猫たちの惑星
家族のこと、自分のこと -少女-
学校で歴史のお勉強をしています。
覚えないといけない単語がたくさんあって大変です。
「セカイタイセン」とか「シンギュラリティー」とか「トーゴーシネン」とか。
こういった丸暗記みたいなことは、キョウノウ器を使ったほうが早いと思うのだけれど、お父上はキョウノウが大嫌いな人なので、私はこうして「ナチュラル教育」を受けているのでした。
ナチュラル教育は先生の呪文みたいな朗読に50分も耐えなくてはいけません。
歴史の授業は特に眠くなるので、好きにはなれません。
今日は21~22世紀にかけての歴史を学んでいます。
現実と仮想の区別が殆どなくなった時代、地球という星全体で人々の意識のありようを巡る戦争がおきて、情報兵器という恐ろしい武器が何度も使われたのだそう。
そして地球上のいくつかの国は、情報汚染で人の住めない土地になってしまったんですって。
けれども住む場所を失った人達の中に、とても勇敢な人達がいて、その人達は大きな宇宙船を作って夜空に打ち上げて、そこを自分達の新しい国にしてしまったのです。
正直に言って、どういう状況だったのかは想像も出来ません。
ただ、自分達の暮らす場所を守ることは、とっても大事なことなのだとわかるだけです。
人は弱い生き物だから、猫さん達みたいに外で暮らすことが出来ません。
生きるためには暖かい家がいります。
一緒に生きる家族が必要です。
心のよりどころが必要です。
家族みんなが仲良く出来なければ、きっと生きることは地獄そのものでしょう。
あたかも、情報兵器でメチャクチャにされた世界のように。
昔の人達は、どうして仲良くできなかったのでしょう。
そして宇宙に飛び立った人達は、そこで心休まる場所を築けたのでしょうか?
残念ながら歴史の教科書はそれを教えてくれません。
ふと思います。
私がいま暮らしている家庭はどうなのでしょう?
私がいま暮らしている家は、本当に暖かい家なのでしょうか?
生まれつき腕の神経が弱いお母上は、あまり握力がなくて、よく箸を転がしてはケラケラと笑います。
私はそれを見ていつも悲しくなるのですが、母上が笑っているので一緒に笑います。
父上はとても頭のよい人です。
努力家で、キョウノウ器をまったく使わないのに、使っている人達と肩を並べてギロンします。
とても家族思いで、私達を楽しませようとたくさんの冗談を言ってくれます。
でもそのほとんどは難しすぎて、私にはよくわかりません。
でも父上が私達を笑わせたいと思っていることはわかるので、私はよくわからないなりに笑います。
私の家に笑顔が絶えることはありません。
でも、私の家は本当に暖かい家庭なのでしょうか?
これは贅沢な疑問でしょうか?
家族みんながお互いのことを思いあって暮らせているのだから、それで良いと思ったほうが、良いのでしょうか――――。
「ふう……」
そんな取りとめもないことを考えながら、ぼんやりと窓の外を見つめます。
どこからともなく校庭に、二匹の猫が迷い込んできました。
白い猫さん、三毛の猫さん……。
「え?」
私は思わず立ち上がってしまいました。
「なんでここにいるの!? あ!」
ふと我に返ったときにはもう遅い、教室中の視線が集まってる!
は、恥ずかしい!
「貴子ちゃん、何が見えたのかな?」
先生の優しくも鋭い問いかけ。教室中に笑いが渦巻きます。
「ご、ごめんなさい!」
私は慌てて椅子に座ると、熱くほてった顔を、教科書で隠しました。
覚えないといけない単語がたくさんあって大変です。
「セカイタイセン」とか「シンギュラリティー」とか「トーゴーシネン」とか。
こういった丸暗記みたいなことは、キョウノウ器を使ったほうが早いと思うのだけれど、お父上はキョウノウが大嫌いな人なので、私はこうして「ナチュラル教育」を受けているのでした。
ナチュラル教育は先生の呪文みたいな朗読に50分も耐えなくてはいけません。
歴史の授業は特に眠くなるので、好きにはなれません。
今日は21~22世紀にかけての歴史を学んでいます。
現実と仮想の区別が殆どなくなった時代、地球という星全体で人々の意識のありようを巡る戦争がおきて、情報兵器という恐ろしい武器が何度も使われたのだそう。
そして地球上のいくつかの国は、情報汚染で人の住めない土地になってしまったんですって。
けれども住む場所を失った人達の中に、とても勇敢な人達がいて、その人達は大きな宇宙船を作って夜空に打ち上げて、そこを自分達の新しい国にしてしまったのです。
正直に言って、どういう状況だったのかは想像も出来ません。
ただ、自分達の暮らす場所を守ることは、とっても大事なことなのだとわかるだけです。
人は弱い生き物だから、猫さん達みたいに外で暮らすことが出来ません。
生きるためには暖かい家がいります。
一緒に生きる家族が必要です。
心のよりどころが必要です。
家族みんなが仲良く出来なければ、きっと生きることは地獄そのものでしょう。
あたかも、情報兵器でメチャクチャにされた世界のように。
昔の人達は、どうして仲良くできなかったのでしょう。
そして宇宙に飛び立った人達は、そこで心休まる場所を築けたのでしょうか?
残念ながら歴史の教科書はそれを教えてくれません。
ふと思います。
私がいま暮らしている家庭はどうなのでしょう?
私がいま暮らしている家は、本当に暖かい家なのでしょうか?
生まれつき腕の神経が弱いお母上は、あまり握力がなくて、よく箸を転がしてはケラケラと笑います。
私はそれを見ていつも悲しくなるのですが、母上が笑っているので一緒に笑います。
父上はとても頭のよい人です。
努力家で、キョウノウ器をまったく使わないのに、使っている人達と肩を並べてギロンします。
とても家族思いで、私達を楽しませようとたくさんの冗談を言ってくれます。
でもそのほとんどは難しすぎて、私にはよくわかりません。
でも父上が私達を笑わせたいと思っていることはわかるので、私はよくわからないなりに笑います。
私の家に笑顔が絶えることはありません。
でも、私の家は本当に暖かい家庭なのでしょうか?
これは贅沢な疑問でしょうか?
家族みんながお互いのことを思いあって暮らせているのだから、それで良いと思ったほうが、良いのでしょうか――――。
「ふう……」
そんな取りとめもないことを考えながら、ぼんやりと窓の外を見つめます。
どこからともなく校庭に、二匹の猫が迷い込んできました。
白い猫さん、三毛の猫さん……。
「え?」
私は思わず立ち上がってしまいました。
「なんでここにいるの!? あ!」
ふと我に返ったときにはもう遅い、教室中の視線が集まってる!
は、恥ずかしい!
「貴子ちゃん、何が見えたのかな?」
先生の優しくも鋭い問いかけ。教室中に笑いが渦巻きます。
「ご、ごめんなさい!」
私は慌てて椅子に座ると、熱くほてった顔を、教科書で隠しました。
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