猫たちの惑星

ナガハシ

ナイスバディ -少女-

「うっわー! 超ひろーい!」
「凄い露天風呂だねユキちゃん!」


 池みたいな広さの大露天風呂。
 たち昇る白い湯気で、反対側が見えないくらいです。


「ていうか、めっちゃ寒いね! 早く入ろう!」


 私達は急いでお湯の中にもぐりこみます。
 かなりの深さがあって、腰まで体が沈みます。
 男湯と女湯を分ける板には隙間があるらしいので、その反対側の縁の方に向かいます。 ジャブジャブと、もうほとんど泳ぐようにして進んで行きます。
 なんだかとても楽しいな。


「この辺がいいかな」


 座り心地の良さそうな場所があったので、そこにユキちゃんと二人、腰を下ろして肩までお湯に浸かります。
 宝石のような緑色をした綺麗な温泉です。


「オヤジ達、一体何しに来たんだろうな。温泉に来て温泉に入らないなんて訳わかんないよ」
「ウェン高の話で盛り上がっちゃったんだね、ついうっかり」
「うちのオヤジがホンコン酒なんって買うからいけなんだ。あの飲んだくれ」
「お父上もお酒が入ると難しい冗談が止まらなくなるの」
「貴子んとこのおじさんはまだいいよ、暴れたりしないもの。うちオヤジなんて酔っ払うと『スキンシップだ!』とか言ってセクハラしてくるんだから! この間なんてお尻を鷲掴みにされたんだ。思いっきり頬っぺたひっ叩いてやったよ」
「ええ!? それは大変だね」


 とは言いつつも、そんなユキちゃんの家が少しうらやましかったりします。
 父上の頬を叩くなんて、私の家では考えられないことです。


「ねえユキちゃん、ユキちゃんは何歳くらいまでお父上とお風呂に入ってた?」
「ん~、学校に入るころにはもう別々だった気がするなー。貴子んとこはどうなのさ?」
「え!? わ、私? 私はね……うん! 学校に入るまでだよ!」
「だよねー。やっぱそのくらいだよね! うちのオヤジ、最近私を見る目つきがイヤラシイくて、気持ち悪いんだ」


 やっぱり私の家は変なんだ。
 本当は私、今でも父上とお風呂に入っているんです……。


「ん? どうした? もうのぼせたか?」
「ううん、そんなことないよ! ユキちゃんはもう胸も大きくなってきたんだし仕方ないよ。おじさんだって男の人だもの。私なんてまだこんなんだよ」


 自分の小さい胸を触ってみます。
 少し脂肪みたいなのがついて……きたのかな?


「貴子のだってだんだん膨らんできてるじゃん、貴子のおばさんだって結構胸あるでしょ? あのくらいにはなるよきっと」
「そうかな……」
「じゃあさ、大きくなるように揉んであげよっか?」
「え!? 何を言っているのですかユキちゃん!」
「まあまあ、そう遠慮するなって……」


 そう言ってユキちゃんは背後から掴みかかってきて、私の無い胸をさすり始めました!
 肌と肌がツルツルとこすれ合って……く、くすぐったい!


「ちょっとユキちゃん、くすぐったいよ! それじゃおじさんと同じセクハラだよ!」
「あはは、確かにね! 血は争えないなー」


 その言葉を聞いて私はハッとしました。
 ユキちゃんとユキちゃんのお父上の間にある、見えないつながりのようなものを感じたんです……。


「うへへへ……」


 って、ユキちゃんいつまで揉んでるの!?


「あ、あの人」


 ユキちゃんに言われてそちらを見ると、この辺りでは珍しい他惑星の女の人がいました。


「世暇家のメイドさんだね」
「うん、そうだね、うっわー、胸おっきいな……腰もあんなに細くて」
「肌も真っ白で、すごい美人さんだよねっ!」


 その人はタオルで軽く前を隠して、女の人達の視線から隠れるようにして、お湯の中にもぐりこんでいきました。
 注目されて緊張しているのでしょうか?
 少し表情が怖い。


「あっ、仕切りの方に向っていくよ。さすが異星の人だね、大胆!」


 その人は仕切り板にぴったりくっついて、わざわざ隙間のあるところの前に腰を下ろしました。
 一体どういことなんでしょう!?
 なんだか私達の心拍数の方が急上昇してきました。


「向こう側にいる人とお話している……の?」
「そうみたいだね……きっと仲の良い男が向こう側にいるんだ、なんかそんな雰囲気だろ? 彼氏さんとかかな……」
「ええ! 彼氏さん!?」


 その後の私達の会話は、あのメイドさんとその向こう側の男の人との関係についての話でもちきりになってしまいました。

















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