、お前のそういう嘘つけないところがオレは好きだぜ」
「だから違うと言っている……! ええい、行くならさっさと行け!」
「おうよ! 生きて帰ってこれたら抱きしめてくれよな!」
そういい残してリーンは走って行ってしまった。
「行っちまいやがった……」
そこにさらに、大型弩砲の一斉射が始まる。
――ババババババ!
無数の極太の矢が、今度はあらぬ方向に飛んでいった。
「どこを狙っているんだ?」
だがその矢は、途中で折れ曲がるようにして飛ぶ方向を変えた。
「魔弾か!」
それは魔力を注ぎ込まれた矢だった。
軌道を変えた矢は、その全てが竜の側頭部、主にその眼球を狙って飛んで行く。
――ギャオオオオン!
「バルザーさん! 効いてます!」
「ああ、流石に嫌がってるな」
竜は降下しつつも、目を狙って飛んで来た矢を嫌ってイヤイヤと首を振っている。
「ともあれ、ここにいては危険だ。エルレン君、地下室に隠れるぞ」
「バルザーさん!」
だが少年の目はそれを望んでいなかった。
「エルレン君?」
「僕は……僕は男で、そしてリーンの担当医法師なんです。だからその……無茶なお願いだってわかってます、でも、リーンの側に居たいんです!」
「むっ……」
少年の気迫は、騎士の心をざわめかせた。
「ふっ……君はオレなんかよりよっぽど男だな」
「バルザーさん……」
「いいだろう。君がその命をかけるというのなら、俺は命がけでそれを守ろう」
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